安田潤司著『パンクス青の時代』

2025年2月7日、DU BOOKS刊

ジャパニーズ・ハードコア・パンクのドキュメンタリー映画『ちょっとの雨ならがまん』(1984年)等を監督した安田潤司の自伝的エッセイが刊行された。ハードコアの記録というと武勇伝的な内容が多いから、どうしようかなと思っていたけど、結局購入。事件並みヴァイオレンス、パフォーマンスの逸話もあるが、“暴力騒ぎの先に未来はない”と考え、“初期衝動のその先へ” を問い続けた著者の視点から描かれているように思う。

冒頭の石井聰亙監督『狂い咲きサンダーロード』やパンク・ハードコアとの出会いから8mmカメラを手に取り、自らジャパニーズ・ハードコア・シーンに飛び込んで撮影を始めるところは、東京ロッカーズとの出会いを描いていた地引雄一著『ストリート・キングダム』(1986年刊)のハードコア編だな、と感じた。

安田潤司監督デビュー作『ちょっとの雨ならがまん』は1984年3月、池袋文芸坐ル・ピリエで公開された。

1990年に頭脳警察が復活、朝霞の米軍基地跡で行われたライヴを記録したビデオ作品『万物流転』が安田潤司監督だったと改めて認識。確かにアグレッシブなカメラワークと編集の作品である。
頭脳警察『万物流転』(1991年・VHS・ビクター)
監督・安田潤司

その後、GISMの活動再開、MASAMI追悼GIG、GISM永久凍結ライヴ、クラブ・DJカルチャーへの接近、そして親しい者たちが他界した。東日本大震災、新型コロナウィルス・パンデミックの過酷な状況を経て、最近の活動が綴られている。

『ちょっとの雨ならがまん』の上映が決まってからは、“たとえどんなにハードなことが起きても、その状況を笑いながら楽しむこと”を“初期衝動の先”に見ていたという著者だからこそ幾つものタフな現場を潜り抜け撮影してこられたのだろう。やはり映画監督だけあって場面の編集の仕方がうまく、全体を通して読み易い。

G.I.S.M.『+R Regicide Reverberation』(2002年・VHS・Beast Arts)
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