OMNIBUS a Go Go Vol.77『PUNK AND DISORDERLY』
1981年にアブストラクト・レコードからリリースされたハードコア・パンクのコンピレーション。 個人的にはオリジナル・パンクからニュー・ウェイブへ移行していったクチなので、ハードコア・パンクが勃興してきた1980年代前半当時には殆どハードコアは聴いていないのだが、このアルバムは借りて聴いた覚えがある。
1970年代末に聴いていたハード・ロック/ヘヴィ・メタルの否定からパンクを経験した身にとっては、まぁ速さ、メロディ無しはともかく、音色としてハード、メタル色が濃くなっていったのは当時個人的には受け入れられなかったんだと思う。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやドアーズなんかのサイケデリックな音楽やアコースティックな音色、ジャズや民俗音楽との融合、デジタル・ビートなんかに興味が移っていた。ハードコア・パンクはずっと後になってから進んで聴くようになったのだけれど(ハード・ロックやヘヴィ・メタルもまた聴くようになった)。
右上のジャケ写は1988年リリースのCD盤のもの。オリジナルのジャケは黒地にピンクのタイトル文字だった。鋲付き革ジャン、スパイキー&モヒカンヘアのパンクス男女が佇むジャケットからもハードコアという雰囲気が漂ってくるが、内容はそれほど “アルバムまるごとハードコアの塊”っていう感じでもない。
当時は珍しかった女性ボーカルのベキ擁するヴァイス・スクワッドの1stシングル曲「Last Rockers」に始まり、キャッチーなパワーポップといってもよいアディクツの「Straight Jacket」、UKディケイの「For My Country」はバウハウス系のダークな雰囲気を漂わせる曲だが、よく練られたアレンジだ。
レッド・アラート「In Britain」やブリッツ「Someones Gonna Die」のOi!系もあり。あとパルチザンズの「Police Story」、聴かせるメロディのDEMOB「No Room For You」、アブレイシヴ・ウィールズの「Army Song」、どれも激しくもシンガロングでキャッチーなパンクチューン。このあたりもOi!系に入るのかな。
ノイズ・コアのディスオーダー「Complete Disorder」(1stEP収録曲)、カオスUKの『Burning Britain EP』に収録されていた「4 Minute Warning」。1981年当時核戦争まであと4分と言われていた。G.B.H.「Race Against Time」(ミニ・アルバム『Leather, Bristles, Studs And Acne』から) このあたりはUKハードコア代表格を収録。
他にはドタバタした演奏ながらスピーディで初期衝動を感させるインセインの「Last Day」、ギターのキレが良いピーター&ザ・テスト・チューブ・ベイビーズ「Banned From The Pub」、アウトキャスツ「Mania」、DISRUPTERS「Youg Offender」、それになぜか英国勢に混じりデッド・ケネディーズ(from USA)「Kill The Poor」が1曲収録されている(もちろん名曲だ)。UKハードコアの代名詞ディスチャージ、それにエクプロイテッドがこのアルバムには収録されていないが、UKパンク第2世代の作品でそれぞれの初期のシングル・EPからの選曲が多く、当時を上手くパッケージしていると思う。『PUNK AND DISORDERLY』は1982年に第2集が、1983年に第3集がリリースされた。