小森みちこ「鏡の中の水平線」

2017年4月26日、クリンク・レコード/徳間ジャパンよりリイシューのアルバム『REMEMBER』より。

パンタ(中村治雄)がプロデュースした小森みちこのアルバムが初CD化された。
小森みちこは、1978年~1981年にかけて活躍した3人組アイドル・グループのトライアングル(キャンディーズ・ジュニアから改名)の元メンバー。当時は本名の森光子という名前で愛称はミッチ。1981年1月にトライアングルは解散、森光子は小森みちこと名前を変えて、1982年10月公開のにっかつ映画『あんねの子守歌』、1983年3月公開の『あんねの日記』に主演している。1983年4月25日にシングル「リメンバー c/w 鏡の中の水平線」でソロ・レコード・デビュー。A面の「リメンバー」は映画『あんねの日記』の挿入歌でもあった。1983年5月25日には先のシングル両面曲を含むアルバム『REMEMBER』がジャパン・レコードよりリリースされた。

アルバムのプロデュースはパンタこと中村治雄。パンタはアルバム11曲中、語りの「ひとり遊び」と「めざめ」を除く9曲を作曲(「めざめ」は編曲でクレジットされている)、パンタ作詞はシングル曲だった「リメンバー」と「鏡の中の水平線」の2曲で、他の作詞は佐藤奈々子、篠塚満由美、高橋修、よこすか未美、青木茗。レコーディング・プレイヤーはパンタのスウィート路線のレコーディングやライヴで関係の深かったT-BIRD、アディショナル・プレイヤーとして元PANTA&HALの平井光一、浜田文夫、中谷宏道、この後パンタ・バンドに参加する鈴木匠、等が参加するなど、パンタ人脈が活用されている。編曲は平井光一の他、元・美乃家セントラル・ステイションのメンバーだった小田健二郎、式部聡志がクレジットされている。

当時も今も元アイドルでハダカ路線へ、というのはよくある事だが、映画公開当時は結構話題になったのではないかな。私のまわりではパンタ・プロデュースでその存在を認識されていた小森みちこだけど。たぶん貸しレコードで借りたのか、パンタ好きのHS君に借りたのか。確かテープに録音したはずだが、大量にあったカセット・テープは殆ど処分してしまったからね。時々中古レコードを見かけたが、購入するまではいかなかった。だけど三十数年振りの初CD化、久しぶりに聴いてみたいなと思って購入。

ボーナストラック2曲収録、最新リマスター、オリジナルLP付属の歌詞カード縮小封入、デビューシングル「リメンバー」のジャケット縮小封入、オリジナルカセットのインデックスカードを復刻封入、オリジナルカセットのジャケットをカード仕様で封入、というおまけ付きだが、 シングルのジャケットはよかったけど、正直カセット関連のおまけはいらなかったかも。それに歌詞カードは縮小なのでよく見えん。年寄りにはつらいぞ。他にちゃんとした印刷したものを入れて欲しかった。ボーナストラックは「リメンバー」と「鏡の中の水平線」のカラオケ2曲。うーむ。

今回アルバムの中から取り上げたのは「鏡の中の水平線」。
“割れてしまった鏡の中に わたしの海をしまっておいたの”
というなかなかシュールな歌い出しで始まるこの曲は、作詞作曲は中村治雄(パンタ)、編曲は平井光一でボサノヴァ・テイストを取り入れた、しっとりとしたシティポップなアレンジ。 ソロ・デビュー・シングルのB面曲でもある。のびやかなギターフレーズは平井ものだろうか。 やや不安定なヴォーカルで揺らぐ恋心を歌う小森みちこはコケティッシュな魅力のある歌声。
“そっと耳うちしてください カモメが起きてしまうから”
“そっとページをめくるように 夜明けは海を変えていく”
というパンタの歌詞も名フレーズだと思う。
ボーナストラックとして収録されている「鏡の中の水平線」のカラオケだが、ボーカル入りのこの曲が3分54秒に対してカラオケは4分42秒と約40秒ほど長い。ボーカル入りが3分40秒過ぎにフェイドアウトしていくのに、カラオケはフェイドアウトせず、この曲のマスターテープに収録されている最後まで(演奏をやめて途切れるまで)が収録されているようだ。

他、表題曲「リメンバー」も名曲。
“心も身体もすべて 重みを感じるままに 与え合う日のくること いつも夢に見てたのに”
という歌詞もなかなかセクシーな表現だと思う。パンタ作詞の2曲はこの頃のパンタらしく軽みがなく深みのあるものに感じる。
コンパクトな「Silent Zone」、パンタのバックコーラスが堪能できる「昼顔」、こういうのラグジュアリー歌謡っていうのかなアレンジが豪華な「Sexy Blue」、ドライヴ感のある「魅惑のセレモニー」、ギリシャ神話のダフネを現代の愛に擬えた「ダフネのように」、ラストは作詞に青木茗(金井夕子の作詞家名)による「ヒロイン」。

しかし、男性諸君にとってはアナログではB面の1曲目に置かれていた「薔薇のDiary」がなんといっても目玉だったのでは。小森みちこの熱い吐息をフューチャーしたパンタ版“ジュテーム・モワ・ノン・プリュ”か。

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