band HANADA「お天道さま」
band HANADAのアルバムがリリースされた。花田裕之は弾き語りスタイルやRock'n' Roll Gypsiesとは別に、2001年頃から井上富雄と椎野恭一とともに花田裕之バンドとして活動を始め、コンスタントにライヴをおこなっていた。2005年頃からはギタリストに大西ツルを迎えバンド表記は“band HANADA”に。band HANADAとしてはライヴ・アルバム『Live Rollin'』を2008年にリリースしているが、スタジオ録音の音源リリースは初めてとなる。
収録曲は7曲、全て花田作の新曲。
1. 遠くまで
2. ガラガラ ゴロゴロ
3. あの頃さ
4. 渡るしか
5. 二人なら
6. お天道さま
7. 根無し草
CDプレイヤーのプレイ・ボタンを押して流れる1曲目「遠くまで」のサウンド、一瞬で傑作とわかるものだ。あくまでも低い井上のベース、独特の湿度感のある椎野のドラム、揺らぎ、浮遊感のある大西と花田のギター・プレイ、枯れた味わいのある花田のヴォーカル、歌われる気怠く投やりな歌詞。
続く「ガラガラ ゴロゴロ」はギター抱えての旅の歌。ロックンロール・ビジネスで時々出会う場面なのかな、欲の皮とツラの皮の厚い人達が登場する。“シラフじゃやってられない”って歌う花田がいい。こういうタイプも時々作っているなぁ、昔を懐かしむ「あの頃さ」。 “この世の甘い汁の上澄み食って生きてるオレ達”ってフレーズにドキリとする「渡るしか」。こんなラヴ・ソングがアルバムに一緒に入ってるのが素敵だなと思う「二人なら」。これからも流れ続けると歌う「根無し草」。
と、全曲いいんだけど、1曲選んだのは「お天道さま」。
生身の肌の温もりと生きている実感を感じさせてくれる曲だ。無理のない歌詞とメロディ。花田裕之にしか生み出せない歌。
“流れてるのか流されているのか
オレにはもうわからない
でも本当はそんなことどうでもいいのさ
お天道さまを拝めれば今日も”
花田が “ハイウェイを降り” たのは、ソロになってリリースを続けていた東芝EMIを離れ、リスぺクタブル・ルースターズ・トリビュート盤の盛り上がりも一息ついた2000年頃と思う。ひとり弾き語りのライヴを始め、その身軽さから2004年頃からは本格的に日本各地隅々へと“流れ”、ライヴハウスに限らずバーや喫茶店で演奏するようになった。
そう、路傍の店から店へと流れ続けて十数年、花田裕之が見続けてきた風景がこのアルバムの中にある。