ZELDA『はじまりのゼルダ 最初期音源集1980-1982』
ゼルダの初期音源というと2枚の自主制作シングル盤。1980年ジャンクコネクションからEP「Ash-Lah c/w ソナタ815 / BE-POP」、1981年アスピリン・レコードからソノシート「MACKINTOSH-POPOUT c/w マッチングシュール / 灰色少年」がリリースされていたが、この2枚のシングルからこれまで音源が復刻、CD化されたのは、1982年12月15日にジャパンレコードからアナログ盤でリリースされたコンピ『レベル・ストリート』に「ソナタ815 」が収録され、後年数度CD化。2003年3月19日にソニーからリリースされた『GOLDEN☆BEST ZELDA time spiral』に「Ash-Lah」と「ソナタ815 」が収録、
2003年10月1日にテイチクからリリースされた『DOLL Presents GET THE PUNK J PUNK&NEW WAVE 1972-1991』に「マッチングシュール」が収録されていた。
今回いぬん堂からリリースされた『はじまりのゼルダ 最初期音源集1980-1982』は、ゼルダ“最初期”の記録を集めたというCD2枚組アルバム。
Bチホ、Dマル、Gヨーコ、Voサヨコというメンツでリリースした自主制作盤の初期2枚のシングル収録曲全曲を初めて収録、ヴォーカルにサヨコが参加して約5ヶ月後の1980年8月〜メジャーデビューアルバムをリリースして約1ヶ月後のドラム・マルが脱退する1982年9月までの未発表ライヴを収めた全38曲入り。ライヴテイクは年代順に収録されており、1980年のライヴをDisc1に、1981年と1982年のライヴをDisc2に収録している。
Disc1-track1〜2にジャンクコネクションからリリースEP収録曲「Ash-Lah」と「ソナタ815」を収録、
Disc1-track3以降はシングル盤収録曲を含め全てライヴ・テイクになる。収録されたライヴがおこなわれた年月日と会場を記しておくと、
1980年8月24日渋谷ワルツ(Disc1-track3)=ジャンクコネクションからリリースEP収録曲「BE-POP」
1980年8月31日早稲田すぺーすJORA(Disc1-track4〜13)
1980年9月25日渋谷屋根裏(Disc1-track14〜15)
1980年11月28日法政大学学生会館大ホール(Disc1-track16〜18)=アスピリン・レコードからリリースソノシート収録曲「MACKINTOSH-POPOUT」「マッチングシュール」「 灰色少年」
1981年1月11日渋谷屋根裏(Disc2-track1〜5)
1981年6月17日新宿ロフト“TOKYO-BERLIN 1920”(Disc2-track6〜10)
1981年10月23日渋谷屋根裏“冷たいカルシューム”(Disc2-track11〜12)
1981年12月1日目黒鹿鳴館(Disc2-track13)
1981年12月26日有楽町Lo-Dプラザ(Disc2-track14)
1982年5月22日新宿ロフト“野生のZELDA”(Disc2-track15〜17)
1982年6月19日横浜シェルガーデン(Disc2-track18)
1982年9月28日池袋スタジオ200(Disc2-track19〜20)
このメンバーで録音され、1982年8月にリリースされるファーストアルバム収録曲では「まっくら」、「BE-POP」、「開発地区はいつでも夕暮れ」、「密林」、 「Ash-Lah」、「とらわれ」、「ソナタ815」と7曲のライヴ・ヴァージョンが聴ける。もちろん全てファーストアルバムがリリースされる前のライヴだ。
ファーストアルバムでは「ロボトメイア」としてレコーディングされた「BE-POP」は、”リモートコントロールロボット”という歌詞からロボット化してゆく社会状況を告発した曲と思っていたが、今にして思うとロボトミー+アカデメイア(アカデミー)って意味もあるのかな「とらわれ」は、アルバムにレコーディングされたヴァージョンとはほとんど歌詞や構成が異なる。
今回初めて音盤となる曲でいくつか紹介すると、かつてバンド名だったこともあると言う「E=MC2」は2ヴァージョンが収められていて、特に1981年のヴァージョンは各プレイヤーの自由度が増した演奏になっていてバンドとしてのダイナミズムを感じさせる。ポップでパンクな「Why Don't You」や「Paradox」。怒涛のカッ飛びパンクナンバー「Mercy」、気合い入ります。
ヴェルヴェッツの「White Light / White Heat」は日本語カヴァーで歌詞はまったく別物、カプセルベイビーと副題がついている。「アメリカナイズ」は、ZELDAがライヴで演奏した曲を紹介しているHP ZELDA LIVEレパートリー年代記によると紅蜥蜴「白いドライブ」のカヴァーということだが、これも歌詞は別物で(今回のCDでは作詞・作曲ゼルダとなっている)、攻撃的なサヨコのヴォーカル、そしてヨーコのフリーキーなギターがカッコいい!
