OMNIBUS a Go Go Vol.64『HOPE & ANCHOR FRONT ROW FESTIVAL』

ロンドンのパブ・ホープ&アンカーにて1977年11月22日から12月15日の間におこなわれた “フロント・ロウ・フェスティバル”の模様を収録したライブ・オムニバス。アナログ盤は2枚組みで1978年3月にリリースされた。

収録されたバンド・アーティストは17組。Dr.フィールグッドを脱退したばかりのウィルコ・ジョンソン、パイレーツ等のパブ系、ストラングラーズ、Xレイ・スペックスや999、オンリーワンズのパンク系、ブリティッシュ・レゲエのステール・パルス、オーストラリアからセインツも参加。

ウィルコ・ジョンソン・バンドはアメリカのブルース・ピアニスト、ウィリー・ペリーマンがDr.FEELGOOD AND THE INTERNS名義で発表した「Doctor Feel-Good」のパブロックカバー (というかJOHNNY KIDD & THE PIRATESのバージョンがお手本)とDr.フィールグッド時代(ファースト収録曲)の「Twenty Yards Behind」。ここではハープに変わりピアノが活躍している。

怒気に満ちたボーカルとハガネの様なベースライン、それに重なる華麗なキーボードワークを聴かせるストラングラーズはリリースしたばかり(1977年9月)のシングル曲「Straighten Out」とファーストアルバム収録曲「Hanging Around」の2曲。個人的にはストラングラーズはパンクを聴き始めたとき良く聴いたバンドで、このライブオムニバスを手に取ったのもこの2曲目当てだった。

ダックス・デラックス解散後にシーン・タイラが結成したタイラ・ギャングは、スティッフ・レコードからリリースしたシングル曲でファンキーな「Styrofoam」 とややルー・リードを思わせる「On The Street」の2曲を収録。

ウィルコのギター師匠・ミック・グリーンのパイレーツは、3ピースバンドとして再編後の初シングル(1977年9月リリース)にも入っていた「Don't Munchen It」とパイレーツのファーストアルバム収録曲の軽快なロックンロール「Gibson Martin Fender」の2曲。タイトなリズム隊、ベースのジョニー・スペンスの渋い声とキレ味鋭いミックのギターはいつ聴いてもヒートアップする。

ブルージーかつ流麗なギターを聴かせるスティーブ・ギボンズ・バンドは「Speed Kills」と「Johnny Cool」の2曲。レコードデビューしたばかりのXTCはそのシングル「Science Friction」と後にファーストアルバムに収録されるフリーキーでファンキーな「I'm Bugged」。キッチュともいえるキーボードをプラスしたサウンドが魅力。サバーバン・スタッズは1曲のみだがなかなか高速のパンクロックを聴かせてくれる「I Hate School」で後にシングルでリリースされる曲。
マージビートならぬ”テムズビート”といわれるプリーザーズ。

このアルバムを聴きなおして、いいなと思ったのはこのバンド。「Billy」と「Rock & Roll Radio」の2曲を収録。シンプルかつ甘酸っぱいポップなメロディにコーラスが効いていてギターソロもキメる、かっこいいバンド。まだレコードデビュー前のダイアー・ストレイツは「Eastbound Train」を収録。カントリー調のロックンロールながらディランを意識したようなトーキングスタイルのボーカルとスタッカートの効いたフレーズで個性的なギターを聴かせる。後にリリースされた超有名曲「悲しきサルタン」のシングルのカップリングになっている同曲のライブバージョンは、このライブと同テイクの様だ。アリスタからレコードを出していたバーレスクは「Bizz Fizz」を収録。

Xレイ・スペックスは後にファーストアルバムやシングルのカップリングに収録された「Let's Submerge」の熱演。999はインディでリリースしていたシングルのカップリング「Quite Disappointing」と後にファーストアルバムに収録される「Crazy」。ともにパワフル&ポップなナンバー。オーストラリアからのセインツはストゥージズ直系で迫力あるパンク・サウンドを聴かせてくれる「Demolition Girl」で、4曲入りEPと7インチ2枚組『One Two Three Four』でリリースされていた曲だ。

オンリーワンズはファーストアルバムに収録される曲「Creatures of Doom」でピーター・ペレットの特徴的なボーカルとレゲエのリズムや緩急つけたアレンジで一筋縄ではない多彩な魅力がある。スティール・パルスは「Sound Check」。太いベースラインにギターのカッティング、オルガン、ハープの音色が混じって、ダブ効果もありかっこいいアレンジだ。ほぼインストでボーカルは“Rock little children, Rock”を繰り返す。彼らのファーストアルバム『Handsworth Revolution』に収録される曲。

スティッフの初期にシングルを出していたルーガレイターはアメリカ生まれのダニー・アドラーのギタープレイも光る、ジミヘンライクでファンキーな「Zero Hero」を収録。こちらカナダ生まれのフィリップ・ランボー(元ウィンキーズ、ウィンキーズのベースとドラムはタイラ・ギャングへ参加している) の「Underground Romance」はパワフルで熱いR&Rナンバーで6分にわたる熱演。

1970年代前半から活動しているアーティスト、1976年のパンクに触発されたバンド、レコードデビュー前のバンド、しばらくして解散してしまうバンド、当時のオールドスタイルもニュースタイルも1977年当時のサウンドをぎっしり詰め込んだ記念碑的ライブ編集盤。2009年にようやくCD化されたがスティール・パルスとダイアー・ストレイツがカットされた。

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