私の放浪音楽史 Vol.110 小山卓治『微熱夜』

1985年10月21日、CBSソニーからリリースの12インチ・シングル。

アルバム『PASSING』から4ヶ月後にリリースされた小山卓治初の12インチ・シングル。A面にはダンサブルなタイトルトラック「微熱夜」を収録。イメージは“真夜中の喧騒”ということで、特定1日の情景というより、多数の人々が行き交う都市の日常の喧騒を描いたものだろう。パーカッション(演奏はペッカー)を多用したアレンジでざわざわした群衆が無秩序にうねる感じと、微熱気味の夜からヒートアップした夜へ移りゆく様をよく表している。”今夜最初のいけにえが出た サイレンが勝ち誇ったように 人の群れをふたつに裂いた”という俯瞰したような視点の歌詞と、今夜はがっかりだったけど、明日また会おう、という内容のリフレインがいい。ファーストアルバムで“ちっぽけなカーニバルに乾杯”と歌った、名もなき路上の劇場で繰り広げられる高揚感をダイナミックにさらにパワフルに表現した。

B面の1曲目は「Show Time」。“俺のショーの始まり”とショータイムを告げる主人公の男は、“俺は夜のテロリスト Yes, it's a show time このままじゃくたばらないぜ”となかなか物騒に自身の“モノクロの夢”を売り込む。が、曲調はしっとりとアーバンなテイスト。矢口博康の吹くサックスがいい。

B面2曲目は「Passing Bell」の1985年9月7日、渋谷LIVE INNでのライヴ・ヴァージョンを収録。当時徐々に盛り上がっていた小山卓治の人気を伝えるサンプルとしても重要。

バックバンドにはDADと名前がつけられ、この12インチ盤からバンド名がクレジットされている。

ジャケットは「東京湾の埋め立て地で横殴りの雨と風の中で撮影した」(オフィシャルHP RED & BLACKの小山のコメント)という状況で井出情児が撮影した写真だが、ややぼんやりしたデザインになっているのが残念だ。左端に写る車はシトロエン2CVか。

PVも作られた。
小山卓治「微熱夜」PV

小山卓治「Show Time」PV

参考文献:ミニコミ『OYAMA TIMES VOL.6』(1985年りぼん)

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