My Wandering MUSIC History Vol.1 葡萄畑『がきデカ 恐怖のこまわり君』
私の音楽遍歴を振り返る超個人的シリーズ、“My Wandering MUSIC History”。私の放浪音楽史。まぁ、どうでもいい内容だと思うけど…。音楽遍歴といっても、小さい頃買った(買ってもらった)ウルトラマンとか仮面ライダーとか何とかロボとか宇宙戦艦なんとかの音楽レコードやセリフが入ってるソノシートやレコードは外して思い出してみると、たぶん、このシングルレコードが最初に自分で買ったロック系のレコードではないだろうか。
小学生のころは多いと思うけど私は漫画好きで、特に石森章太郎のコミックを集めていた。近くの本屋に無いときは自転車に乗ってかなり遠くの本屋まで買いに行ってた。今はもう手元には無いけど『番長惑星』や『竜神沼』、『アガルタ』なんか特に好きだった。もちろん『009』も。周りの友人達も漫画好きが結構いて手塚治虫やジョージ秋山、横山光輝、永井豪なんかの作品も結構読んだ。
ただ同時代的に出てきた山上たつひこの『がきデカ』は衝撃的で、登場するナンセンスなギャグやキメのポーズ、エロというか下ネタのたぐいは、すっかり全国の子供を虜にしてしまった。私も虜になり、たぶん途中まではコミックを買っていたと思う。それで好きが高じてこんなレコードまで買ってしまっていた。近所の本とレコードを売っていた本屋で自分で金(500円)を払って買った記憶は確かにある。名前は思い出せないけどその本屋も今はもう無い。ついでに言うとうちの近所で3~4軒位あったレコード屋は今はすべて無くなった。
それで漫画好きの少年が葡萄畑の「がきデカ 恐怖のこまわり君 c/w スジ子のブルース」を聴いてどう思ったのか。あたりまえだけど葡萄畑のレコードが欲しかったのではなく、がきデカのレコードを買ったのだ。何を期待していたのだろう…。漫画と同じくらいの面白さを期待したのだろうか。漫画という音のない世界のこまわり君を音にするとどうなるのかに興味があったのだろうか。
こまわり君のギャグ “んが~” で始まり、エレキ・ギターのリフにのせて歌われるこまわり君のやや説明的な歌詞は山上たつひこが作詞したもの。途中にはさまる “こども電話相談室” のマネ部分が面白い(当時ラジオでやってた番組、今この曲を聴いてわかる人がどれだけいるのだろうか…)ノヴェルティ・ソングというかコミック・ソング。たぶん、聴いた当時は “ふ~ん、こんなものか” っていう感想だったと思う。曲は葡萄畑の青木和義で、もちろん10CCの「Silly Love」を下敷きにしている、なんて事は知る由も無かった。むしろB面の「スジ子のブルース」のほうが面白い、と思った記憶がある。こちらもペンキ塗りたてのベンチをめぐるノベルティ・ソング(作詞/作曲は葡萄畑)。
白夜書房から出版された『日本ロック大系(下巻)』に青木のインタビューが掲載されており、このシングルの話が来たとき “山上さんに会って、シャレでやりましょう” ということになり、“モロ10CCをパクった「こまわり君」を作った”と語っている。葡萄畑のファースト・アルバムのカントリー/ザ・バンド路線からセカンドの10CC/イギリス路線へのターニング・ポイントとなったシングルであるという。このシングル “公称10万枚売れた” ということだから、私のような熱狂的『がきデカ』ファンが相当いたということだ。
山上たつひこの作品は『がきデカ』から『喜劇新思想大系』、『光る風』と遡り読んだ覚えがある。『喜劇新思想大系』は特に好きだった。『がきデカ』を初め当時集めたコミックは手元には残っていないが、ロックが好きになって葡萄畑の音源ということでこのシングル盤は手元に残った。私にとっても興味が漫画・アニメから音楽・ロックへと移るターニング・ポイントとなったシングル盤であるようだ。