BOOWY「WELCOME TO THE TWILIGHT」
ミュージック・マガジン2013年3月号でBOOWYの特集。
かつて1970年代~1990年代位まで先鋭・前衛的な音楽の紹介を核としていた感のあるこの雑誌からは想像がつかなかった事だが、近年のアイドルや邦楽の取り上げかたを見ると、おかしなことでもないのか…。興味をひかれて購入。まぁ内容はこれまで見聞きした事とそれほど変わらず、目新しいところはなかった。高橋まことのインタビューでの「俺がドラム叩けるうちに再結成を…」というコメントに同意するところはある。解散後それぞれのメンバーがそれぞれのバンドをしたがえて、かつての自分達のバンドの有名な曲を演奏している、というのは個人的にはどうかなと思っていて、それならたまに集まってやればいいじゃないか、と思うのだ。
一方では日本のロックを変え、BOOWY以前・以後といわれるエポックなバンドとして語られ、一方では、あれは「歌謡ロック」で、語る価値もなく日本のロックからは評価の対象外だ、なんて言われるバンド。ミュージック・マガジンが特集するからには、もう少し切り口鋭く多角的に取り上げて欲しかったが、むしろ“なぜ今まで同誌はBOOWYを取り上げなかったのか”を検証していたら面白かったかも。
ミュージック・マガジンの姉妹誌「レコード・コレクターズ」が2010年9月号で実施した1980年代の日本のロック・アルバム・ベスト100にはBOOWYのアルバムは1枚も選ばれておらず、30人の執筆者(選者)のうち、2人がそれぞれ『BOOWY』と『BEAT EMOTION』をリストにあげているのみ。
また同誌の増刊(2010年)『日本のロック/フォーク・アルバム・ベスト100』では読者が選ぶ1969~1989年のベスト100枚にも1枚も選ばれていない。この企画は読者がベスト10アルバムを選び、1位=10点、2位=9点…9位2点、10位=1点で集計したものだ。101位以下の紹介で200位に『BEAT EMOTION』が145点でランクされている。
ただこの読者投票でのアーティスト別得票ではBOOWYは552点で56位。
アーティスト別517点で60位のフリッパーズ・ギターが、アルバム『海へ行くつもりじゃなかった』の517点で40位になっていたり、アーティスト別569点で54位のINUが、アルバム『メシ喰うな!』の541点で41位になっていることからすると、BOOWYは得票が割れてしまったということだ。200位の『BEAT EMOTION』は確かにオリコン1位になったアルバムで、もっともポピュラーな作品だろうし、初期が好きな人には1枚目『MORAL』、4人で再出発したニューウェイヴィーな『INSTANT LOVE』が好きだという人もいるだろうし、ブレイクのきっかけとなった3枚目『BOOWY』、サウンドの確立した『JUST A HERO』が良いという人もいるだろう。 『BEAT EMOTION』以外の407点は他のアルバムに分散してしまっているのだ。どれか1枚に好みが集中しなかったというのは、このバンドを知った時期によって好きなアルバムも異なるという事かも知れない。それとも決定的な代表作は作られていなかったのか…。
もう28年以上も前だから記憶の遥か彼方の事であまり憶えていないのだが、1984年6月の駒沢大学でBOOWYのライブを見ている。もともとE.D.P.Sとブルートニック&ザ・ガーデンが見たくて行ったような気もするが、E.D.P.Sの出演がキャンセルになりルースターズが代役として出演するのを前もってどこからか聞いていたのかもしれない。当時BOOWYの事は名前くらいしか知らなかった。確か最後に出てきたBOOWYは、演奏が始まった途端に黒服の女子が凄い勢いでステージ前へ殺到(まだブレイク前だから数は数十人だが…)してるのを見て、あぁ人気のあるバンドなんだなと思った記憶がある。
何がきっかけでBOOWYを聴き始めたのか、というのも憶えていないのだけれど、3枚目のアルバム『BOOWY』は発売と同時に購入し、気に入ってずーっとカーステでかけていたので、先の駒沢大学のライブから『BOOWY』が発売された1985年6月までの1年の間に興味をもったんだろう。オートモッドに布袋(それに高橋まこと)が参加していたライブ・アルバム『れくぅいえむ』(1983年)も興味を持つきっかけかも。遡って『INSTANT LOVE』を購入(これもよく聴いた)、『MORAL』は当時入手しにくかったので取り寄せてもらった。その後シングル「わがままジュリエット」は気に入ったものの、4枚目のアルバム『JUST A HERO』でやや興味は薄れていた。限定でリリースされたライブ・アルバム『"GIGS" JUST A HERO TOUR 1986』は購入しようか迷っているうちに入手困難になり、当時勤めていた所にまめなアルバイトの子がいて、何軒もレコード屋に在庫を確認してくれて手に入れた忘れ難い思い出のアルバム。
