My Wandering MUSIC History Vol.39 STRAY CATS『STRAY CATS』

1981年、英アリスタよりリリースのアルバム。

ストレイ・キャツが登場するまで“ロカビリー”に縁がなかった私だが、彼らのファースト・アルバム『ストレイ・キャッツ』はかなり衝撃的だった。ブライアン・セッツァーのテクニック抜群でスリリングなギタープレイ、リー・ロッカーのスラップ・ベース、スタンディングで演奏するスリム・ジム・ファントムのドラムが一体となったスピード感がありながらも腰の据わった音像は、パンク・ロック好きの私の気分にもフィットし、それまで感じた事の無かった高揚感をもたらしてくれた。それにブライアン・セッツァーの金髪リーゼントのルックスももちろん気に入った。なるほどこれがパンク世代のロカビリー=ネオ・ロカっていうのか。ジャケットのコンクリートの地下室のような場所に立つ3人の佇まいもかっこいい。

アルバムの冒頭を飾るのは、イギリスでのファーストシングル曲「Runaway Boys」。渋いノリで始まり、ブライアンのヴォーカルに魅せられ、ギターソロが炸裂する頃にはストレイ・キャッツの虜になっているだろう。挨拶がわりの1曲だ。ストレイ・キャッツはアメリカのバンドだがこのデビューアルバム発表前、なかなか盛り上がらないアメリカでの活動に業を煮やしイギリス行きを決意、イギリスでのライブ活動はすぐに評判を呼び、様々なイギリスのミュージシャンが絶賛し、またレコード会社の争奪戦になった。結局、英アリスタと契約しデイヴ・エドモンズをプロデューサーに起用しアメリカ本国に先駆けレコード・デビューとなったのであった。

古いロカビリー曲(「Bop Bop Ba Doo Bop」)を参考にした「Fishnet Stockings」、ウォーレン・スミスの曲をパンキーにカヴァーした「Ubangi Stomp」は裏打ちのギターカッティングが熱狂を誘う。エディ・コクランのスピード感溢れるカヴァー「Jeanie Jeanie Jeanie」、1979年に発生したイランのアメリカ大使館人質事件に材を取った「Storm The Embassy」はマイナー調でストレートなロック。この曲に影響された日本のバンドも多いのじゃないか。ストレイ・キャッツの代名詞ともいえる「Rock This Town」は英セカンド・シングルで本国アメリカでのファーストシングル。どちらの国でもヒットした。「Rumble In Brighton」も人気のある曲だろう。この曲のテンションは半端じゃない。

いやいやこの曲も日本を含む後進達に大きな影響を与えているだろう「Stray Cat Strut」。バンド組んでたら一度は演奏したくなるんじゃないか。エルヴィスを思わせる曲調の「Crawl Up And Die」、 ジーン・ヴィンセント&ヒズ・ブルー・キャップスのカヴァー「Double Talking Baby」は強力なノリのロカビリー。リッキー・ネルソンのポップな「My One Desire」。ラストはニューオーリンズのロイ・モントレルのR&B「(Everytime I hear) That Mellow Saxophone」を強烈にカヴァーした「Wild Saxophone」。クラッシュなど多くのセッションに参加しているゲイリー・バーナクルがサックスで参加している。

1970年代後半に始まったパンク・ロックにはロックンロールの復権という側面があった。およそ2分から3分間の簡潔な演奏は、レコード片面全部を使った長く複雑で装飾過多なプログレ・バンドや、リフを引きずり、長いギターソロやドラムソロを続ける重量級のハード・ロック・バンドにまるで感情移入出来ずにいた当時の若者たちを虜にする魅力があった。それにクラッシュやピストルズ(シド・ヴィシャス)、ジャムはロックンロールのカヴァーを録音し原曲に新たな魅力を付け加えている。

ストレイ・キャッツの提示したネオ・ロカビリーも唯の懐古趣味じゃなく、ストレイ・キャッツの技量やアイディア等、新たな解釈を持ち込んだからこそ世界中の若者に支持され、多くのフォロワーを生み、ロカビリー好きに限らず年月を経ても現在まで聴き継がれているのだろう。

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