My Wandering MUSIC History Vol.70 『爆裂都市 BURST CITY ORIGINAL SOUND TRACK ALBUM』
1982年3月に劇場公開された石井聰亙監督の映画『爆裂都市 バーストシティ』のオリジナル・サウンド・トラック・アルバム。映画は公開時には観に行ってないが(たぶん近くの映画館では上映されてなかったんだろう)、このサントラはリリースされてすぐに聴いたんじゃないかな。たぶんKBちゃんに借りたんだと思う。
ルースターズとロッカーズの混成バンド、バトル・ロッカーズの楽曲が7曲、ルースターズの花田、井上、池畑、当時ルースターズのプロデューサーだった柏木省三を中心にしたユニット1984の楽曲が3曲、ザ・ロッカーズの楽曲が3曲、陣内のソロ名義で1曲、という内容。収録曲は下記の通り。
1.ソルジャー/1984
2.セル ナンバー 8(第8病棟)/バトルロッカーズ
3.ワイルド・スーパーマーケット/バトルロッカーズ
4.シャープシューズでケリ上げろ!/ザ・ロッカーズ
5.プア ボーイ/ザ・ロッカーズ
6.ソロー/1984
7.シスターダークネス/バトルロッカーズ
8.視界ゼロの女(マチ)/陣内孝則
9.キックス/1984
10.マイト ガイ/ザ・ロッカーズ
11.バチラス ボンブ(細菌爆弾)/バトルロッカーズ
12.フラストレーション/バトルロッカーズ
13.ボロボロ/バトルロッカーズ
14.セル ナンバー 8(第8病棟)リプリーズ/バトルロッカーズ
バトル・ロッカーズはVo.陣内孝則、G.鶴川仁美がロッカーズから、G.大江慎也、Ds.池畑潤二がルースターズから、B.伊勢田勇人がオーディションで参加、というメンバー(レコーディングではルースターズの井上富雄がベースを弾いているという話をロフトプラスワンで聞いた気がする、 まぁそりゃそうだろうね…)。
映画を代表する曲ともいえるバトル・ロッカーズの「セル ナンバー8(第8病棟)」はオープニングのバトル・ロッカーズの演奏シーンで使われている曲。 “注射器の味”や“カプセルの味”が忘れられないというドラッギーな内容が自主規制させたのか、サントラ盤には歌詞が掲載されていない陣内孝則作詞のナンバー。そのカッ飛んだかっこよさに度肝を抜かれたものだが、ある時小さなレコード評を目にする。
1995年に発売された『Rock'n'Roll』という雑誌クロスビートの増刊号の中で“裏名盤100選”というコーナーがあり、そこに紹介されていたオランダのOutsidersというバンドのレコードの紹介記事に “80年代初頭、バトル・ロッカーズ(陣内孝則&大江慎也)が彼らの「Won't You Listen」に瓜二つの曲を演っていた(歌詞は日本語)。 単なる偶然か?それとも、どうせこんなマイナーなバンドをパクってもバレやしねえよと思って使ったのだろうか?” と書かれていたのだ(執筆者は関口弘)。
へぇ―そりゃー聴いてみたいな、と思いつつ、裏名盤だけあってOutsidersの曲を聴いたのは随分後の事だ(1994年にリイシューされた輸入盤CDを入手)。聴いてみると、なるほど「セル ナンバー8」は「Won't You Listen」に瓜二つ。ハーモニカも使用しているし。さらにバトル・ロッカーズの「シスターダークネス」がOutsidersの「Afraid of The Dark」に瓜二つということも分かった。まぁだからと言って「セル ナンバー8」のカッコよさは少しも失われないんだけどね。
「セル ナンバー8(第8病棟)リプリーズ」はアレンジが違うヴァージョンで映画のラストで使われている。
バトル・ロッカーズの楽曲は演奏シーンで使われているが、どの曲もスピード感のあるパンキーなアレンジがかっこいい。特に「バチラスボンブ(細菌爆弾)」のサイエンス・フィクショナルでスペイシーでマッドな歌詞、カラフルなアレンジがファンタスティックな名曲。「ボロボロ」はタイトでアクセントが効いたアレンジと陣内のジャンクな歌詞がマッチしたナンバーだ。1984の楽曲は主に町田町蔵と戸井十月が演じるキチガイ兄弟のシーンや浮浪者達の生活を描いたシーン、原発誘致を目論む菊川ファミリーのシーンなどで使われていた。どれもインストでパーカッシブな「ソルジャー」、ダーク&ニューウェイヴな「ソロー」、ギターのカッティングが鋭い「キックス」を収録。
ザ・ロッカーズの楽曲は主にバトルズのアジトのシーンなどで使われ、スローな「プアボーイ」、「シャープシューズでケリ上げろ!」、「マイトガイ」を収録。このアルバムに収録されている「シャープシューズ~」は劇中のセリフや効果音が被っていて曲の後半はフェイドアウトしてしまうヴァージョン。ザ・ロッカーズはこのアルバムを聴くまで聴いていなかったけどね…。陣内ソロ名義の「視界ゼロの女(マチ)」は泉谷しげる作詞、陣内作曲のナンバーで、 劇中ではライヴ活動停止となったバトルズのメンバーの気持ちを代弁するように流れていた。
この曲はシングル・リリースされているが、 シングルのB面はバトルロッカーズ「セルナンバー8(第8病棟)」で“We Want Battle!”の歓声が被っていないヴァージョンでの収録。
映画『爆裂都市』は公開後しばらく経って名画座で観た。『狂い咲きサンダーロード』と『シャッフル』との3本立てだったと思う。たしか池袋の文芸座で観たんじゃないかな。
冒頭早回しで都市を走る主観のシーンに流れる1984の「ソロー」、「ソルジャー」に痺れたなぁ。 バイオレンスの巨匠、サム・ペキンパーのスローモーションに対する、石井聰亙の早回しを多用した手法はヴァイオレンスを描きながらも非現実感を作り出し、スピード感を増し、コミカルさを含んだ独特の表現になっていたと思う。後半の暴動シーンには精神状態をカオスへと引き入れられ圧倒され、映画館の暗闇の中で頭がクラクラした記憶がある。
冒頭早回しで都市を走る主観のシーンに流れる1984の「ソロー」、「ソルジャー」に痺れたなぁ。 バイオレンスの巨匠、サム・ペキンパーのスローモーションに対する、石井聰亙の早回しを多用した手法はヴァイオレンスを描きながらも非現実感を作り出し、スピード感を増し、コミカルさを含んだ独特の表現になっていたと思う。後半の暴動シーンには精神状態をカオスへと引き入れられ圧倒され、映画館の暗闇の中で頭がクラクラした記憶がある。
映画の音楽プロデュースは柏木省三で、映画の中でもライヴハウス20000Vのオーナー(?)役で警官に詰め寄られるシーンに出演している。またレコーディングのスペシャル・サンクスには安藤広一の名前もクレジットされている。