THE BEATLES「TWIST AND SHOUT」

2016年9月9日、ユニヴァーサル/アップルよりリリースのライヴ・アルバム『Live At The Hollywood Bowl』より。

ビートルズ唯一の公式ライブ・アルバムがオリジナル・マルチ・トラック・テープからリミックスとリマスタリングを施され、ボーナストラック4曲を追加してリリースされた。

1964年と1965年にロスのハリウッド・ボウルで演奏された録音からセレクトしたオリジナルは1977年5月にリリースされているが、私はこのライヴ・アルバムを聴くのは初めて。ビートルズ初期を描いた1994年公開の映画『バック・ビート』でビートルズに目覚め、オリジナル・アルバムのCDを集め、ブートCDにも手を出していたが、このライヴ盤はこれまでCD化されていなかったこともあり手に入れてなかった。まぁ思えばビートルズのアナログ盤はガラクタ屋で安く手に入れたシングルが数枚あるだけで、アルバムは1枚も持ってないし、この『ハリウッド・ボウル』のアナログ盤も中古で安く見かけるが、オリジナル・リリースのジャケは今一つなデザインだし、ガイド本で読むと、歓声が大きく録音状態は万全ではない…とのことから、あまり聴いてみたいと思えなかったのだ(ブート聴いている奴が何言ってんだ)。

しかし1977年から40年を経た現在、音源の補正技術は格段の進歩を遂げている。今回のリリースでは、単一のトラックから音を取り除いたり分離したりする“デミックス”という技術が使われたという。もとの3トラックのテープからメンバーそれぞれの歌声や楽器を鮮明にし、演奏と絶え間なく続く歓声とのバランスを最大限に補正した。

ジャケットもなにやら爽やかに変更されている。ハリウッド・ボウルでコンサートが行われる2日前、 1964年8月22日シアトル・タコマ空港でカナダ・ヴァンクーヴァーへ向かうチャーター機に搭乗する4人をボブ・ボニスが撮影したものだ。この21世紀版『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』は期待を裏切らないのでは…と発売当日に購入。何しろ田舎でもビートルズの新譜くらいは売ってるからね…。

このCDの日本盤解説書にはオリジナルLPのジョージ・マーティンのライナーノーツ和訳も掲載されている。このコンサートにおける観客の歓声を “1万7千人の若くて健康な肺が送り出す途切れのない金切り声は、ジェット機の騒音ですらかき消してしまうほどの凄まじさ”と表現している。このライヴの主役はもちろんビートルズの演奏だが、それに負けないほどスピーカーから主張をしているのがこの“絶え間ないオーディンスの歓声”だ。何を演奏しても叫び声でかき消されるのではビートルズ側も辟易していたと言われているが、このライヴ・アルバムの1曲目「Twist And Shout」で“踊って叫んで盛り上がろうぜ”と煽り立てているんだから、オーディエンスにしてみればめいっぱい答えているともいえる。新たなパフォーマーとしてアイドル化していたこの時代のビートルズ、それにこのジョンのシャウトを聴けばいやでも盛り上がるがね。とにかくこれはただのライヴ・アルバムではない。ビートルズとオーディエンスのエネルギーのぶつかりあう現象を鮮明に記録した衝撃のライヴ・アルバムだ。

「Twist And Shout」はアイズレー・ブラザーズのヴァージョンをカヴァー(オリジナルはトップ・ノーツ)したもので、 いうまでもないがスタジオ盤ではファースト・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』のラストに収録されていた。このライヴ盤では1分半ほどのコンパクトな短縮ヴァージョンで演奏されており、勢いとノリの良さを強調したオープニング・ナンバーとなっている。

あらためてライヴ・バンドとしてのビートルズの良さを確認できるアルバムで、パワフルなリンゴのドラムは特筆ものだ。特に「Dizzy Miss Lizzy」を聴け! その他名曲・名演奏の数々。カヴァーも多いがオリジナルの「A Hard Day's Night」、「Help!」、「All My Loving」、「She Loves You」のヒット曲4連続も素晴らしい! 何度も言うけど聴きどころは“1万7千人の若くて健康な肺が送り出す金切り声”でもある、とするとオリジナル・アナログも聴きたくなってくるなぁ。

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