『JUST A HERO』ツアー・ファイナル、BOOWY初の武道館公演の模様を収め、かつバンドとして初のリリースとなるライブ・アルバムだった。当時は知らなかったが武道館以外の公演ソースが使用されていたり、キーボードなどのオーヴァーダビングが追加されていた。「Image Down」ではキーボードだけでなく掛け声も追加されたようだ。ライブ・アルバムではよくあることだが、商品としてパッキングするには、歌詞を間違えたボーカルやミスしたギターソロを差し替えたりするものだ。BOOWYのこのアルバムでは演奏の差し替えはおこなわれておらず、 ライブの臨場感プラス、スタジオでの追加・編集作業により各曲の完成度を高めてベストアルバム的な位置づけをする狙いがあったようだ。そのリリースから26年。
1986年7月2日の武道館公演がダビングなし、演奏順に全19曲を収録して“ネイキッド”としてリリースされた。実は先の思い出のように苦労して手に入れた割に、このアルバムはそれほど聴き込んでいない。それでも思い出深いアルバムの完全版だ。今回はリリースされて直ぐに購入した。リリースされたのは2012年12月24日クリスマス・イヴ。このアルバムから選んだのは「Welcome To The Twilight」。
「Welcome To The Twilight」が、もとはクリスマスソングだったというのは有名な逸話だが、少し字余りな“Merry Blue Christmas”の部分はともかく、“去年のイヴに交わしたリングさえ置き去りのままさ”の部分を残していたら、今頃はクリスマスの定番曲となっていたかも。結局、歌詞は変更され、黄昏てゆく街を舞台に別れを告げた彼女を想う彼の歌となり、スタジオ・アルバム『JUST A HERO』に収録された。もちろんこのライブ・アルバムでも歌詞はスタジオ盤と同じ。
1986年版『"GIGS" JUST A HERO TOUR 1986』では未収録。調べてみると他のライブ・アルバムでこの曲が収録されているものもないようなのでライブ・バージョンとしては貴重か。スタジオ・アルバム『JUST A HERO』ではラストに収録されていて、機械的なベース、フィルの少ないドラムのエイト・ビートにシンセサイザー、ギターのストロークという、この頃流行っていた(と思う…ワム!の「Last Christmas」あたりも視野に入れていたか)アレンジ。クールに別れを歌う氷室京介のボーカルと、段々とゴージャスになっていく間奏部分のバッキングトラックにのせた布袋のソロは浮遊感があり印象的だった。このライブ・バージョンも基本的にアレンジはスタジオ盤と同じ、ジェントルな氷室のボーカル、布袋のカッティング、アルペジオによるバッキングワーク、間奏と後半のソロも聴き応えがある。
個人的には『JUST A HERO』まではよく聴いたが、続く『BEAT EMOTION』は購入したものの殆ど聴かず、BOOWYそのものも聴く事はなくなった。1986年版『"GIGS" JUST A HERO TOUR 1986』を苦労して手に入れてなければ、おそらくBOOWYのレコードも手放していたかもしれない。1986年以降から急激にマス化していったBOOWYだが、強烈な上昇志向だったことは確かで、自分達のやり方でマスになることをバンド存続中もメンバーは公言していた。一方では氷室と布袋の嗜好の相違もあり、バンドの存続は常に微妙なバランスの上にあったという。その支えのひとつはマスになることであり、目標(夢)へ到達した時点でBOOWYを葬ることは自明と言えるのかもしれない。ミュージック・マガジンの特集を読んでいて、サウンドの要だった布袋に、あるいは行っていたかもしれない1984年のBOOWYの方向なんてのをインタビューで聞いてみてほしかったな、と思ったが、そんなものはなくて必ず同じ目標地点に辿り着いていたんだろうな、と思い直した。
BOOWYには未発表曲が数多くあり、また別バージョンというか初期バージョンも数多く存在する。主に初期から『INSTANT LOVE』を挟み1984年くらいまでの間が多いのではと思うが、 未発表曲集のリリースをお願いしたい。35周年迄待てないので、31周年か32周年で。
今回は余談ばかりでかなり長くなった。BOOWYはある時期とてもよく聴いたバンドで2枚目~4枚目までのアルバムを聴くと、その時々の情景まで思い浮かぶ、思い入れの深いバンドだ。なぜバンドの人気の拡大と個人的な興味の度合いが反比例していったのか自分でもよくわからない。売れたから嫌いになった、と単純なものでもないと思うのだが、また機会がある度に考えてみたい。
さて、もう少し余談で、もしもこんなものがあったら面白かったな、と思うもの。
アルバム『MORAL』からの先行シングル(もちろんアナログ)。
「No.N.Y c/w Image Down(自慢じゃないけどVer.)」
アルバム『INSTANT LOVE』からの先行シングル(同)。
「Oh! My Jully Part1 c/w Funny Boy(ごちゃごちゃ言わず働きなVer.)」