川村かおり「悲しきRADIO」
カバー曲のおもしろさは演奏するバンド、ミュージシャンの選曲の妙(例えば”知る人ぞ知る曲”、”演奏している人とイメージの違う曲”など)ということもあるが、選んだ曲を素材にして自分のスタイルや好きなパターンに作り変えてしまう、という技が聴けることもあると思う。
今回紹介するのは、佐野元春のトリビュート盤『BORDER』に収録されている、川村かおりの「悲しきRADIO」。この曲は、佐野元春が1981年2月に発表した2ndアルバム『Heart Beat』のB面1曲め(アナログ)に収録されている。都市の夜や車、恋、カーラジオのロックンロールを、当時の佐野が影響されていたと思われるブルース・スプリングスティーンの様な疾走感とともに描き出した。
川村かおりのバージョンは、The Whoの「Substitude(邦題:恋のビンチヒッター)」のようなアレンジで演奏されていて、「Substitude」のイントロのギターフレーズをボーカルの合間に取り入れたり、まるでキース・ムーンの”ハイ・ハットなんていらないぜ”シンバル叩きっぱなしのドラム、フレット上を動き回るベースはThe Whoそのもの。間奏は「The Kids Are Alright」を織り交ぜ、ピート・タウンゼントばりのピック・アップ・セレクタ-のノイズ。少々のリズムの狂いやミスはおかいまいなし!の一発取り風な演奏は、とにかくエネルギッシュ&パワフルだ。ベース、ドラムにはDr.Strange Loveの根岸孝旨と古田たかし(1997年にDSLを脱退)、ギターにはHorikoshi Nobuyasu、川村かおりの飾り気のないボーカルも演奏にびったり。Dr.Strange Loveは「ストレンジ・デイズ」でこのアルバムに参加している。
アルバムにはこの曲の他、The Grooversの「New Age」、インダストリアルなアレンジがカッコいいHAL FROM APOLLO '69の「Sunday Morninng Blue」、ルー・リードを思わせるGreat 3の「サンチャイルドは僕の友達」等の名カバーが収録されている。
なお、川村かおりはSorrow名義のアルバムでルースターズの「ロージー」をカバーしている。