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OMNIBUS a Go Go Vol.78『NEW YORK THRASH』

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1982年にカセットレーベルROIRからリリースされたコンピレーション。日本では1993年にCD化された。ライブの度に騒乱となりワシントンDCを追い出されていたバッド・ブレインズを含む、ニューヨークを拠点に活動していたハードコア・パンク・バンドを集めている。 バッド・ブレインズは1980年にシングル「Pay To Cum」をリリース、倍速のラモーンズを目指しながらも、確かな演奏力に裏打ちされた表現力で楽曲は変化に富み、パンク・ファンの度肝を抜いた。このコンピには「Regulator」と「Big Take Over」を収録。2曲とも “Alternative Versions, recorded Fall 1981” とクレジットされているが、やはりROIRから1982年リリースしたカセットアルバム『Bad Brains』収録のものと同じ気がする。どちらも素晴らしいパンクチューン。特に「Big Take Over」はその加速感に痺れる。 Voスクリーミング・マッド・ジョージ、Bイケダ・ヒサシ、Dナカニシ・ジュンという日本人がメンバーのザ・マッドは「I Hate Music」と「The Hell」の2曲。ハードコアというよりオーソドックスなパンク・チューンながらユニークな味付け。ボンズでクラッシュの前座を務めたというクラウトは、そのクラッシュ・タイプのパンクチューン「Getaway」と、ハードコアな「Last Chance」の2曲。ハート・アタックはNYHC初といわれる1981年リリースのシングルに収録されていた「God Is Dead」と「Shotgun」。ギターのトーンがかっこいい。 ミスフィッツにいたボビー・スティールが結成したアンデッドは「Social Reason」、「Nightmare」の2曲で1982年のリハーサルテイクのようだ。ノイジーなギターが聴ける。熱血ボーカルのファルス・プロフェッツはマイナーコードの「Taxidermist」が耳に残る。アドレナリンO.D.は日本のSSみたいな「Paul's Not Home」が面白い。バッド・ブレインズの影響を受けハードコアを演奏していた最初期のビースティー・ボーイズは「Riot Fight」、「Beastie」の2曲。どちらも1分に満たないショート・チューン。 その他、イーヴン・ワース、フィエンズ、ニヒ

OMNIBUS a Go Go Vol.77『PUNK AND DISORDERLY』

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1981年にアブストラクト・レコードからリリースされたハードコア・パンクのコンピレーション。 個人的にはオリジナル・パンクからニュー・ウェイブへ移行していったクチなので、ハードコア・パンクが勃興してきた1980年代前半当時には殆どハードコアは聴いていないのだが、このアルバムは借りて聴いた覚えがある。 1970年代末に聴いていたハード・ロック/ヘヴィ・メタルの否定からパンクを経験した身にとっては、まぁ速さ、メロディ無しはともかく、音色としてハード、メタル色が濃くなっていったのは当時個人的には受け入れられなかったんだと思う。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやドアーズなんかのサイケデリックな音楽やアコースティックな音色、ジャズや民俗音楽との融合、デジタル・ビートなんかに興味が移っていた。ハードコア・パンクはずっと後になってから進んで聴くようになったのだけれど(ハード・ロックやヘヴィ・メタルもまた聴くようになった)。 右上のジャケ写は1988年リリースのCD盤のもの。オリジナルのジャケは黒地にピンクのタイトル文字だった。鋲付き革ジャン、スパイキー&モヒカンヘアのパンクス男女が佇むジャケットからもハードコアという雰囲気が漂ってくるが、内容はそれほど “アルバムまるごとハードコアの塊”っていう感じでもない。 当時は珍しかった女性ボーカルのベキ擁するヴァイス・スクワッドの1stシングル曲「Last Rockers」に始まり、キャッチーなパワーポップといってもよいアディクツの「Straight Jacket」、UKディケイの「For My Country」はバウハウス系のダークな雰囲気を漂わせる曲だが、よく練られたアレンジだ。 レッド・アラート「In Britain」やブリッツ「Someones Gonna Die」のOi!系もあり。あとパルチザンズの「Police Story」、聴かせるメロディのDEMOB「No Room For You」、アブレイシヴ・ウィールズの「Army Song」、どれも激しくもシンガロングでキャッチーなパンクチューン。このあたりもOi!系に入るのかな。 ノイズ・コアのディスオーダー「Complete Disorder」(1stEP収録曲)、カオスUKの『Burning Britain EP』に収録されていた「4 Minute Warning」。198

