My Wandering MUSIC History Vol.99 THE ROOSTERZ『STRANGERS IN TOWN (SUPER MIX)』
1986年4月21日、日本コロムビアよりリリースの12インチ・シングル。
アナログ盤A面にはアルバム『ネオン・ボーイ』から7ヶ月後にリリースされた「Stranger In Town」のリミックス・ヴァージョンの「Stranger In Town (Super Mix)」を収録。
イントロには下山淳のもくもくと湧き上がり渦巻く雲のようなディレイをかけたギター・フレーズが続き、それは曲全体を覆うバッキング・フレーズとなる。ピッキング&ミュートした音にディレイをかけ、音色が混じり合い、空間的な広がり感じさせ、ストレンジかつ緊張感のある効果を生み出す。テンポに合わせたディレイ・タイムの設定と正確なピッキングが必要なテクニックだ。
ディレイを使ったギターというとザ・ドゥルッティ・コラムのファースト・アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・ドゥルッティ・コラム』でヴィニ・ライリーが弾くポスト・パンク印象派というか水彩画のように色彩が広がる感覚のギター・サウンドは聴いていたが、この下山のディレイ・サウンドは珍しかった。よくU2のギタリスト、ジ・エッジと下山のディレイ・テクニックが比較されるが、この頃U2はほとんど聴いてなかったからな。ライヴのミニ・アルバム『アンダー・ア・ブラッド・レッド・スカイ』と『WAR』くらいかな聴いてたのは。バニーメン派だったから。まぁディレイの使い方について下山は、エッジではなくピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアに影響を受けたと語っているけど(雑誌『ROCKS OFF Vol.05』2008年)。
「Stranger In Town (Super Mix)」の曲の長さは、4分51秒から5分47秒と約1分長くなっている。イントロの下山のディレイ・ギターにのせて不穏に響くキーボードのフレーズ、イントロは30秒から50秒に、ギターソロはアルバムとは別テイクに差し替えられて30秒から60秒に長くなった。キーボードが目立ち、ややギターポップな印象もあったアルバム・ヴァージョンとは完全に別物、ぐつぐつと泡立つようなギター、ゆらゆらと揺らぐフレーズ、爆音のストローク、エレクトリックでヘヴィ、ハイテンションでアグレッシヴ、まさにスーパーなヴァージョンに生まれ変わった。
プロモーション・ヴィデオもつくられ、旧新宿ロフトで撮られたと思われる白黒の映像で、花田裕之は黒のつば広帽子、サングラス、黒のタートルネックにシルバーの首飾り、黒のストラトキャスターという装いがかっこいい。下山はギブソン・ファイヤーバード使用。ギターソロの手前から映像はカラーに変わり、アトミックカフェと思われるライヴ・シーンになる。この映像で下山淳はフェンダー・ムスタングを使用。最後は前半と同じ白黒映像に戻って終了。シンプルだけど好きなPVだ。
さてB面だが…「SOS〜Drive All Night〜ネオン・ボーイ〜 あの娘はミステリー〜She Broke My Heart's Edge〜撃沈魚雷〜ニュールンベルグでささやいて〜」という8曲をつなげたメガミックス。メガミキサーはレコーディング・エンジニアの森山恭行とキティ・レコードと契約したころのデイト・オブ・バース。1980年代中盤はメガミックスというリミックス手法が流行つつあった時期でその手法に注目し取り上げたのはなかなかユニークだった。しかし“SOS〜あの娘はミステリー”までの4曲はともかく、大江ヴォーカルの4曲はいかがなものか。バンドを離脱してからも根強く支持されていた大江慎也をここで思い出させるような楽曲のリリースは、花田がヴォーカルをとり再出発した新生ルースターズにとって望むものではなかっただろう。雑誌『ロック画報17・特集めいんたいビート』(2004年)のなかで下山は“こちらの本意じゃないものが出るのは、あんまりだと思った”と語り、「Stranger In Town (Super Mix)」のリリースで契約が切れたことにより、デビューから長年ブロデューサー/ブレインとして活動を共にしてきた柏木省三との関係を断つことになる。
ジャケットは、ルースターズとして初めてのCDリリースとなった『ベスト・コレクション』(品番33C31-7853)に使われた写真と同じダリアの花が鏑木朋音のデザインにより使用されている。こちらにはフォトグラファーがウエダアツシとクレジットされている。
長らく未CD化だったが、2004年リリースのオフィシャル・パーフェクト・ボックス『Virus Security』で初CD化された。