OPENING SE of THE ROOSTERZ『PERSON TO PERSON』1984.8.27〜1984.9.2
コンサートで会場のライヴ・ハウスやコンサート・ホールに入場後、ほとんどの場合、開演まで会場内には控えめな音量で音楽がかかっていると思う。開演時間になり、大音量で音楽が流れ始めメンバーが登場、それぞれの楽器を手に取りライヴが始まる。そのメンバーが出るタイミングに大音量で流される曲がオープニングSE…まぁ出囃子ともいうのかな…。
ザ・ルースターズの場合、自身が発表した楽曲でオープニングに相応しい曲がある。「ラジオ上海〜Wipe Out」、「Je Suis Le Vent」、「φ」、「Music From Original Motion Picture "Punishment"」、「Harlem Nocturne」、それに1984の「Soldier」といった楽曲がオープニングに使用されていた。だけど、自分たちの曲じゃない、他のアーティストの楽曲をオープニングSEに使用する時もある。今回は1984年の夏、ザ・ルースターズが新宿ロフトでおこなった7日間連続ライヴ『PERSON TO PERSON』、そのときにオープニングSEに使用された楽曲を紹介する。
8月27日(月):NICO「Genghis Khan」(from アルバム『DRAMA OF EXILE』)
ザ・ルースターズ・ウィークの初日は、ニコの前作から7年振り、5枚目のソロ・アルバム『ドラマ・オブ・エグザイル』(1981年)に収録されている「Genghis Khan」でメンバー登場。ミドル・イーストでエキゾチックなイメージのアレンジ、フローティングなムハマンド・ハディのギター・フレーズとニコのヴォーカル。タイトなバンド・サウンドに、ブロックヘッズのデイヴィー・ペインのサックスもフリーキーに乱入。キーボードはアンディ・クラーク、プロデュースはベースも弾いているフィリップ・クイリチーニ。
これ誰の曲?と聞いた私に一緒にいた友人はニコじゃないの、との返事。それからしばらく探したな。どのアルバムに収録されているか分からなくて、このアルバムかなーと中古で売ってた『ドラマ・オブ・エグザイル』(アナログ・輸入盤)を買ってみたら1曲目に収録されていてうれしかったなー。
薄暗い階段を昇るニコのジャケットも含め、内容的に好きなアルバムだが、ニコとプロデューサーのフィリップに許可なくオーラ・レコードがリリースしたアルバムと言われている(納得できないニコは1983年に再録音盤『ザ・ドラマ・オブ・エグザイル』をインヴィジブル・レコードからリリースした)。
8月28日(火):TELEVISION「Carried Away」(from アルバム『ADVENTURE』)
大江慎也のソロ・アルバム『ルーキー・トゥナイト』(1987年)収録曲「So Alone」(サンハウス「ふっと一息」の英詞カヴァー)のアレンジはこの曲を参考にしていると思う。
3日目と4日目は、アレックス・コックス監督映画『レポマン』(1984年)のサウンドトラック盤に収録されていたザ・プラグズのインスト・ナンバー「Reel Ten」で登場。ミステリアスでスペイシーなこの曲のサウンドは当時のザ・ルースターズに通じるものがあると思う。
8月29日(水):THE PLUGZ「Reel Ten」(from OSTアルバム『REPO MAN』)
8月30日(木):THE PLUGZ「Reel Ten」(from OSTアルバム『REPO MAN』)
サントラにはイギー・ポップの他、ブラック・フラッグ、サークルジャークス、スイサイダル・テンデンシーズ、フィアーといったLAハードコア・バンドの楽曲(ザ・プラグズもLAのパンクバンド)、バーニング・センセイションのモダン・ラヴァースのカヴァー「Pablo Picasso」などを収録、ザ・プラグズは「Reel Ten」の他「El Clavo Y La Cruz」、「Hombre Secreto (Sevret Agent Man)」の計3曲が収録されている。
8月31日(金):PETER GREEN「Tribal Dance」(from アルバム『IN THE SIKES』)
9月1日(土):PETER GREEN「Tribal Dance」(from アルバム『IN THE SKIES』)
5日目と6日目は、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ〜フリートウッド・マックのギタリストだったピーター・グリーンのソロ2作目のアルバム『In The Skies』(1979年)からの「Tribal Dance」で登場。その名の通り部族的な舞踏を感じさせるパーカッシブなインストゥルメンタル・ナンバー。ピーター・グリーンの他は、ギターにシン・リジィのスノーウィー・ホワイト、キーボードにキャメルのピーター・バーデンズ、パーカッションにはレノックス・ラントン、ベースにクマ原田、ドラムはレグ・イジドールが参加している。ミステリアスな響きを持ちながらも躍動的な表現をしているモダンな曲だ。私の持っているCD(2005年サンクチュアリ盤)では作者はGreen-White-Isadore-Langtonとなっている。ジャケットのムードがルースターズやバニーメンと通じるか。
「Tribal Dance」とそっくりな曲が大江慎也+ONESのアルバム『ウィル・パワー』(1990年)に収録されていた。曲名は「Pale Moon」で、女性の語りパートを追加した演奏になっていた(「Pale Moon」の作曲クレジットはMIKA,MARR/Traditional) 。
9月2日(日)VIRNA LINDT「Shiver」(from アルバム『SHIVER』)
ザ・ルースターズ・ウィークの最終日は、コンパクト・オーガニゼーションの歌姫(ストックホルム生まれの諜報部員という設定もある)ヴァーナ・リントのデビュー・アルバム『シヴァー』(1984年)からタイトル・トラック「Shiver」で登場した。ニューウェイヴィーなアレンジの演奏に、スウェーデン語で歌うというより語られるヴァーナ・リントのヴォイス。これまでの楽曲と比べるとファショナブルでややライトなイメージだが、スパイ映画風のビザールな緊張感が漂う楽曲ではある。
これらの曲を選曲したのが誰か分からないけど(ルースターズのスタッフ?)、なかなか楽しめる選曲だし、どの曲もかっこいい曲でセンスよし。