『THE DIG Special Edition THE CLASH featuring JOE STRUMMER』

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これもジョー・ストラマー没後10年という節目で2012年12月19日発売となったムック。発行はシンコーミュージック。雑誌THE DIGの増刊というかたちだ。THE DIGはクラッシュ、ジョー・ストラマー関連ではジョー訃報時、シングルボックス発売時に続き3冊目のムックとなる。 今回はDVD『THE RISE AND FALL OF THE CLASH』にあわせて、ミック脱退後の5人組クラッシュに焦点をあててもいて、当時のインタビュー再掲載もあり。 個人的にこの頃のクラッシュについて思い出してみると、 トッパー・ヒードン、続いてミック・ジョーンズとバンドを追い出した事(もちろん当時は詳しい事情は知らなかったが)には非常に驚き、5人組になったニュースは聞いたものの、この5人組クラッシュの情報はほとんど無く、やがて発売されたアルバム『カット・ザ・クラップ』は聴いたが、そのサウンドにはがっかりしたというか、もはやこれまでというあきらめのような気持ちを持った事を憶えている。12インチでリリースされた「This Is England」のカップリングに収録されていた、 ロカビリースタイルの「Sex Mad Roar」が気に入ったくらいだった。シングルの大貫憲章のライナーノーツも新生クラッシュのサウンドに懐疑的だった。なので、なんの思い入れもなく5人組クラッシュは無かった事になっていたのだが…。 いつ頃だろうか、かなり後に『GIVE 'EM ENOUGH DOPE』というブートCDを入手、ミック在籍時の来日公演のライブと5人組クラッシュの1984年5月アメリカ公演のライブを収録したもので、アメリカ公演のトラックでは、『カット・ザ・クラップ』にも収録されていた「Are Your Ready For War?」や「Three Card Trick」、12インチの「Sex Mad Roar」、未発表曲の「In The Pouring Rain」(後に『The Future Is Unwritten』に収録)を聴く事が出来、印象は『カット・ザ・クラップ』とは大きく異なるものだった。オーヴァードライブしたギター2本のサウンドと豪快でパワフルなピートのドラミングは、クラッシュのセカンド・アルバム『動乱』に似てハードなもので、アルバム収録曲もなかなかかっこいいじゃないかと思ったものだ。 そ

映画『THE RISE AND FALL OF THE CLASH』

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2012年12月19日リリースのドキュメンタリーDVD。 タイトルにあるように、クラッシュの成功と栄光へと昇りつめる様とその後の凋落と崩壊を描いた作品。ジョー・ストラマー没後10年という節目での発売となるが、なかなか厳しい内容だ。 メンバーだったミック・ジョーンズ、ピート・ハワード、ヴィンス・テイラー、ニック・シェパードとバンド関係者、タイモン・ドッグ、パール・ハーバー、ヴィック・ゴダードら友人により語られているのは、クラッシュのマネージャー、バーニー・ローズを軸としたグループの戦略、メンバーの対立、経済的な問題等(バーニー本人の発言は無い)。バンド結成からトッパー脱退までが前半、バンド内対立からミック脱退、5人組として再出発するもののバンド崩壊までが後半といった感じで全101分の作品。それぞれの発言は興味深いものだ。このDVDのテーマともいえる『コンバット・ロック』録音時の未発表インストナンバー「Walk Evil Talk」(トッパー作)が細切れながら随所で聴く事が出来る。 見ていて浮かび上がってきたのは、バンドが成功へと昇りつめていく過程でマネージャーだったバーニーをクビにした後、メンバー自ら主導権を握って傑作2枚組アルバム『ロンドン・コーリング』を作り上げ、さらに長大な実験作の3枚組『サンディニスタ』を安価にリリースした後、音楽的には自由な活動ができたものの経済的に行き詰まっており、ジョーは状況を打開する為、かつて成功をともにしたバーニーをマネージャーに呼び戻す事を決意、戻ったバーニーはアメリカでの認知度を上げ、アルバム『コンバット・ロック』で更なる栄光を手中にするものの、再びバンドの創作活動に干渉しており、それがメンバー間の対立を煽っていった事だ。 やがてミックをバンドから追い出す事態に至り、音楽制作的に大きな支柱を失う。マネージャーが創作活動に大きく関与する迷走した状態のままクラッシュは解散した。 面白かったのはピートやヴィンスがイエスやジェネシスが好きで、他人に見られないようフレーズを弾いていたそうだ。当時パンクスにとってプログレッシブ・ロックはほぼ全否定されていたから無理もないが。淡々と思い出をなぞるように語るミックの静かな佇まいが印象的だ。これまで幾つかのDVDでも見られたが、やはり自分の制作活動をやりきった事に対する表れでもあるのか、突然の解雇と