浅川マキ『浅川マキがいた頃 東京アンダーグラウンド -Bootlegg-』

2010年にリリースされた浅川マキのDVD作品『浅川マキがいた頃 東京アンダーグラウンド -Bootlegg-』が2025年5月に再発された。以前から見たかったんだけど、廉価盤となったこともありようやく視聴。

浅川マキが生前より企画・監修・編集をしていたというドキュメンタリー。
黒髪、黒服、黒いサングラス…黒の上を途切れることなく流れる煙草の煙…形を変えて広がってゆく。男達が演奏する音の断片…泉谷しげる、山内テツ、山下洋輔、向井滋春、日野皓正、セシルモンロー、渋谷毅、植松孝夫、川端民生、下山淳…代わる代わる…スタイルを変えジャンルを飛び越えて。

浅川マキは唄から間奏になるとしゃがみ込み煙草に火をつける。長いインプロになりソロはサックスからトロンボーン、そしてピアノへ。浅川マキは演者へ拍手を送り、深々と吸い込み煙を燻らせる…音の感触を確かめるように、音の行方を見定めるように。

複数の会場で撮影されたライヴ/リハーサルの映像は、ほとんど手持ちのビデオカメラで撮影、付属のマイクで音声収録していると思われ、ノイジーな映像と音は副題のとおり公式ブートレグといった趣だ。浅川マキも当然登場するが、むしろ主となる登場人物は共演者の男達だろう。細切れの演奏者たちの映像をコラージュのように繋ぎ合わせ、アンダーグラウンドに身を潜める浅川マキの姿と音へのこだわりを浮かび上がらせていく。

下山淳、池畑潤二、奈良敏博、野島健太郎のルースターズ+シナロケ組によるサイケデリック爆音ライヴ映像は約7分。ダイナマイト・キックス池畑とストラトやファイヤーバードを爆音で掻き鳴らす下山。手持ちカメラを下山の前で撮影しているため異常にギターの音がウルサイ。「Kaleidoscope」、「Zero Hour」2曲の断片で映像も荒く処理されているが個人的にはこれを見るためだけでも価値あり。ベースはダンディな奈良、キーボードにニューウェイヴな佇まいの野島健太郎。

下山は文芸坐ル・ピリエのリハーサル映像にもアコギをスライドで弾く姿が映っている。

モノクロの映像は8mmカメラだろうか。浅川マキが監督した、原田芳雄がプロデューサー役、浅川マキが歌うことに懐疑的な気持ちを持つ歌手役で登場する短編映画『男からの声』を含む。

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