OMNIBUS a Go Go Vol.76『GHOSTS OF CHRISTMAS PAST』

クリスマス・シーズン。クリスマス・ソング。 今では邦楽でも洋楽でも沢山の楽曲があり、毎年新しい楽曲が生まれているが、私がパンク/ニュー・ウェイブに夢中になっていた1980年代前期には、トラディショナルなクリスマス・ソング(例えばビング・クロスビーとか)の他にはそれほど日本人一般には馴染みがなかったのではないか。(パンクが好きで、クリスチャンでも無い奴にそんな物が必要なのかという話しもあるけど)。

ロックを聴く人にはジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」(1971年)か。日本のポップスではユーミンの「恋人がサンタクロース」(1980年)とか。山下達郎の「クリスマス・イブ」は1983年リリースのアルバム収録曲でヒットはもう少し先になる。洋楽の定番といってもよいスプリングスティーン、U2、ホイットニーやスティングなんかが収録されている『A Very Special Christmas』のリリースは1987年だ。1984年リリースのワム!「ラスト・クリスマス」やバンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」あたりから、日本の中でもクリスマス・ソングへのニーズが急速に高まり、定着したんじゃないかという気がする。日本では一般的にクリスマス自体、宗教的な意味を含まず、祝祭的なイメージを膨らませ、消費を促す特別な日として盛り上がっていったように思う。そのアイテムとしてクリスマス・ソングも活躍した。

『ゴースト・オブ・クリスマス・パスト』はベルギーのインディ・レーベル、クレプスキュールが1981年にリリースしたクリスマス・アルバム。こういったアルバムはキリスト教圏の彼の地では、毎年シーズンになるといろいろと出されているのだろうけど、このアルバムもジャケットや収録曲を変えて数種類リリースされている。1988年にはクレプスキュールからCD化、日本では1989年にCDリリースされた(右上のジャケ写は日本盤ジャケ、本国で1986年に再リリースしたアナログと同じデザインと思われるが、1981年リリースのオリジナルのツリージャケが一番良い)。

ファクトリー・ベネルクスから発展したクレプスキュールらしく、ただのパーティ・アルバムにはなっていない。クリスマスにしてはダークなタキシード・ムーンやキャバレー・ヴォルテール、実験的なマイケル・ナイマン等を含みつつ、注目曲は“ホワイト・クリスマス”や“ジングル・ベル”等を盛り込んだ軽快でホットなギター・インストのアズテック・カメラ「Hot Club of Christ」、 “誰にも言っちゃだめだよ…”で始まるロマンチックなギター弾き語りのペイル・ファウンテンズ「Benoit's Christmas」、シンセとアコギの響きにのったダークなボーカルがベスト・ミックスなジョセフKのボーカリスト、ボール・ヘイグ「Christiana」、ギターの音色が淡々と降り積もる雪のようなドゥルッティ・コラム「Snowflakes」などの名演が収められている。
他、クレプスキュールの代表格といってもいいアンテナ、ルイ・フィリップのアルカディアンズ等18曲を収録。2007年には20曲入りでリイシューされた。

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