THE STALIN「負け犬」
先日再放送があったのだけれどNHKで放送されたテレビドラマ「ラジオ」は東日本大震災後の宮城県女川が舞台。仮設住宅で引きこもる刈谷友衣子演じる女子高生“某ちゃん”が、女川さいがいFM(実在する)に参加するようになり、徐々に周囲やリスナーとの関係を築きつつ、自分の道を歩み始める…というドラマ。
ドラマが始まって少しして、ラジオ放送中に何も喋れなかった某ちゃんは自分でスターリンの「負け犬」をリクエストする(“今の気分だ”と言って)。これがかかった瞬間、ラジオの前の大人たちは唖然とするが、このCDをくれた父親は海で漁をしながら大笑い、震災後に女川から遠く東京へ働きに出たリリー・フランキー(ネットリスナーという設定)は昔のバンド仲間を思い出し某ちゃんに感謝のメールを送る。
ここから某ちゃんが少しずつ心を開いていくのだが、津波にのまれた瓦礫の中から拾い上げたスターリンのCDが映るシーンは、陽光に光るプラスチックケースが擦り傷だらけで砂まみれだけど、本当に宝物に見えた。
この一連のスターリンのCDにまつわるシーンは、優しい言葉も暖かい慰めも穏やかな音も要らない、突き刺さる、尖った、激しい言葉と音を通して理解が出来るんじゃないかと思う、そんな人間がいることを、そんな時があることを表現したテレビドラマでは稀有な、そして傑出した場面だと思う。
ドラマではルースターズ「レッツ・ロック(日本語バージョン)」もチラリとかかる。