OMNIBUS a Go Go Vol.98『THE COOLEST FROM THE COLDEST Super Swedish Compilation』
例えばウェスト・サイド・ファブリケーションのアーティストを集めた『コーヒー・カップとアップル・ソース』(1995年)、日本の江戸屋レコードのレーベルとしてリリースされた『スウェディッシュ・スウィーツ』(1995年)、同じく江戸屋の『ウィンター・ギフト』(1995年)、トーレ・ヨハンソン・プロデュースでタンバリン・スタジオ録音を集めた『タンバリン・スタジオスVol.1』(1995年)、同様の趣向ながら日本のボニー・ピンクやカジヒデキ、イギリスのセイント・エティエンヌも参加している『タンバリン・スタジオスVol.2』(1997年)、ノース・オブ・ノーサウスのアーティストをカジヒデキがセレクトした『ブースカ』(1997年)などなど。有名無名、ベテラン組から新人まで組み合わせて多数リリースされていた。
この『ザ・クーレスト・フロム・ザ・コールデスト』は日本のポリドールが独自企画したコンピレーションで1996年3月にリリースされた。まぁ改めて紹介するコンピでもないのだが、カーディガンズの「カーニヴァル」が入っているということで。
日本でのスウェディッシュ・ポップ・ブームの火付けとなり大ヒットした「カーニヴァル」。1995年当時FMラジオでは超ヘヴィー・ローテーションだった。当時の日本のロック・クリティックからは無視されていたような気がするが、スウェディッシュ・ポップの扉を大きく開いた超名曲。今聴いてもまるで色褪せていないエヴァーグリーンな曲だ。
もちろんメロディやキュートなニーナの歌声も好きだし、アコースティックなフィーリングを感じさせつつ、ギターやオルガン、ハンドクラップのグルーヴィなアレンジも好きなのだが、 虜になったのはドラムだった。軽やかで手数が多いけれどメロディの邪魔にならないドラミング。躍動感があるけど非常にクールなドラムのフレーズが記憶に残る、忘れ難い楽曲だ。もっともこの軽妙さと楽曲を覆う洒落たムードは多分にトーレ・ヨハンソンのプロデュース・ワークによるものだろう。ドラムのベングトのプレイも含め、ライブではもっとワイルドなパフォーマンスだった。
このコンピレーションの1曲目に収録されているのは、イントロに17秒程の短いSEが追加されているセカンド・アルバム『ライフ』からのヴァージョン。
このコンピCDリリース直後の1996年4月にはカーディガンズ2度目となる来日公演が行われている(東京2公演、大阪・名古屋各1公演)が、1995年7月の初来日では、東京・大阪・名古屋はもちろん京都・札幌・福岡までまわるツアーを行うという、それまではライブ活動がほとんど北欧に限られていたバンドとは思えないものだったし、1997年1月にはホールツアー、東京では武道館公演に加え赤坂ブリッツ3公演を行い、いかに日本での人気が凄まじかったかがわかる。
1996年に発表した3枚目のアルバム『ファースト・バンド・オン・ザ・ムーン』は世界的なヒットとなり、1997年には大規模な北米ツアーを行った。
他にはパインフォレスト・クランチの切なくフォーキーな「Cupnoodle Song」、T-REX好き5人が集まったスターズ・オン・マーズ「He's A Bum」はT-REXテイストも感じさせる爽快なナンバー。ウルフ・トゥレソン率いるエクスキューズ「Long Gone」は『タンバリン・スタジオVol.1』にも収録されていたが、乾いた魅力のある優れた楽曲。ビーグルの「When I Speak Your Name」は1993年のシングル曲で80'sライクなアレンジの佳曲。後にカーディンガンズのニーナのソロ・プロジェクト『ア・キャンプ』で共演・共作するニクラス・フリスク率いるアトミック・スウィングは「Bossanova Swamp Meet」で完成度の高いエキゾチックなナンバー。
パンキーなネイキッド「Left Alone Again」、先に紹介したソープのコンピにも収録されていたシナモン「Me As Helen of Troy」、変わり種はラップのスタッカ・ブー「Here We Go」とファンキーなパウロ・メンドーサ「Time After Time」。有名どころではクラウドベリー・ジャム「Elevator」が1994年リリースのミニ・アルバム『アート・オブ・ビーイング・クール』から、 エッグストーン「Water」が2枚目のアルバム『サマーソルト』から収録されている。