TH eROCKERS『ROCK'N' ROLL』
TH eROCKERSのニュー・アルバム!
再結成のライヴ・アルバム『リップ・サーヴィス』が1991年にリリースされているが、TH eROCKERSのスタジオ・アルバムとしては『ハンキー・パンキー』のリリースが1981年だったから、なんと38年振りだ。メンバーはVo陣内、B穴井のオリジナル・メンバーに加え、2014年の再結成から参加しているギターの澄田健、2018年から参加したドラムにブルー・トニック〜ザ・スリルの田中元尚、ギターにモーサム・トーンベンダーから百々和宏。
再結成のライヴ・アルバム『リップ・サーヴィス』が1991年にリリースされているが、TH eROCKERSのスタジオ・アルバムとしては『ハンキー・パンキー』のリリースが1981年だったから、なんと38年振りだ。メンバーはVo陣内、B穴井のオリジナル・メンバーに加え、2014年の再結成から参加しているギターの澄田健、2018年から参加したドラムにブルー・トニック〜ザ・スリルの田中元尚、ギターにモーサム・トーンベンダーから百々和宏。
オープニングの「糸島の太陽(カリフォルニア・サン)」はリヴィエラズ〜ディクテイターズ〜ラモーンズも演奏していた「California Sun」のカヴァー(オリジナルはジョー・ジョーンズ)。歌詞はダンドイ舞莉花と陣内による日本語詞で、カリフォルニアならぬ福岡・糸島の海岸を舞台にした博多弁で歌われる痛快でFUN FUN FUNなナンバー。
続いて「可愛いアノ娘」。これまでスタジオ・ヴァージョンがリリースされていないTH eROCKERS初期からの代表曲で、TH eROCKERSファンの誰もがスタジオ・ヴァージョンを待ち望んでいたが、やはり38年振りとなるスタジオ・アルバムに収録することでケリをつけたかったのだろう。うれしい1曲だ。
軽薄で浮気な性格だけれども憎めない色男を描かせたらピカイチな陣内作詞、TH eROCKERS作曲の「三流の恋仇」、ザ・フー〜ザ・ジャムもカヴァーしていた「HEAT WAVE」、オリジナルはマーサ&ヴァンデラス。歌詞はダンドイ舞莉花と陣内による日本語詞で、熱病にかかったような恋の病を歌う。
恋の終わりでも強がりを、そしてクリスマス・ソングともいえそうなラモーンズ・ライクなポップ・ナンバー「恋のファンファーレ」、プレスリーのカヴァー「サスピシャス・マインド」。これも歌詞はダンドイ舞莉花と陣内による日本語詞。恋に落ちたが故に疑心暗鬼になる心情、それが恋の罠なんだと歌うアコースティック・フレーヴァーな曲。「恋に溶けてゆく」は高橋研作詞・陣内作曲のロカビリー・タッチ。エッジの効いたギターがカッコいい。
福岡民謡の「黒田節」は意外な選曲だが、田中のダイナミックなドラミングを生かしたアレンジで、ディック・デイル「Miserlou」なフレーズをサンドしたソリッドな味わい。かつて原色や派手な色を使うことの多かったTH eROCKERSのアルバムカヴァーだが、今回渋くブラック/モノトーンなのはこの曲を由来としているか…黒だけに…んなわけないか。アルバムタイトルのみレッドが使われている。ちなみにジャケット写真はINUの『メシ食うな!』や鮎川誠の『クール・ソロ』、陣内のソロ『旋風児』のジャケット写真を撮っていた半沢克夫によるもの。素晴らしいポートレイト。ただ、このブラックなジャケット、かっこいいんだけど指の指紋というか脂分がつくんだよね…。
ちょっぴりジョニー・リヴァースの「Secret Agent Man」を思わせるメロディで、TH eROCKERSらしい軽快な「ライセンス・ナンバー」。これもちょっぴりパイレーツの「Please Don't Touch」のイントロを頂いたような「D・D Rock'n Roll」、(ブロークンダウン・エンジンの)津和野勝好による作詞・作曲(作詞は陣内との共作)のご機嫌なロックンロールナンバー「Hail Hail Rock'n Roll」。まったく、“かまっちゃいられねぇ”のさ。
ラストは不器用な男の心情を描いた切ないバラード「週末はこのザマさ」。まずタイトルがイカしてるね。若く苦い恋を振り返る内容は、たしか陣内著の自伝小説にもチラリとこんなシーンが…まぁいいか…。
“空っぽのアパートに 残されたメッセージ
遠い未来の週末に 出会いましょう
始まりはいつも 終わりの始まり
終わりはいつも 終わりのままさ”
陣内(60歳)の声はかつてのTH eROCKERSの時と変わらず、軽みと深みを感じさせるハリのあるヴォーカルを聴かせてくれるのが驚きだ。そして田中と穴井のリズム隊は安定とアグレッシヴ、澄田と百々のシャープで時にトリッキーなロックンロールギター。最高のアルバムに仕上がった。
このアルバムリリースのタイミングでTH eROCKERSとしてテレビの歌番組には出ないのかな?NHKの「ファミリーヒストリー」で取り上げられるくらいの知名度なんだから。出て欲しいなぁ。シングル・カットはしないのか。アナログ7インチで「糸島の太陽(カリフォルニア・サン) c/w 三流の恋仇」なんてどうかな?半沢克夫のカラー・ヴァージョンのジャケット写真で。