「ワルツ」や「シャンソニエ」では、ゼルダで歌い始めてほぼ1年という期間で、しかも16歳ながら円熟したとも言えるサヨコのヴォーカルパフォーマンスが聴け、フェイク・アラビックな「クラリネット」とともにサヨコの独壇場とも言える。
その他「とまればまたくる」、「Pleasure Ground」、「スイッチひとつで」、「野生のポケット」など溢れんばかりのエモーションを感じさせる曲多数。 FMのライヴで聴いたことがある「黒い華」はアンダーグラウンドな香りがする名曲。
1982年9月にDマルが、1983年2月にGヨーコがバンドから脱退してしまうが、1983年11月にリリースのセカンドアルバム『カルナヴァル』に収録される「うめたて」や「Z-JA-Z」、「スローターハウス」、チホとサヨコのユニット、招き猫カゲキ団が1984年12月にリリースしたミニアルバム『第一歌曲集』で「砂漠のマリアンヌ」として収録される「マリアンヌ」、1985年10月にリリースの3枚目のアルバム『空色帽子の日』に収録される「ハベラス」、これらの楽曲は、歌詞はこれから推敲を重ねてレコーディングされる曲もあるが、アレンジはほぼ出来上がっている。
さらに1981年6月17日のライヴが収録されている「問1」は、約7年後の1987年3月にリリースされる4枚目のアルバム『C‐ROCK WORK』に「Question 1」としてレコーディングされ収録されている。このように後々スタジオ・アルバムに収録される曲の初期ライヴ・ヴァージョンが聴けるのも楽しい。
サヨコの奔放かつ繊細で豊かな表現力を持つヴォーカルと歌詞世界、
それに寄り添うチホのバキバキに硬質なベース、
前のめりにパンクなだけじゃなく緩急をつけたリズムで曲に表情をつけるマルのドラムス、
そして鋭く鮮やかに色を吹き付け描くヨーコのギタープレイ。
『はじまりのゼルダ 最初期音源集1980-1982』は、残酷なまでに純粋な初期衝動という名の推進力に満ち溢れた初期ゼルダの姿を捉えている。
前のめりにパンクなだけじゃなく緩急をつけたリズムで曲に表情をつけるマルのドラムス、
そして鋭く鮮やかに色を吹き付け描くヨーコのギタープレイ。
『はじまりのゼルダ 最初期音源集1980-1982』は、残酷なまでに純粋な初期衝動という名の推進力に満ち溢れた初期ゼルダの姿を捉えている。
藤沢映子著『ZELDA物語』(JICC出版1988年刊)の年表によると、今回のCDに収録される前にもライヴはおこなわれているから、もし音源が残っていれば聴いていみたいなぁ。さらに最初期の音源はあるのか…。
日本ロック大系[下](白夜書房1990年刊)に掲載されている1986年10月におこなわれた小嶋さちほのインタビューでは、
“ゼルダが最初東芝EMIとかでデモテープとったり、コロムビアでデモテープとったりしたけど”と語っているから初期のデモ音源も残っているんじゃないか。
“ゼルダが最初東芝EMIとかでデモテープとったり、コロムビアでデモテープとったりしたけど”と語っているから初期のデモ音源も残っているんじゃないか。