追悼・大林宣彦 GODIEGO「CHERRIES WERE MADE FOR EATING」
その日は新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の公開予定日でもあったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開延期となった。
大林監督の映画を観るようになったのは、思えば原田知世だったんだろうな。
真田広之主演映画の相手役オーディション「角川映画大型新人募集」に応募、特別賞という形で女優へのスタートラインに立った原田知世。映画出演の前哨戦として1982年にフジテレビで放送されたドラマ『セーラー服と機関銃』や『ねらわれた学園』に主演。このテレビドラマで原田知世の存在を知ったんだと思う。
いよいよスクリーンデビューということで筒井康隆原作、大林宣彦監督の『時をかける少女』が1983年に公開、前売り券を買って観に行った。たぶん都内の映画館まで出かけて行ったと思う。原田知世目当てだったが、大林監督のリリカルな映像美と特撮、繊細なストーリーと俳優陣の演技には、当時洋画偏重だった私を邦画好きにするきっかけにもなった。前売りロードショーで観た後、地元の映画館で持ってた招待券などを使って5回くらい観ている。公開時これだけの回数を観た映画は他にはないなー。
『時をかける少女』の映像に魅了された私は、続いて1984年に公開された16mm作品『廃市』も観に行き(確か文芸坐ル・ピリエで観た)、狂おしい程の愛情を描いていても静謐な世界に魅了され、それまでの大林監督の映画を遡って観るようになった。名画座でも観たが、テレビ放送で観た作品もあると思う。『転校生』、『ねらわれた学園』、『金田一耕助の冒険』、『ふりむけば愛』、『瞳の中の訪問者』そして1977年に公開された大林監督の商業映画デビュー作『HOUSE』。
『HOUSE』の音楽は小林亜星(本人もスイカ売りとして出演)とミッキー吉野で、映画公開の1ヶ月前、1977年6月にサウンドトラック・アルバムがリリースされている。演奏は、初期のドラマー浅野良治を含むゴダイゴのメンバーの他、村上ポンタ秀一等のミュージシャンが参加しており、成田賢が「ハウスのふたり」でヴォーカル、「ハングリー・ハウス・ブルース」でハープを吹いている。音楽は映画制作に先駆けて作られており、撮影現場ではこれらの音楽を流して撮影されていたという。右上の写真は劇場公開時のパンフレット。
劇場公開パンフレット内に掲載されたゴダイゴのサントラ盤の広告
「Cherries Were Made For Eating」は映画『HOUSE』のサウンドトラック・アルバムからのシングルカットで、ゴダイゴ の5枚目のシングルとして1977年9月1日に日本コロムビアからリリースされたシングル。邦題は「君は恋のチェリー」。ピアノの響き、アコースティックギターのストローク、ドラムのフィルで始まるメロディアスでパワーポップなナンバーだ。
“ チェリーは食べるために作られたんだ ” となにやら映画の中で家に喰べられてしまう少女たちをチェリーに喩えたような英語のタイトル。
映画『HOUSE』では、オシャレ(池上季実子)やファンタ(大場久美子)、クンフー(神保美喜)らハウスガールズ7人がオシャレの伯母さま(南田洋子)の家を訪ねて、東京駅から出発〜列車に乗るシーンで使われていた。このシーンではゴダイゴのメンバーの他、大林宣彦本人も出演している。
映画『HOUSE』では、オシャレ(池上季実子)やファンタ(大場久美子)、クンフー(神保美喜)らハウスガールズ7人がオシャレの伯母さま(南田洋子)の家を訪ねて、東京駅から出発〜列車に乗るシーンで使われていた。このシーンではゴダイゴのメンバーの他、大林宣彦本人も出演している。
カップリングの「Yes, I Thank You」は2分に満たない短いビートリッシュなナンバー。
作詞とヴォーカルは、ゴダイゴに参加したばかりのトミー・スナイダー。
映画の終わり、池上季実子のイメージ・フィルムのようなシーン〜エンドロールの部分に使われている。『HOUSE』のサウンドトラック・アルバムには未収録。
作詞とヴォーカルは、ゴダイゴに参加したばかりのトミー・スナイダー。
映画の終わり、池上季実子のイメージ・フィルムのようなシーン〜エンドロールの部分に使われている。『HOUSE』のサウンドトラック・アルバムには未収録。
「Cherries Were Made For Eating」は、ミクスチャー・ハードコア・バンドのブラフマンが1998年にリリースしたファースト・アルバム『A MAN OF THE WORLD』でカヴァー、エッジの効いたエモーショナルな演奏を聴かせている。
『HOUSE』は今観てもファッショナブルでファンタスティックでメロディアスでポップでスラップスティックな映画。ラスト数十分の鮮血ショウは、才気迸る大林宣彦のパワーを感じさせるものだ。その目眩く幻惑的でサイケデリックとさえいえる音と色彩の洪水の魅力は、大林監督と泉谷しげるの対談(雑誌「宝島」1977年9月号→2017年文藝別冊「総特集・大林宣彦」に再録)で確認できる。
映画『HOUSE』のトレーラー。北米リリース盤に収録のもの。