NHK大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」が終了。
大河ドラマを最初から最後まで見たのは、『龍馬伝』、『いだてん』に続いて3作目か。
織田信長といえば私的には半村良著の小説『戦国自衛隊』、そして原作をほぼ忠実にコミック化した田辺節雄の劇画。俗っぽくなってしまった映画版はともかく、劇画版は何度も読んだなー。自動小銃、迫撃砲、ヘリコプター、哨戒艇、装甲車等の兵器で武装した自衛隊が、その圧倒的な武力と作戦能力で戦国の世を平定し、自衛隊員がかつて生活していた民主主義の世界を遠くに見据え、天皇親政の政治体制を敷こうとした(それゆえ彼らの身を危うくする)物語は魅力的だった。その表現は日本国憲法下の現代(作品の発表時は1970年代)におかれた武装組織としての矛盾をも示唆していた。現代の武力により過去の歴史を修正するという伝奇ロマン。ラストは衝撃的だった。
それで『麒麟がくる』は信長の時代を詳しく描くのであれば面白そうだなーと思い、その織田信長役を、石井岳龍監督の作品『ソレダケ』で瞬発力のある主人公を演じ、『パンク侍、斬られて候』では腹ふり党に帰依してゆく役を怪演していた染谷将太とあれば、ラディカルでビザールな信長像を期待した。このキャスティングだけで見始めたといってもいいかも。その染谷信長に、長谷川博己演じる明智光秀がどう絡んでいくか興味があったし、戦国に平和(麒麟がくる世)を求めるストーリー、ということで、戦国の世に平和を希求するということがどう描かれるのか興味があった。
カラフルな衣装が特徴的だったし、もっくん(本木雅弘)の過剰かつ鋭利な演技も見ていて面白かった。駒ちゃんは可愛らしいし、伊呂波太夫もはまり役だった。それに帰蝶役の川口春奈は美しかったし演技も素晴らしい。コロナ中断前はかなり帰蝶様ポイント高かったけど、再開後はあんまり出演がなかったのが残念。最終回のひとつ前、光秀と帰蝶のふたり、幼馴染が思い出話をするように信長の暗殺を語り合うシーンが妙に心に残ったな。
帰蝶には道三と光秀が今の信長を作ったと言われ、信長自身にはお前が私を変えたのだと言われた光秀。民を大事にする大きな国を作るはずだったのが、信長と光秀の溝は深まり、ふたりの歩む道は離れてゆくばかりだった。光秀の慕う足利義昭を殺してこいと言われ、もはや自分で蒔いた種は刈り取らなければならないと決意した。
最終回、本能寺で立ち向かう信長側には僅かな兵力しかなく、信長も矢を受けてしまう。
急襲したのが光秀だと知って、体に刺さった矢を折り、やってやろーじゃねぇの、と(言ってはいないが)狂い咲き仁さん的に感情を爆発、槍を持って応戦するものの、銃弾を受け、刀で斬られ、奥の部屋に引き自害する。その姿はあまりにも孤独だった。そして小さく見えた。
ドラマ全編を通してやはり染谷信長は期待通り最高の演技だった。ラスト、駒が追いかける光秀に似た人物。馬に跨り再び麒麟がくる世界を目指しているようでもある。
駒が生きて麒麟のくる世界を見ることはなかったが、その世界がくることを願うのは彼女ひとりじゃなかった。だから願えば、願い続ければ、やがて来る。
いくつもの果てしなく続く戦乱の果てに。IF YOU WANT IT.