若松宗雄著『松田聖子の誕生』

2022年7月19日、新潮社より刊行(新潮新書)

1978年に開催された「ミスセブンティーン・コンテスト」のオーディション・テープの山、200近い曲数の中から蒲池法子の歌声を見つけ出した、CBS/ソニー・プロデューサー若松宗雄による松田聖子誕生の物語。

オーディションの地区予選九州大会で優勝しながらも、娘が歌手になることに頑強に反対する父親により、東京での決勝大会を辞退していた蒲池法子。若松プロデューサーの粘り強い説得で芸能界入りを許された後も難航する所属プロダクション探し。芸名が松田聖子に決まり(別名の候補があったという)、デビュー時期の調整、デビュー曲の作曲を人気作家筒美京平に打診するも断られ…と、歌声に惚れ込んでからデビューするまでの苦闘の2年間が本書の約半分を占めている。その後はデビュー後初期のエピソードを中心に50ページ程、「アルバムとシングルについて」と題して松田聖子と若松プロデューサーが共に活動し制作したアルバム、1980年リリース『SQUALL』から1988年リリース『Citron』までのアルバム解説に55ページ程記載されている。これ非常に興味位深いエピソード満載。

対象が松田聖子、書き手が伝説のプロデューサー若松宗雄だけに、新書じゃなくもっとエピソードや写真、図版を追加して単行本として出版すればとも思うが、新書だからこそ多くの人に読んでもらえる手軽さがあるのかも。本書の帯には蒲池法子の歌う「気まぐれヴィーナス」(オリジナルは桜田淳子)が入っているオーディション用カセット・テープと思われる写真が…赤ペンで福岡、蒲池と書いてある。

蒲池法子というマテリアルを入手し、プロデューサーのアイディアと指揮のもと、作詞家、作曲家、ミュージシャン、アレンジャー、デザイナー、フォトグラファー、スタイリスト…さまざまな分野のクリエイターが結集して松田聖子というプロダクツを生み出す。
THE BIRTH OF SEIKO MATSUDA
こんな英語タイトルはどこにも書いてないけど、そう呼びたくなる。
1983年からは松田聖子による作詞や作曲の楽曲がアルバムに収録されるようになり、やがて松田聖子は与えられた楽曲を歌う歌い手としてだけではなく、自己を表現するために作詞作曲、プロデュース、マネジメントを含めた彼女自身によるプロダクツを生み出す環境を整えていく。






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