1984『BIRTH OF GEL』

1985
3月にルースターズを脱退してからおよそ1年後、新宿ロフトの1984のステージで歌詩を書いた紙を見ながら「I'm Waiting For The Man
を歌う大江慎也がいた。

ルースターズの別ユニットとして始まった1984は、ルースターズからの池畑、井上、安藤、大江の脱退に伴って やがてプロデューサー・柏木省三のバンドへと変わっていった。メンバーも84年以降ルースターズに在籍していたベースの柞山一彦のほか、ルースターズのジャケット・コンセプト等ビジュアル面で関わっていた鏑木朋音をキーボードに、 ギターは当時Sence of Viewというバンドにも在籍していた富永保というラインナップ。 このメンバーにデイト・オブ・バースを迎え、 ゲスト・ボーカリストとして大江慎也が参加して録音されたのが『Birth of Gel』だった。 先のロフトでの大江の飛び入り参加は、音楽活動再開にむけた一歩であり、このアルバムの参加から初のソロアルバム発表へ続く足がかりとなる。

大江はタイトル・トラックの「Birth of Gel」とドアーズのセカンドアルバムから「Strange Days」のカバーで ボーカルをとっている。「Birth of Gel」はつやつやした演奏にのせて英語で歌われるポップな曲。 「Strange Days」はほぼ原曲に忠実なアレンジ。
この他、US初期パンクのリチャード・ヘル「The Hunter Was Drowned」は原曲のサックスに変わりキーボードをフューチャー、 、モダン・ラヴァースの「Pablo Picasso」はつこっみ気味の柏木のボーカルもあわせてかっこ良く仕上がっている。 カセットや『逆噴射家族』のサウンドトラック・アルバムにも収録されていた「Space 1999」は、 オーケストラ・ヒットやアコースティック・ギターのソロを入れてアレンジしているが、だんだん悪くなっている気がする。

日本的な印象の「春霞」、「Sorrow」という曲名は『爆裂都市』のサントラにも入っていたが違う曲で、 曲調は『逆噴射家族』の雰囲気に近い。作曲の“Jun”というクレジットは下山のことか。1984初期のパーカシッブな特徴はなくなり、「Bad Dreams」 といった曲ではトム・ヴァーレインのような引き攣ったギターが目立つようになった。 キーボードがメインの曲もあるが、アメリカのアンダーグラウンド、初期USパンク的な音志向が強くなっているように思う。 
なお「Bad Dreams」は一時期(1983年~1984年頃)ルースターズのレパートリーでもあった(花田がボーカルで、アレンジがだいぶ違う)。

このアルバムはいまのところ未CD化(特に望んでいる人はいないか)。

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