OMNIBUS a Go Go Vol.48『すべてはもえるなつくさのむこうで Early Works of Satoshi Sonoda 1977→1978 Memories of Yasushi Ozawa』

大里俊晴著『ガセネタの荒野』が2011年7月に再刊した。私がこの書籍の存在を知った時には既に廃刊になっていて中古市場でも高値が付き入手出来ずにいた。1992年刊版からは写真、参考資料、見出しが削除され、装丁も変更されたが再刊はありがたかった。内容は1970年代後半のアンダーグラウンドかつフリーキーな青春群像といえるもので、ギタリスト浜野純に誘われ大里がベースを手に取り、ガセネタ結成からユニークな活動、突然の解散、大里の渡仏まで、平凡な“田舎から出てきた常識的で善良”な大里と、ふたりの“天才”浜野純と山崎春美、吉祥寺マイナー店主でありガセネタのドラマー 佐藤隆史との関わりを主に描いている。映画化してみれば面白いのでは?と安直にも思ったりするのだが、当時の音楽裏史をも垣間見るようで興味の尽きない書である。

このCDは『ガセネタの荒野』にも登場する“明治大学現代音楽ゼミナール”主宰、園田佐登志の1977年~1978年の活動を集めたもので、通常のオムニバス・アルバムというよりはアンソロジー・アルバム。園田と音楽活動を共にしていた小沢靖のメモリーディスクでもある。リリースはモダーンミュージック/PSFレコードより2009年2月のリリース。

1978年1月22日明大に於けるイベント“Free Music Space 1”での園田(Vo.&G)のバンドによる「夕暮れ暗夜そして夜明け」は、静かで訥々としたボーカルを聴かせる前半から徐々に加速していく11分の長尺曲、後半は“プログレ”の影響色濃く”というため省かれてフェイドアウト。

1977年4月30日の“Free Music Revoltution Vol.2”のためのリハーサルテイクと思われる 4月29日の録音「Poly-Performance」は即興パフォーマンス。同じく4月27日のセッションテイクでCDのタイトルにもなっている「すべてはもえるなつくさのむこうで」 は園田の弾くギターが時にリリカルなインプロヴィゼーションナンバー。歌はないがCDブックレットには鈴木獏の詩「塔」からの一節が掲載されている(曲のタイトルはこの詩から)。

ガセネタに園田がボーカル、ギター、尺八で参加した即興バンドANARkISSは、三上寛「しょんべんだらけの湖」のカバー、 “XXを殺してやる!”と叫ぶ曲ながらファニーな「untitled」、尺八やサックス、奇声入り乱れてのフリーキーな「むすんでひらいて」の3曲。1978年9月14日吉祥寺マイナー「Live at Minor」出演時の収録で共演は自殺、SEX、PAINだった。

当時全員が女子高校生だったという火地風水に園田や向井千恵らが参加した“Free Music Space 6”での「Collective Sound Events」も20分に及ぶ即興演奏。様々な音が重なり、なかなかユーモラスな仕上がりだ。

1970年代後半に現代音楽に集う人々、過剰と速度を追い求めるロックバンドを記録したこのCDは『ガセネタの荒野』の背景が窺えるもので、この本のサウンドトラックとも思えてくる。やはり園田が関わり、小沢靖によって録音されたガセネタ『SOONER OR LATER』とともに。

園田佐登志のプロフィールは園田佐登志/Satoshi Sonoda~現況/プロフィールに、
吉祥寺マイナーについて音楽評論家の松山晋也が「吉祥寺マイナー」のことをブログに載せている。『ガセネタの荒野』のオリジナル装丁の画像もあり。

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