My Wandering MUSIC History Vol.8 PINK FLOYD『ATOM HEART MOTHER』

1970年ハーヴェスト/東芝よりリリースのアルバム。

1970年代中頃のハード・ロック中学生にとってメジャーな英米のハード・ロック・バンド群を一通り聴いた後、次に手(耳)をつけるのはプログレッシヴ・ロックだった(…まぁ私たちのまわりでは…)。ハード・ロック/ギター小僧の流れで邦楽の四人囃子を先に聴いていたから、プログレへの親和性はあり、曲が如何様にも変化し、1曲がアナログの片面全てを使った長い曲でも抵抗はなく、むしろどれだけ複雑な曲構成なのか、に痺れていったものだ。なかでもこのピンク・フロイドの『アトム・ハート・マザー(邦題:原子心母)』は私たちのまわりでとても親しまれたアルバムであった。

もちろんピンク・フロイド5枚目となるこのアルバムは、イギリスのチャートで初めて1位を獲得し、アメリカでも55位を記録したヒット・アルバムであり、ピンク・フロイドの名を一躍メジャーにした名作である。ヒプノシスによる緑の大地に立つ牛のユニークなジャケットと、 Atom・Heart・MotherというSF的とも思える単語を並べたアルバム・タイトル(当時の新聞記事から採られたという)は、さらにその音世界の神秘性を増している。

23分余りのアナログA面すべてを使った、歌は無く演奏のみのタイトル曲は、管弦楽器とコーラスを加えた重圧な演奏、繰り返し登場するテーマ、挿入された様々なサウンド・エフェクトと、クラシカルな要素も取り入れつつ、映画音楽的な手法や現代的な音響も取り入れ、ギター/キーボード等バンドとしての聴かせどころも含むものの、ロック/ロックンロールのフォームから大きく踏み出した“進歩的な”楽曲であった。但しそれが複雑な曲構成であっても、難解ではなく、解り易いテーマがあり、カタルシスを共有出来る、そんなポピュラーな聴き方ができる曲だ。当時の私たちの間ではピンク・フロイドといえば『狂気』でもシド・バレットのいた『夜明けの口笛吹き』でもなく『原子心母』であり、プログレといえば『原子心母』を原点とし、語られる様になったものである。

とはいうもののアナログでいえばB面にあたるアコースティックな楽曲群は(私に関して言えば)当時ほとんど無視され、この辺りを聴いて味わえるようになったのは数十年後であるが…。

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