My Wandering MUSIC History Vol.56 THE ROLLING STONES『LOVE YOU LIVE』
ハードロック→パンク→ニューウェイヴと聴いてきて、きちんと聴いたことのなかったストーンズ。だけど1981年頃にこのライヴ・アルバム『ラヴ・ユー・ライヴ』を聴いて好きになった。たぶん同級生のKG君が薦めてくれたんだと思う。
このアルバムのジャケットは、私に強烈な印象を与えた幾つかのジャケットのうちの一枚。アンディ・ウォーホルがアートワークを担当した、カラフルだが非常に猥雑な印象を与えるものだ。30cmアナログだとなおさらで、ほぼ原寸大のミックが歯を剥き出して手を噛んでる。赤い舌を出したアートワークのレコード内袋も強烈なもの。一体この中の音はどんな野蛮で危険な音が入っているんだろう、なんて思ったものだ。
オープニングでのパーカッシブな演出に続いて、アーロン・コープランドの「庶民のファンファーレ」が流れる中、ドドタン、ドドタンとドラムが響き、始まる「Honky Tonk Women」のイントロ。この、ここのフレーズというか部分だけでシビレた、ヤラレたというか好きになったなぁ。今聴いてももちろんカッコいい。これだけでストーンズのファンになったと言っていいくらい。
オリジナル・アナログは2枚組。1976年のパリやロンドンのライヴ、1975年のトロントのライヴ、1977年のトロント・エル・モカンボ・クラブでのライヴ(アナログ盤だとC面)を収録している。プロデュースはグリマー・ツインズことミックとキース。
皆が薦めるエル・モカンボ・サイドにはボ・ディドリー~マディ・ウォーターズの「Mannish Boy」、ボ・ディドリー「Crackin' Up」、ハウリン・ウルフ(ウィリー・ディクソン作)「Little Red Rooster」、チャック・ベリー「Around And Around」の強力ルーツ4曲!リラックスした渋い演奏。この他の収録曲の大半は、自らのレコード・カンパニーを作った比較的(1977年当時の)近年リリースアルバムからの演奏曲で、1970年代ストーンズの魅力がたっぷり味わえるライヴ盤だ(ちなみにトップ1曲目「Honky Tonk~」とB面ラスト「You Can't Always Get What You Want」は1969年にシングルとしてリリースされたA/B面曲、その間に挟まれた曲ではメドレー収録の「Get Off My Cloud」が1965年発表曲、 D面の「Jumpin' Jack Flash」と「Sympathy For The Devil」が1968年発表曲だった)。
ま、トータルで素晴らしいライヴ・アルバムなのだが、キースの歌う「Happy」、ファンキーな「Hot Stuff」、チャック・ベリー・スタイルのスターファッカー・ロックンロール「Star Star」、うねりとルーズな魅力「Tumbling Dice」、フレッド・マクダウェルのカヴァー「You Gotta Move」なんかが入ったアナログA~B面の流れも好き。D面は言わずもがなの代表曲ばかりだが、7分を超えて後半パーカッシブな「Sympathy For~」のエキサイティングでハイなサイケデリック感もインパクト大。ロックンロール、ブルース、リズム&ブルース、レゲエ…それらを噛み砕いて飲み込み、放出したストーンズ1970年代傑作ライヴ・アルバムだ (まぁ、かなり編集もされているようだがね…)。
今聴き返してなんとなく思うのは、ストーンズの激しく危険なまでの猥雑さはこのライヴ・アルバムのリリース後、徐々に失われていったんじゃないかな、という事だ。収録されているトロントのエル・モカンボでのライヴ数日前にキースはヘロイン所持で逮捕されたが、この時をきっかけにしてドラッグ中毒から抜け出すことに成功(もちろん簡単じゃなかったようだが…)長い間の悪癖と手を切った。ストーンズはクリーンさとヘルシーさを取り入れ、年齢による衰えと厳しい音楽業界をロックンロールでサヴァイヴするため身体とサウンドの強靭さを増し1980年代へ突入していく。
当初ワーナーからリリースされた日本盤の帯に書かれた邦題は『感激!偉大なるライヴ』だった。私の持ってるアナログは東芝EMIからリリースされたもので、帯と解説書に記載された“ストーンズを嫌いな奴は信じない。世界中の誰だって―加藤和彦”は、けだし至言。