映画『THE RISE AND FALL OF THE CLASH』
2012年12月19日リリースのドキュメンタリーDVD。
タイトルにあるように、クラッシュの成功と栄光へと昇りつめる様とその後の凋落と崩壊を描いた作品。ジョー・ストラマー没後10年という節目での発売となるが、なかなか厳しい内容だ。
タイトルにあるように、クラッシュの成功と栄光へと昇りつめる様とその後の凋落と崩壊を描いた作品。ジョー・ストラマー没後10年という節目での発売となるが、なかなか厳しい内容だ。
メンバーだったミック・ジョーンズ、ピート・ハワード、ヴィンス・テイラー、ニック・シェパードとバンド関係者、タイモン・ドッグ、パール・ハーバー、ヴィック・ゴダードら友人により語られているのは、クラッシュのマネージャー、バーニー・ローズを軸としたグループの戦略、メンバーの対立、経済的な問題等(バーニー本人の発言は無い)。バンド結成からトッパー脱退までが前半、バンド内対立からミック脱退、5人組として再出発するもののバンド崩壊までが後半といった感じで全101分の作品。それぞれの発言は興味深いものだ。このDVDのテーマともいえる『コンバット・ロック』録音時の未発表インストナンバー「Walk Evil Talk」(トッパー作)が細切れながら随所で聴く事が出来る。
見ていて浮かび上がってきたのは、バンドが成功へと昇りつめていく過程でマネージャーだったバーニーをクビにした後、メンバー自ら主導権を握って傑作2枚組アルバム『ロンドン・コーリング』を作り上げ、さらに長大な実験作の3枚組『サンディニスタ』を安価にリリースした後、音楽的には自由な活動ができたものの経済的に行き詰まっており、ジョーは状況を打開する為、かつて成功をともにしたバーニーをマネージャーに呼び戻す事を決意、戻ったバーニーはアメリカでの認知度を上げ、アルバム『コンバット・ロック』で更なる栄光を手中にするものの、再びバンドの創作活動に干渉しており、それがメンバー間の対立を煽っていった事だ。
やがてミックをバンドから追い出す事態に至り、音楽制作的に大きな支柱を失う。マネージャーが創作活動に大きく関与する迷走した状態のままクラッシュは解散した。
面白かったのはピートやヴィンスがイエスやジェネシスが好きで、他人に見られないようフレーズを弾いていたそうだ。当時パンクスにとってプログレッシブ・ロックはほぼ全否定されていたから無理もないが。淡々と思い出をなぞるように語るミックの静かな佇まいが印象的だ。これまで幾つかのDVDでも見られたが、やはり自分の制作活動をやりきった事に対する表れでもあるのか、突然の解雇という出来事に対しても、当時は激しい感情が飛び交っていただろうが、変わらず静かに語っていた。新しいメンバーの3人は、やはり恨み節が多くなるが、特にヴィンスにいたっては感情を抑えきれなくなるシーンも。
ポール・シムノンはこのドキュメンタリーには協力せず、もちろんジョーのコメントもない。それにこの新生5人組クラッシュmark2がどんな音楽をしていたのか、作ろうとしていたのかが、伝わってこないというか分からない。当時のライブ・シーンが挿入されるが、鮮明なものが無く細切れなのが残念だ。やはりこのあたりを充分に追加してもらわなければ、クラッシュの失われた1984年~1985年のオトシマエはつかないのでは。