My Wandering MUSIC History, Vol.46 PUBLIC IMAGE LIMITED『FLOWERS OF ROMANCE』
1978年1月ジョニー・ロットンは“ロックは死んだ”と言い残してセックス・ピストルズを去り、本名のジョン・ライドンとしてパブリック・イメージ・リミテッドを結成する。ピストルズのロックンロール・フォームを棄て、レゲエ/ダブからの影響下にもありつつ、反復するドラムパターンの上にフリー・フォームな演奏、ジャー・ウォブルのベースは重心低く唸り、キース・レヴィンのギターはフリーキーに切っ先鋭く、ジョンは歌うというより叫び、語り、アジテイトする。
ファースト・アルバム『パブリック・イメージ』はそれでも曲によってはロックのフォームを残してはいたが、続くセカンド・アルバム『メタル・ボックス』でさらに解体は進み、スタジオ第3作の『フラワーズ・オブ・ロマンス』ではジャー・ウォブルが脱退しベースレスとなったことから、土着的なドラムサウンド、またはパーカッシブなトラックが大きくフューチャーされ民族音楽的ともいえる内容。キース・レヴィンのギターはやや抑えめ、ジョン・ライドンはまるで祭司のような抑揚で言葉を紡ぐ。マーティン・アトキンスは「Four Enclosed Walls」、「Under The House」、「Banging The Door」の3曲でドラムをプレイしているが、その他のトラックではキース・レヴィンがドラムを担当したようだ。
冒頭の歌詞“Doom sits in gloom in his room. Destroy the infidel”にドキリとする「Four Enclosed Walls」でアルバムは幕を開け、エクスペリメンタルな「Track 8」や「Phenagen」が続く。「Flowers of Romance」はアルバムに先行して7インチと12インチでシングル・リリースされているタイトル・トラック。複数のパーカッションをダビングし、ダンサブルというか高揚感をもたらす「Under The House」、インストゥルメンタルの「Hymies Him」、シンセサイザーとドラム、ジョンのヴォイス三つ巴の「Banging The Door」、キース・レヴィンのギターの絡みがカッコいい「Go Back」、ラストは混沌の「Francis Massacre」でノイジーに終了。
“フラワーズ・オブ・ロマンス”…セックス・ピストルズの極初期に演奏されたという曲名であり、シド・ヴィシャスがピストルズ加入する前にキース・レヴィンと組んでいたバンド名でもある。ロマンティックな響きのタイトルだが、ラヴ・ソングではないという。過去のロマンスの思い出を大事にするより、必要なものだけを持って新たに生まれ変われ、という主旨かな。
…と、まぁいろいろ書いたが、このアルバムを初めて聴いたのはリリース当時で、ローソクだか裸電球だかを薄暗く灯した友人の部屋に数名の友人達が集まっていたときだった。たぶんお香は焚いていなかったと思う…。そんなシチュエーションでの聴き方も出来てしまう内容。私はファーストも『メタル・ボックス』も聴いていなくて、この時に初めてパブリック・イメージ・リミテッドを聴いたんじゃないかな。ジョン・ライドンの変わり様にもびっくりした覚えがある。