My Wandering MUSIC History Vol.58 THE PRETENDERS『THE PRETENDERS』
プリテンダーズを初めて聴いたのは1982年頃、このファーストかセカンド・アルバムだったか。もしかしたら『Extended Play』という編集盤だったかも。プリテンダーズの初期ではセカンドとメンバーが変わった3枚目が特に印象に残ってるけど、このセルフタイトルのファースト・アルバムも良いアルバムだ(このアルバムは全英1位・全米9位のヒット)。
マルコム・マクラーレンのブティックに出入りし、ピストルズ周辺の人脈でもあるクリッシー・ハインド率いるプリテンダーズは、パンキーなスタイルがありながら優しさのある曲が共存しているのが魅力。オープニングの強烈なラヴレター「Precious」やギターのミュートカッティングがキンキン金属的に響く「The Wait」(シングル「Stop Your Sobbing」のB面とは違うアルバム・ヴァージョン)、スピーディでキラキラしたサウンドの「Tattooed Love Boy」なんかはパンキーでカッコいい。
ニック・ロウのプロデュースでデビュー・シングル曲だった「Stop Your Sobbing」や、EBTGや日本だと山下久美子がカヴァーしたセカンド・シングル曲「Kid(邦題:愛しのキッズ)」は優しいソフトタッチの曲。「Stop Your Sobbing」がキンクスの曲(1964年のデビュー・アルバム収録曲)だというのはこのカヴァーで初めて知ったのだが、渋い通好みの選曲、シンプルでいい曲だなぁと思ったものだ。このカヴァーでキンクスというか60年代イギリスのビートグループにも興味持ったな(後のクリッシーとキンクスのレイ・デイヴィスが結婚~出産~離婚というのは驚きだった…クリッシーにとっては憧れの人だったらしい…初来日の時、同じく来日していたキンクスと同日同時刻に「Stop Your Sobbing」を演奏したというエピソードも…)。 「Kid」も低音弦の響きを使うイントロ、キラキラした高音のソロ、とギターサウンドのアレンジが素晴らしくドリーミー。
他にも重心の低い「The Phone Call」、練られたアレンジの「Up The Neck」、タイトルが時代を感じさせるインストの「Space Invader」(ベースのピートがこのゲームの名人だったらしい)、 レゲエ・スタイルの「Private Life」、3枚目のシングル曲で全英1位のヒット・シングルとなった「Brass In Pocket」、ドラマチックな「Lovers of Today」、ニューウェイヴィーな雰囲気の「Mystery Achievement」を収録、全12曲。
アルバムのプロデュースはクリス・トーマス(「Stop Your Sobbing」を除く)、録音とミックスはビル・プライス、 atウエセックス・スタジオというピストルズNMTB体制。先に紹介したアナーキーのアルバム『亜無亜危異都市』のエンジニア、スティーヴ・ナイの名前もクレジットされている。
クリッシーはロック・クリティック出身ということもあり、歌詞の描写・視点には鋭さと寛容さが感じられる。サウンド/アレンジも媚びているという意味じゃなくポピュラリティを意識している。そういう姿勢は、当時や後の女性アーティスト達に大きな影響を与えていると思う。