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OMNIBUS a Go Go Vol.90『SINGLECOMPACT』

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ミュージシャンでもありポップ職人のトット・テイラーとその兄が1980年に設立したコンパクト・オーガニゼイション。リリースした数々の7インチ、12インチ・シングル、プロモ・シングルの中から、また当時の未発表曲からセレクションされたオムニバスで、日本のウェイブから1989年にリリースされた。ライナーノートはトット・テイラー。 レスポンドの歌姫がトレイシーなら、コンパクト・オーガニゼイションの歌姫といえばマリ・ウィルソン。あの巨大なビーハイヴ・ヘアーでこちらをじっと見つめるマリのファースト・アルバムのジャケットはインパクトがあったものだ。コンパクトからの3枚目のシングル「Baby It's True」はマリのライブではオープニングに使われていた曲、マリの離れてしまった恋人へ語りかける、愛に満ちたセリフがせつない。セカンド・シングルのB面曲「Glamourpuss」はちょっとドラマ仕立てでもある、ジャズ風でもあり、ストレイ・キャッツの「Stray Cat Strut」のような雰囲気もあり。マーヴィン・ゲイのカバー「Ain't That Peculiar」、6枚目のシングルのB面曲「It's Happening」、シングル発売予定曲だった「Love And Learn」、 ペギー・リーで有名なジャズ・スタンダード「Would You Dance With A Stranger?」は1985年公開同名映画のテーマソング。マリは6曲を収録。 後のフェアグランド・アトラクションのエディ・リーダーとマーク・ネヴィンがいたバンド、 ザ・アカデミー・オブ・ファイン・ポピュラー・ミュージック(長い名前だ…)は、両A面シングルとしてリリースする予定(結局1985年のコンピに収録)だった、しっとりとした「The Morning After」とやや大仰なアレンジに感じる「Heart And Soul」を収録。 このコンピの最初と最後に配置されたサウンド・バリアのシングル両面「Mornington Crescent」と「Bank Holiday」、それに12インチからの「Fasten Your Seat-Belts,We're Off To Suburbia」は、どれもハモンドの効いた小気味好く、心地好いナンバー。 コンパクトのもうひとりの歌姫ヴァーナ・リントはレー

OMNIBUS a Go Go Vol.89『RESPOND 12" SINGLE COLLECTION』

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1996年にトラットリアの日本編集盤としてリリースされたレスポンド・レコードの12インチ・シングル・コレクション。CD2枚組で全27曲。 レスポンドのカタログにある17枚の12インチから、エクステンデッド・バージョン、ロング・バージョン、リミックス・バージョンを多数収録、当時お蔵入りとなっていたらしいクエスチョンズの「Someone's Got To Lose」を収録。12インチのカップリングに多かったインスト・バージョンは収録されていない。それからエイ・クレイズの12インチからの収録は無かった。 なかでも嬉しかったのはスティーヴ・ホワイトがM.E.F.F.(マイティ・エルサム・ファンク・フェデレーション) 名義で1984年9月にリリースした12インチ「Never Stop(A Message)」だった。 そのダンサブルでラテン・フレイバーなタイトル・トラックとアフリカンかつフリー・ジャズな「Nzuri Beat」、タイトル・トラックのエレクトロな表現を強調したバージョンの「Non Stop Electro」の全3曲を収録。この12インチのプロデュースとスタイリッシュなスリーブ・デザインはポール・ウェラーだった。 クエスチョンズは美しい「Acapella Foundation」や、ヒートウェイブの1978年のヒット曲カバーをニューウェイヴィーなベースで味付けした「The Groove Line」、トレイシーに提供した「The House That Jack Built」(個人的にはこちらの方が好き)等11曲と多数収録、トレイシーもファンキーな「Soul's On Fire(extended)」や、トレイシー・ヤング名義でジョージ・マクレーのソウル・カバー「I Can't Leave You Alone(pick'n' mix)」等を含め10曲が収録されている。 残念なのは曲順で、各CDの最初がトレイシーとポール・ウェラーの会話というかインタビューの「Tracie Talks」と「Tracie Raps」。CDをセットして1曲目にかかるのがこれ、というのは少しマニアックなのでは。 リリース時期もアーティストも収録された盤からもバラバラ、良く言えばバラエティ感はあるが統一性が感じられない。クエスチョンズ「Work'n

