メモリーズ・オブ・雑誌『Player』番外編『TANGLED UP IN BLUE』
雑誌『Player』を発行していたプレイヤー・コーポレションが1985年に発行した雑誌『タングルド・アップ・イン・ブルー』。Player On-Lineの雑誌月刊Playerの歴史によると、“85年1月から隔月で発行された音楽雑誌。尾崎豊や佐野元春など日本の80年代のアーティストの動向を伝えた”とある。
『タングルド・アップ・イン・ブルー』の創刊号。定価480円。
第2号。やはり尾崎豊、ザ・モッズ、山下久美子らが取り上げられているが、アルバム『φPHY』リリース後のルースターズ・花田裕之のインタビューが掲載されている(写真は花田&下山淳)。他にRCサクセションのライヴ・フォト。「銀の書簡」はゼルダの高橋佐代子(アンナ・プリュクナル宛)、柴山俊之、南佳孝(ジョン・レノン宛)、それに坂上忍(デビッド・ボウイ宛…“いつかあんたを超えてみせる”ってよ…)。短編小説はフラナリー・オコナー。
第3号。表紙はチェッカーズの藤井尚之。“VISITORS TOUR”中の佐野元春のインタビュー、毎号載ってる尾崎豊、ライヴ・フォトには「Last Soul」の歌詞とルースターズのステージ写真が掲載(モノクロ)。朧げに写るルースターズ、ステージ上の大江慎也、ステージ下のうなだれる少年とステージ上を見つめる少女…美しい写真だ。「銀の書簡」は大江慎也(ホワイト Sweaterと題されている)、元THE BOTSのジミー(エディ・コクラン宛…なかなか熱い)、EPO(カレン・カーペンター宛)。短編小説はアン・ビーティ。「LONDON SPIRIT」にはEBTG、AZTEC CAMERA、THE PALE FOUNTAINSの写真。
第4号。表紙は大沢誉志幸。前号に続き佐野元春のインタビュー。3枚目のアルバムリリース直前のBOØWY、この雑誌が推してたのかエコーズ(辻仁成)。「銀の書簡」は小山卓治(PASSING TO YOUと題されている)、シーナ(ボブ・グルーエン宛)。短編小説はトマス・ウルフ。
第5号。表紙は尾崎豊。カセット・ブック『ELECTRIC GARDEN』について佐野元春のインタビュー掲載。ストリート・スライダーズ蘭丸のインタビュー、他に矢野顕子、デビュー間もないピチカートV等。「銀の書簡」は山下久美子、サンプラザ中野(田中角栄宛)。短編小説はE.L.ドクトロウ。
第6号。表紙はチェッカーズの藤井郁弥でインタビューも掲載。他にもサンプラザ中野、大沢誉志幸、岡野ハジメ(PINK)、NOKKOのインタビュー。矢野顕子をモデルにした佐藤奈々子によるデザイン、コラージュ、フォトのページが美しい。他に仲井戸麗市、吉田美奈子、かしぶち哲郎等を取り上げている。「銀の書簡」は佐藤奈々子(マルグリット・デュラス宛)、NOKKO、布袋寅泰。短編小説はカーソン・マッカラーズ。
奥付けの発売日は昭和60年1月1日となっている。今はなき駅前の本屋で買ったような。この頃はロック系邦楽の雑誌は少なかったと思う。「アリーナ37°C」は時々買ってたな。『タングルド・アップ・イン・ブルー』はデザイン性に優れ、外国作家の短編小説(この号はデルモア・シュワルツ)やセルジュ・クレール&フランソワ・ゴランのロックンロール・コミック(フランス語の日本語訳)などインテリジェンスな内容もありつつ、佐野元春、尾崎豊、大沢誉志幸、ストリート・スライダーズなど当時活躍していたアーティストを取り上げる同時代性があった。また同時代の洋楽アーティストを数ページ掲載するトシ矢嶋の「LONDON SPIRIT」コーナーもあった。
表紙は佐野元春。「Stone & Flowers」と題された佐野元春と佐藤奈々子のコラボレート・ページが刺激的。他に鮎川誠、小山卓治、ザ・モッズ。この雑誌、「銀の書簡」というアーティストから“誰か”に宛てた手紙形式のページがあって、それが好きだったな。この号では友部正人がルイス・ブニュエルへ宛ての手紙を書いている。
たぶんこのあたりのファン層がメインのターゲットだったのだろう、デビュー後7ヶ月後の尾崎豊(デビュー曲の背景や白井貴子の前座だった1984年7月1日のライヴの様子が語られている)や、大沢誉志幸、デビュー間もないレベッカのNOKKOが取り上げられていた。
1985年1月から隔月で11月まで発売されてきたが、ここで最終号となった(第一期最終号とされていた)。