OMNIBUS a Go Go Vol.54『LIVE AT CBGB's』

1976年にリリースされたニューヨークシティのバワリーにあったライブハウスCBGB(CBGB OMFUG、正しくはCountry,Blue Grass,Blues and other music for uplifiting gouramndizers =ゴキゲンな大食漢達のための、カントリー、ブルーグラス、ブルース、その他の音楽)が自主制作したライブコンピレーションアルバム。当初CBGB & OMFUG Recordsよりリリースされたが、アトランティックが権利を買い取り、メジャーリリースされている。アナログでは2枚組だったが後にCD化された際には1枚に収められた。 録音はもちろんCBGBで1976年6月4日~6日におこなわれた。収録されているアーティストは、
TUFF DARTS
THE SHIRTS
MINK DeVILLE
THE LAUGHING DOGS
MANSTER
SUN
STUART'S HAMMER
THE MIAMIS
の8バンド。

ローマン・コザック著、沼先敦子訳の『CBGB伝説』(原題:This Ain't NO DISCO)に書かれている、ヒリー・クリスタル(CBGBのオーナー)の証言によれば、
“ラモーンズは契約していたし、テレビジョンはもうじき契約するところだった”、“ブロンディはレコーディングはしたが出来が悪かった” 、“トーキングヘッズもやったんだが(バンド側から)辞退した” ということで既にアリスタと契約済みのパティ・スミスも含めCBGB育ちの後のビッグネームはこのアルバムには収録されていない。プロデュースはラモーンズのファーストをプロデュースしていたクレイグ・レオン。

そうは言っても“Welcome CBGB's!”に続いて始まるロバート・ゴードン在籍時のTUFF DARTS「All For The Love Rock'n'Roll」は シンプルでルーズなロックンロールを聴かせてくれるし、「Head Over Heels」はゴードンのボーカルにロカビリーテイストが現れていて興味深い。「Slash」はゴードン脱退後にリリースされたアルバム『TUFF DARTS!』収録バージョンと聴き比べてみるのも面白い。

CBGBのお抱えバンドともいえるTHE SHIRTSは女性ボーカルのアニー・ゴールデンを擁した男女ツインボーカルスタイルのポップなバンド。ルーピーなフレーズが印象的な「Operatico」、ドライヴィンな「Poe」、ドラマティックな展開の「A.V.M.」の3曲を収録。ウィリー・デヴィル率いるMINK DeVILLEはスローでストーンズのバラードを思わせる「Cadillac Moon」、クールな「Let Me Dream If I Want To」、レゲエスタイルの「Change It Comes」の3曲収録。

THE LAUGHING DOGSは2曲。ハードな「I Need A Million」、メロディと演奏、特にギターのカッティングとキーボードのアレンジが素晴らしい「It Feels Alright Tonight」。これいい曲。
MANSTERは高音、裏声、低音を駆使したボーカルとテンポの緩急が激しい「Over, Under, Sideways, Down」と パンク・フュージョンとも言いたくなるような展開でギター弾きまくりの「I'm Really Not This Way」の2曲。ビーチ・ボーイズ風コーラスとメロディアスなパワーポップTHE MIAMISの「We Deliver」(THE MIAMISは複数曲収録しても良かったのでは)、ハード・ロックのSUN「Romance」、エレピの効いたオーソドックスなロックンロールのSTUART'S HAMMER「Everybody's Depraved」が収録されている。

このアルバム、日本盤リリース時の邦題を『パンク・ロックの極致』といったが、パンクというより当時ニューヨーク・アンダーグラウンド・ロックのショウケースといった感じだ。
CBGBは2006年10月15日に閉店、ラストギグにはパティ・スミスが出演した。オーナーのヒリー・クリスタルは2007年8月に逝去している。2012年7月5日~8日にはマンハッタンやブルックリンなど30ヶ所の会場でCBGBミュージック・フェスティバルが開催される予定、また、CBGB自体の復活・再開も計画されているという。

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