My Wandering MUSIC History Vol.4 AC/DC『IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT』
ハード・ロックを聴くようになってからライヴ・アルバムの魅力を感じるようになった。計算された音作りや綿密なアレンジで音を重ねられるスタジオ録音も良いんだけれど、一発・勢いで録音されたライヴ録音は、スピード感や聴いた耳触りがスタジオ盤とは違う魅力がある。まぁ厳密にはそうとは言えず歌や演奏をミスした箇所の修正はよくあることだけど、それでもライヴ感をそこなわず、商品として成立させるための修正だとすれば、それほど責められることでは無いと思う。
そのころ愛聴したライヴ盤といえば、
ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』
レインボー『オン・ステージ』
イアン・ギラン・バンド『ライヴ・イン・ジャパン』
シン・リジー『ライヴ・アンド・デンジャラス』
スコーピオンズ『トーキョー・テープス(邦題:蠍団爆発!)』
UFO『ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト』
エアロスミス『ライヴ・ブートレッグ』
それにこのAC/DCの『If You Want Blood You've Got It』。
邦題は“ギター殺人事件AC/DC流血ライヴ”。なんというタイトルだ…。確かにネックの刺さったアンガス・ヤングのジャケは強烈。当時AC/DCの日本盤LPは『Let There Be Rock(邦題:ロック魂)』が最初にリリースされ、次が『パワーエイジ』、続いて3枚目としてこのライヴ盤がリリースされていたと思う(AC/DCの地元オーストラリアでは5枚目にあたる)。
メロディアスでも無く、様式美的なハード・ロックでは無い、ロックンロールの延長としてのハードネスでありヘヴィネス。ドラム、ベースに加えてサイドに徹した兄のマルコム・ヤングのギターを加えた強固なリズムに乗っかる形で暴れまわるアンガス・ヤングのギター、演奏をヒートアップさせるボン・スコットのヴォーカル。1978年のワールドツアーからの録音で、『T.N.T』(オーストラリアでの2枚目のアルバム)から『パワーエイジ』までのスタジオ・アルバムから選曲されたこのライヴ盤はどこから聴いてもAC/DCの魅力を感じさせてくれる。
なかでも「Whole Lotta Rosie」のイントロのギターリフと観客の“アンガス!”のコール・アンド・レスポンスのような模様は否応なく盛り上がる。この曲をラジカセでかけてよくヘッド・バンキングしたなぁ…。「Let There Be Rock」はドラムとベースのみの演奏にのせてたたみかけるボンのヴォーカルに割って入る2本のギターの強烈な響き、後半にはアンガスの独擅場があり、8分の長さを感じさせないスピード感と演奏力を聴かせてくれる。
1981年のAC/DC初来日公演は私の2回目の洋楽コンサートだった。ボンのAC/DCを見たかったという思いは当時あったかもしれない。だけどブライアン・ジョンソンと作ったアルバム『バック・イン・ブラック』は素晴らしい出来だったし、実際ライヴはとても楽しいものだった。そのライヴ・パフォーマンスが名盤『If You Want Blood You've Got It』と違わぬものである事を体験できた。この『If You Want Blood You've Got It』はロックンロールがダンス・ミュージックであること、そしてライヴは楽しむものだ、ということを実感させてくれたアルバムだった。