OMNIBUS a Go Go Vol.88『LOVE THE REASON』

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ザ・ジャムを人気の頂点で解散し、新たにスタイル・カウンシルを1983年にスタートさせて、その音楽的変化にリスナー達は驚き、当惑もしたが、ポール・ウェラーが1981年にスタートしたレスポンド・レコードも様々な音楽性を持ったレーベルだった。80年代のモータウンを目指し、若さ、強さ、美しさ、誠実さを理想に、金儲け主義のミュージック・ビジネスに反旗を掲げ、1985年に閉鎖するまで数々のレコードをリリース、積極的に新人を紹介した。 このコンピレーションは1983年にリリースされ、レスポンドの歌姫トレイシーを始め、クエスチョンズ、エイ・クレイズ等を収録したレーベル・ショーケース的な内容。ジャケット裏には “言いたい事があり、創りたい音楽を知っている” 事が音楽に携わる理由だ、その理由を愛す、とポール・ウェラーは記している。この潔癖な理想主義がレーベルの終焉を招いたとも考えられるが…。 ポール・ウェラーがプロデュースしたクエスチョンズのファンキーな「Work'n' Play」で始まり、エイ・クレイズの7インチB面曲のポップでラブリーな「She Is So」、トレイシーのキュートなセカンド・シングル曲「Give It Some Emotion」と冒頭の3曲は最高の流れ。N. D. Moffattのややジャマイカンな香りもするしゃがれたアコースティック反骨ナンバー「Peace, Love And Harmony」を挟んで、「Give It Some Emotion」からの繋がりも感じさせるシスター・スレッジのヒット曲カバー、トレイシー・アンド・クエスチョンズ名義の「Mama Never Told Me」、スタカンの曲群にも匹敵するようなクエスチョンズの超名曲「Building On A Strong Foundation」。 ウェラーが曲作りに参加したThe Main T-KOの「Fickle Public Speakin'(Remix) 」、エイ・クレイズの最高のポップ・チューンだけどシニカルな「Keeping The Boys Amused」、トニー・バークがダイレクション解散後に結成したビッグ・サウンド・オーソリティは、なかなかハードな内容の歌詞をソウルフルな曲にのせた「History of The World」。ビッグ・サウンド・オーソリティーがレスポ

OMNIBUS a Go Go Vol.87『CREATION:FLOWERS IN THE SKY 1984-1987』

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アラン・マッギーが1983年に始めたクリエイション・レコードの初期コンピレイションで1988年のリリース。初期クリエイションと言えばマッギーがマネージャーもしていたジーザス&ザ・メリーチェインのシングルが重要だが、このコンピには収録されていない。 収録曲の中では個人的にはなんといってもハウス・オブ・ラヴの「Shine On」だ。1987年5月にリリースされたハウス・オブ・ラヴのデビュー・シングルで彼らの代表曲。1970年代末からのUKニュー・ウェイブ/ネオ・サイケデリック(ジョイ・ディヴィジョンやバニーメン、キュアー等) のエッセンスを凝縮したともいえる名曲。後にフォンタナに移籍してからリメイクし、1990年にシングルでリリース、UKチャート20位のヒットとなった。どちらも基本的には同じアレンジで、よりタイトになり高揚感が増したフォンタナ・バージョンも素晴らしいが、柔らかなストローク、ドラムのロールから鋭利なギターが空間を切り裂くイントロを持ったオリジナル・バージョンも魅力のあるものだ。初期メンバーの紅一点アンドレア・ホイキャンプのコーラスが光るギターソロ後のアレンジも聴きどころ。 プライマル・スクリームは初期の2枚のシングルから1985年のデビュー曲「All Fall Down」と2枚目のシングルのカップリング曲「Velocity Girl」。後々のプライマルが想像つかない、どちらも繊細なギター・サウンドのショート・チューン。このアルバムのタイトルはクリエイションの2枚目のシングルリリースとなるリヴォルヴィング・ペイント・ドリームのシングルからと思われるが、同曲はこのコンピには収録されておらず、カップリングの「In The Afternoon」が収められている。ジャスミン・ミンクスはレーベル4枚目のシングルリリース「Think!」と1986年のシングル「Cold Heart」の2曲。 アラン・マッギーのバンド、ビフ・バン・パウ!は「Better Life」と「Love's Going Out of Fashion」の2曲で手作り感あり。ビフ・バン・パウ!にも参加していたジョー・フォスターのスローター・ジョーはノイジーな「I'll Follow You Down」と素朴ながらキラキラした「She's So Out of Touch」の2曲で、

OMNIBUS a Go Go Vol.86『AMERICAN HARDCRE History of American Punk Rock 1980-1986』

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2006年に公開されたドキュメンタリー映画『AMERICAN HARDCORE History of American Punk Rock 1980-1986』のサウンドトラック盤。日本では2006年末から2007年初頭にかけて公開されたが、このサントラ盤の国内盤のリリースは2006年12月。 バッド・ブレインズ、ブラック・フラッグを初め、マイナー・スレットやサークル・ジャークス、SSディコントロールなど、USハードコアの演奏シーンも交えつつ、バンドのメンバー、関係者のインタビューによるUSハードコア勃興、全土への伝播、1986年のブラック・フラッグのラスト・ツアーをハードコアの終焉として捉えた映画は非常に興味深い内容だ。 初期衝動から興奮の頂点へ、徐々に衝動から醒めていく過程を描いているともいえる。中にはマッチョで殆ど単なる武勇伝みたいな証言もあるが、フラストレーションと憎しみ、日常的なヴァイオレンス、子供じみた悪戯、アンダーグラウンドなステージ、DIY、ノー・ファッション、ノー・センチメンタルが映し出されるタフな内容だ。この映画を見てると何故こんなにヒリヒリした音が生まれ、演奏されてきたのか少し理解できる気がする。映画の元になったスティーブン・ブラッシュの本も読み応えがある内容だ。 そしてこのサウンドトラック盤もUSハードコアの好サンプラーとなっている。なんといっても1曲目のブラック・フラッグ「Nervous Breakdown」から、ミドル・クラス「Out of Vogue」、バッド・ブレインズ「Pay To Cum」へ続く冒頭3曲には痺れる。この3バンドのデビュー盤シングルの名曲を並べたのは豪華というか快挙というか選曲が素晴らしい。これだけでも言う事なしだが、他にもカナダのD.O.A.「Fucked Up Ronnie」やSSディコントロール「Boling Ponint」、アドレセンツ「I Hate Children」のデモや、映画のエンドロールで使われるフリッパー「HA HA HA」まで全26バンドを収録。