My Wandering MUSIC History Vol.57 NON BAND『NON baNd』
ロックバンドの楽器といえばギター・ベース・ドラムがありゃいい。加えてキーボードか。ホーンなんかソリッドさが失われるだけ…ましてストリングスなんて、などと思っていた時期が長くあったのだが、 このノンバンドのアルバムを聴いてヴァイオリンの音色の入った曲もいいなぁと思うようになったものだ。たぶんリリース後暫くして友人に借りて聴いたんじゃないかな。聴く音楽の種類の間口を広げてくれたディスクとも思う。
テレグラフ・レコードとしては5枚目のリリースとなったノンバンドの10インチ・アルバム。
ノンバンドの音源としてはソノシート2枚組『NON BANDIN' LIVE』と2曲参加したオムニバス『都市通信』に続くもの。地引雄一著『ストリート・キングダム』によると、当初シティロッカーレコードとの共同制作として始まった『NON baNd』のレコーディングだが、レコーディングが長引くにつれ、両レーベルの制作に対する意見の相違によりテレグラフからの単独リリースとなったという。ただリリースされたものはジャケットにテレグラフ/シティロッカー両方とも記載され、レーベル面に“TELEROCCA”となっているものもあるようだ(初回プレスのみか?)。
ノン以外のメンバーの移り変わりが多いノンバンドだったが、この頃はノン(ヴォーカル&ベース)、山岸騏之介(ヴァイオリン、クラリネット)、玉垣満(ドラム)のトリオ編成。モノクロームのジャケットがいい味。私の持っているディスクは後の1990年にCD化された時のものでジャケットにはノンによると思われるペイントが使われていた(オリジナルの表ジャケも裏側にあり)。
オリジナルは6曲入りで30分にも満たないミニ・アルバムといえるもの。どれも魅力ある楽曲で、ニューウェイヴで攻撃的とも言えるダンサブルなリズムに変幻自在なノンのヴォーカル。 ある曲ではフリーキーに飛び跳ねるクラリネット、またある曲では幽玄なヴァイオリンの音色が響く。特に好きなのは「Wild Child(can't stand it)」、「Solar」、ラストのリズミカルな「あわのうた」。久しぶりに聴いてみてノンの自由で魅惑的なヴォーカルスタイルはやはり独特なものだと感じたなぁ。妖女と幼女が瞬間で入れ替わる驚きというかスリルに似た感触。
ノンバンドはこのアルバムリリース後、1982年夏頃にはメンバーが抜けバンドは消滅。山岸騏之介はEDPSのレコーディングやライヴに参加。ノンはソロ等で断続的に音楽活動をおこなっていたが故郷の弘前へ戻り家業を継ぐことに。やがて徐々にベース弾き語り等音楽活動を再開し、2000年に山岸、玉垣とともにノンバンドとしてライヴをおこなった。その後もソロ、ノンバンドとして音楽活動を継続している。ドラム玉垣満と映画『爆裂都市』でブルー(泉谷の相手)役の大林真由美が結婚していたというのを今回この文章を書くのにネットを見ていて初めて知った。