浅川マキ『LIVE・夜のカーニバル』

1989年、東芝EMI・EASTWORLDよりリリースのライヴ・アルバム。

池袋文芸坐(1988年12月24日)
新宿紀伊國屋ホール(1987年3月7日)
京大西部講堂(日付記載なし)
の3会場でおこなわれたライヴからセレクトされている。

1988年12月の文芸坐はオールナイト公演で、
下山淳:Guitar
池畑潤二:Drums
奈良敏博:Bass
野島健太郎:Keyboards
の四人が参加した。ルースターズやシナロケ好きにとってはたまらん人選だよね。1988年は、下山にとっては7月にルースターズが解散、泉谷しげる with LOSERのメンバーとして活発に活動、池畑にとっては5月にゼロスペクターから脱退という時期だった。

このライヴ・アルバムはブックレットに収録会場、収録会場の演奏ミュージシャンのクレジットはあるが、曲毎に会場のクレジットは無いので各曲がどこで収録されたのかがはっきりと分からない。浅川マキ自身によるライナーノーツにはこう書かれている。

”文芸坐から、京大西部講堂、紀伊國屋ホール、そしてまた、文芸坐へと交錯する。
 コラージュと云ったら僭越だけれども、そんな感じも取り入れた。
 だが実際には欲ばらず、1980年代のライブからスライスした断面とでも云おうか、
 大きく二つの場面だけを取り上げ、じっくりと聞いてもらおうと、
 そんなアルバムになった”

1曲目に収録されている「KALEIDOSCOPE」は13分に及ぶ長尺のサイケデリック・ナンバーで、下山たちメンバーが浅川マキにより紹介されている。エキゾチックなフレーズを奏でる野島のキーボード、爆音で極彩色に彩られた下山のギターは自由に奔放に空間を飛び跳ね、奈良のベースはスリリングに絡まり、ダイナマイト・ドラムが炸裂する。浅川マキは“気儘に、思いつくことばを遠くへ翔ばした”とブックレットに記している。続く「あんな女ははじめてのブルース」は、歌詞にも登場する“ミシシッピ”デルタ・ブルース・スタイルで、アタックの強いドラムとジョニー・ウィンターばりに弾きまくるギターを聴かせる、やはりこの四人と思われる演奏。

3曲目の「暗い眼をした女優」からは浅川マキが山内テツを呼び入れていることから、
坂田明:A.Sax
向井滋春:Trombone
渋谷毅:Keyboards
セシル・モンロー:Drums
ボビー・ワトソン:Bass
山内テツ:Guitar
のメンバーで演奏された、1987年3月の新宿紀伊國屋ホールで収録された音源と思われる。続く「こころ隠して」、「町の汽船」、それに「霧に潜む〜あの人は行った」の「霧に潜む」の部分も同様だろう。ファンキーなタッチの演奏だ。

「霧に潜む〜あの人は行った」の「あの人は行った」の部分は演奏のみアウトロ的に短く収録されている。ライナーノーツのマキの言葉からすると、再び文芸坐のライヴからと思われる。アルトサックスは植松孝夫がクレジットされている。

そうすると
渋谷毅:Piano
川端民生:Bass
つのだひろ:Drums
というメンバー・クレジットがある京大西部講堂で収録された演奏はどこに収録されているのだろうか。

以前紹介した『浅川マキの世界2 ライヴ・セレクションBOX』の1枚『1982年4月28日「スキャンダル」@京大西部講堂』の6曲目「あんな女ははじめてのブルース」の冒頭に収録されている浅川マキの… "1ヶ月公演をしていると、美しい彼女が出来て、その彼女を浅川マキのライヴに連れてくる客の男”…についての語りが、『LIVE・夜のカーニバル』では2曲目と3曲目の間に挿入されている。西部講堂からはマキの語りのみが収録されているようだ。それに1曲目「KALEIDOSCOPE」の演奏が始まる前に聴こえているスウィンギーな演奏、これも『1982年4月28日「スキャンダル」@京大西部講堂』の「都会に雨が降るころ」の一部のようだ。オープニングSE的に使われたか、ライブ・アルバム制作時にそのようにミックスされたのでは、と想像する。

それにしても1988年12月の池袋文芸坐オールナイト公演のフルセットライヴ録音は残っていないものか。



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