ルー・リード詩集『ニューヨーク・ストーリー』梅沢葉子訳
1992年に初版、2013年に改訂版が刊行され、絶版となっていたルー・リード自選詩集『ニューヨーク・ストーリー』(原題:Between Thougt and Expression)が2024年4月に待望の再刊となった。河出書房新社より。
1992年にCD3枚組ボックスセットともにルー・リードのアンソロジー・プロジェクトのひとつとして刊行された詩集であり、CDボックスセット、詩集ともタイトルは『BETWEEN TOUGHT AND EXPRESSION』と共通のタイトルがつけられた。
VUのファースト・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』からルーのソロ『ニューヨーク』(1989年)、ジョン・ケイルとの『ソング・フォー・ドレラ』(1990年)まで、ルー自身が選んだ87曲の歌詞が収録され、そのなかには、ニコに提供した「Chelsea Girls」やルーベン・ブラデスのアルバム『ナッシング・バット・ザ・トゥルース』(1988年)収録の「The Calm Before the Strom」と「Letters to the Vatican」、マルコム・マクダウェル主演の映画サントラ『ゲット・クレイジー』(1983年)に収録されていた「Little Sister」も含まれる。
他にUnmmuzzled Ox誌に掲載された2編の詩「The Slide」と「Since Hald the World Is H2O」、文芸誌に依頼された小説『ブルックリン最終出口』で知られる作家ヒューバート・セルビー・ジュニアへのインタビュー(結局雑誌には掲載されなかった)と、ローリング・ストーン誌にインタヴューの依頼をされたチェコスロバキアのハヴェル大統領(当時)が、インタビュアーをハヴェル自身が選んでいいのならとルー・リードを指名し実現したインタビュー(結局ローリング・ストーン誌には掲載されず、ミュージシャン誌に掲載された)が収録されている。
ロック系アーティストの詩集(訳詞集)はいろいろ刊行されているけど、海外のアーティストなら訳詞のついてるCDやレコードがあるし、国内アーティストならだいたい歌詞カードが付いてるわけで、それほど詩集として手元に置きたいということもないのだが、2022年にNHK総合で放送された『映像の世紀バタフライエフェクト』・「ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」のチェコスロヴァキアのビロード革命に与えたヴェルヴェッツの影響を見て、ルーがプラハを訪れておこなったハヴェル大統領へのインタビューを読んでみたいなぁと思っていたのだが、2022年頃には絶版となっており中古市場で定価より高いプレミア価格となっていたから、ようやく読むことができた。
ルーの紀行文を含め26ページのインタビューは、英語とチェコ語での会話、それをさらに日本語に翻訳という内容で、やや分かり難い部分もあるものの、共産党政権下のチェコスロヴァキアで反体制運動の拠り所としてヴェルヴェッツの音楽があり、ルー・リードの言葉があったというハヴェルの言葉は非常に興味深く、持っているために刑務所行きになった者もいるという手刷り限定200部、ルーの歌詞をチェコ語に訳した黒い歌詞集をレジスタンスの同志のようにハヴェルがルーに手渡すシーンは心に残る。その詩集にはルーのどんな歌が綴られているのだろうか。