My Wandering MUSIC History Vol.32 THE ROOSTERS『THE ROOSTERS à-GOGO』
ルースターズのレコードを始めて聴いたのはセカンド・アルバムだった。たぶん友人のKBちゃんに借りたのだろう。同じころ出ていたアナーキーの『亜無亜危異都市』を貸しレコード屋で借りて、一緒にカセットに録音した覚えがある。
当時はアナログA面の「One More Kiss」や「Girl Friend」のスウィートな感じが、んー、ちょっとなぁという感想だったが、B面「Dissatisfaction」からの流れが好きだった。まぁ同時にカセットに録音したアナーキーも聴きつつ、他のバンドと同じようにルースターズも特別贔屓にしているバンドというわけではなかった。
ある日友人からまわってきたカセットにはFMのライヴ録音が収められていて、A面にはモッズのライヴ、B面にはルースターズのライヴが録音してあった。ルースターズのライヴは「ロージー」、「Dissatisfaction」、「Fade Away」、「Do The Boogie」の4曲だった。後にこの録音は『The Basement Tapes~Sunny Day Live At Shibuya Eggman 1981.7.14』として完全版がリリースされるエッグマンでのライヴなのだが、当時はこのライヴがいつ、どこで録音されたのかもわからなかった。 “まぼ、まぼろしのシングル”と紹介して始まる「ロージー」のコーラスを効かせた花田のギター・プレイはファンタスティックで、池畑のドスドスと突き進むリズムも迫力満点。大江の少ししゃがれてるけど艶のあるヴォーカルも魅力的だった。セカンド・アルバム収録の2曲「Dissatisfaction」と「Fade Away」のライヴはドライヴ感を増しているし、「Do The Boogie」の混沌とした演奏にも惹き込まれた。
『à-GOGO』がリリースされた当時、大江はよく自分達の魅力を“最新型ロックンロール”と口にしていたが、確かにこんなに格好良いRock'n'Rollを演奏しているバンドは稀有な存在だ。スリーコードを使った曲でもこれだけの表現力があり、スピード感があり、スリリングな瞬間を作り出せる、しかも迸る新鮮さと腰の据わった落ち着きをも兼ね備えている。とにかく4曲のFMライヴ、これが私をルースターズの虜にし、スペシャルなバンドにしたきっかけの音源だった。
さてアルバム『à-GOGO』だが、大江慎也のどアップのフォトが使われた表ジャケット、そして裏ジャケとレコード袋両面には他メンバーのどアップ写真が使われている。これがPILのファーストアルバムに準じているのを知るのはだいぶ後だ。冒頭の「ラジオ上海~Wipe Out」。ライナーの対談で“これダブでしょ”と言われているが、ダブというのを積極的に聴きだすのももっと後だ。まぁこの辺からもルースターズが色々な素材を自分達なりに咀嚼し最新型として表現していたかが後になって私にはわかったのだが。
コニー・フランシスのカヴァー「Lipstic On Your Collar」。キュートな曲で意外な選曲だが、ストレイ・キャッツの「You Can't Hurry Love」が参考にあるかも。井上のベースラインが楽しい。ポップでシングルカットされた「One More Kiss」。シングル盤のジャケットにはアルバムのジャケットに使用された写真の別カットが使用されている。 “ミルク飲みながら”ってところが『時計仕掛けのオレンジ』を感じさせる「Sitting On The Fence」は粘りのあるギターも魅力的だ。大江が“新しい時代のBorn To Lose”と紹介していた「Girl Friend」はシングルでもリリースされたロマンチックな曲。モダン・ラヴァーズ(ジョナサン・リッチマン)の曲「Girl Friend」とは同名異曲だが共通性も感じる。アナログではここまでがA面。
アナログB面は無秩序な怒りを叩きつけるロックンロール・ナンバー「Dissatisfaction」で始まり、続く小気味よく“消えちまいな”と吐き捨てる「Fade Away」の流れが最高。サンハウスのカヴァー「Bacillus Capsule」には凶暴な印象を持ったなぁ。まだ聴いたことの無いサンハウスというバンドはどれだけ恐ろしいのかと思った。初期ストーンズタイプの「Fly」は抑えたヴォーカルが効果的。タイトな演奏が素晴らしい。ボ・ディドリーの最新型カヴァー「I'm A Man」は速度感がたまらない。ラストのトルネードスのカヴァー「Telstar」も冒頭の「Wipe Out」(サファリーズのカヴァー)と合わせてアルバムのトータル感をもたらす。「I'm A Man」、「ビールス・カプセル」(バチラス・カプセル)のカヴァーはプロデューサーの柏木省三のアイディアで取り上げたと大江がインタビューで答えていた。
「ラジオ上海」は別として、カヴァーが5曲、オリジナルが6曲、ポップでカラフルな面も出しつつ、遊び心もあって、ブリティッシュ経由のブルース・フィーリングもありとバラエティに富んでいるがコンセプトを感じさせる1枚。