My Wandering MUSIC History Vol.53 アナーキー『亜無亜危異都市』

1981年5月21日、インビテーション/ビクターよりリリースのアルバム。

このページの少し前に書いたけど、ルースターズの『à-GOGO』と一緒にカセットに録音して聴いてたアナーキーのサード・アルバム。たぶんアナーキーはこのアルバムを最初に聴いたと思う。ファーストはそれなりに話題になってたと思うけど聴いてなかった。なんだろうなぁ。暴走族からパンクバンドへっていう情報が入ってたからかなぁ。バンド名の漢字表記とか当時は馴染めなかったし。まぁそんな関係かどうか各種武勇伝やら色々とあるバンドでもある…。
で、サード・アルバムはプロデュースがマイキー・ドレッド、エンジニアにスティーヴ・ナイ、録音はロンドン・エアー・スタジオで行われた、という話題やクラッシュの面々がスタジオに遊びに来ていたという情報もあり、聴いてみようかなと…思ったのかもしれん。

全体的にクラッシュ直系のタイトでドライなサウンドで作られたアルバムは、 “金であやつるヤツも居なけりゃ あやつられるヤツも居ない” というアナーキーの面々が考える都市の姿を描き出した「アナーキー・シティ」で始まり、1980年代初頭の日本の右傾化に反応した「戦争」、「右」、「心の銃」と3曲続く流れ。安易にピストルが欲しいなんて言わず、心の銃ってところが当時も共感出来た。聴く者に演奏者と同じだけのエネルギーを求める「醒めるな」なんて曲を聴くとアナーキーというバンドは熱いバンドだったんだなとあらためて思う。今回聴いていいなと思ったのが「自由」。ファースト(象徴をピー音で消された)やセカンド(タレントを揶揄する曲が外された)の過去アルバム制作時の事をベースにしたのか、自由に歌えない、発表出来ない不自由さを歌ったもの。のちのアナーキー~ザ・ロック・バンドに通じるルーズなサウンドもいい。

アナログではB面にうつって、テレビに慰めを見出している日常を歌にしたレゲエ・テイスト「TV」とそのダブ「TV(DUB)」が続きマイキーの本領発揮。この後は「都市(まち)」、モータウン調のハネたリズムの「探し出せ」、スカビートの「SAFETY ZONE Ⅱ」といったお前らの生活それでいいのか、という内容の歌が続き、ラストは大人達に異議申し立て、作り変えちまおうというロックンロールナンバー「改革子供(REVOLUTION KIDS)」で終了、そのメッセージはアルバム1曲目に戻り、循環するよう工夫されているとも思える。

どちらかというとアナログA面はポリティカルな曲が、 B面は個人の生活を対象にしたようなパーソナルな曲が集められているようだ。作詞・作曲のクレジットはアナーキーで、全てバンド名義。アルバム『亜無亜危異都市』は初期 “パンク型” アナーキーの総決算ともいえる内容となり、ロンドンでの録音はサウンド的にも録音技術的にもバンドメンバーに大きな影響を与える経験となり、バンドの成長に貢献するものとなったが、同時にこの後バンドの方向性が変わってゆく契機ともなった。

今年発売された本『日本パンク・ロッカー列伝』の仲野茂のインタビューにはクラッシュのメンバーとサッカーをしたとか、パブに飲みに行ったとか、Tシャツ交換したとか、楽器を借りて演奏したとか、このアルバム録音時のエピソードが書かれていたし、ジョー、ミック、ポールと写ったアナーキーのメンバー写真も掲載されていた。

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