My Wandering MUSIC History Vol.68 THE ROLLING STONES『STILL LIFE (AMERICAN CONCERT 1981) 』

1982年6月、ローリング・ストーンズ・レコードよりリリースのライヴ・アルバム。

かつて東京の情報誌で “シティロード” という雑誌があった。私が音楽や映画の情報や流行を(まぁ今よりは)積極的に追っていた80年代~90年代初めにかけて購読していた情報誌だ。そのシティーロードが1982年7月頃の号(もう切り抜きしか残ってないので正確に何月号かわからない)で、ルースターズの大江慎也にインタビューしている。内容は1982年7月4日に千代田公会堂で行うライヴに向けたインタビューだが、この中で大江慎也がこのストーンズのライヴ・アルバム『スティル・ライフ』に言及している。
“ストーンズの一番新しいライヴ・アルバムを聴いてまたびっくりしたんだけど、彼らのライヴでのリズム・アレンジは凄い。例えば「アンダー・マイ・サム」なんかスタジオ盤では座ったリズム、今度のライヴ盤では完全に立ったリズムなんだな”
と語り、ライヴに向けてリズム・アレンジの参考にしたいと言っている。

この大江のコメントを読んで、“立ったリズム”かぁ、ルースターズのサウンドはこういう研究から生まれるんだなぁ、なるほどなぁ…などと当時思ったものだ(話が逸れるが、数度にわたる引っ越しの度に処分してしまったので、私が所有しているシティーロードも数冊しか残っていないが、シティーロードに関してはいつか別枠で取り上げてみたいと思っている)。

少し前にこのページに書いたが、1981年頃に『ラヴ・ユー・ライヴ』を聴いてストーンズに興味を持った私は、80年代初頭のスタジオ・アルバム『エモーショナル・レスキュー』(1980年)、『刺青の男』(1981年)は友人か貸しレコード屋から借りて聴いたけれど、それほど聴きこんだっていう程でもなかった。1981年北米ツアーのライヴからセレクトされ1982年にリリースされた『スティル・ライフ』も誰かに借りたと思うが、このアルバムはカセット・テープに録音して繰り返し聴いたお気に入りのライヴ・アルバムだ。

まぁ先の大江のコメントにも少なからず影響されたが、コンパクトな楽曲を並べ、トータルで約40分という聴き易い収録時間、カズ・ヤマザキによるカラフルなヴィジュアルのジャケットも鮮烈な印象だった。

イントロに使われたデューク・エリントンの「Take The A Train(邦題:A列車で行こう)」の軽快なリズム・響きに重なる歓声に続いて始まる「Under My Thumb」のリフ。1966年リリースのアルバム『アフターマス』収録曲だが、スタジオ・ヴァージョンでも、1966年米リリースのライヴ『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット』のエキサイティングな直線的ビートとも異なる、リズムのハネと揺れ/グルーヴが感じられるブラッシュ・アップしたオープニング・ナンバーとなった。それはこの他のストーンズ・クラシック「Let's Spend The Night Together」(1967年シングル曲)やアーマ・トーマスのカヴァー「Time Is On My Side」(1964年)にも言えることで、ライヴのドライヴ感や熟練した演奏力、安定感や即興性により新たな魅力を伝えている。

私が聴いた時はアナログ盤だったが、A面最後の2曲、エディ・コクランのカヴァー「Twenty Flight Rock」とスモーキー・ロビンソン&ミラクルズのカヴァー「Going To A Go Go」は特に好きで どちらもギター・リフやドラミング、リズムの緩急がカッコいい。ストーンズがロックンロール・クラシックやモータウン・クラシックを80年代に甦らせた好カヴァー。「Going To A Go Go」は「Going To A Go Go c/w Beast of Burden」(B面も同時期のライヴで『スティル・ライフ』未収録)としてアルバムと同時リリースされている。

他には直近のスタジオ・アルバム3枚から選曲された「Shatterd」、「Let Me Go」、「Start Me Up」、「Just My Imagination」(ミラクルズのカヴァー)、ラストは言わずと知れた「(I Can't Get No) Satisfaction」で恍惚感を作り出し、続いてジミヘンの「Star Spangled Banner(邦題:星条旗よ永遠なれ)」のアウトロで終了。

アルバムのプロデュースはThe Glimmer Twinsことミックとキース。レコ―ディング・エンジニアはボブ・クリアマウンテンとデヴィッド・ヒューイット、ミックスはボブ・クリアマウンテンで、このあたりもこのアルバムがバンドのエナジーを洗練したサウンドでパックすることに成功した一因でもあると思う。

ストーンズの1981年アメリカン・ツアーはハル・アシュビー監督によって映画『Let's Spend The Night Together』として1983年に劇場公開された。この映画は25曲が収録されておりボリューム満点だ。私も確か高田馬場の映画館に観に行った覚えがある。ほぼ最後尾の席で見ていたが、映画が始まったとたん何人か立ち上がり歓声を上げ踊りだしたのには驚いたものだ。このころはストーンズの来日を皆待ちわびて映画を観ていたんだな。

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