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私の放浪音楽史 Vol.113 ECHO & THE BUNNYMEN『HEAVEN UP HERE』

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1981年5月30日、KOROVAよりリリースのアルバム(UK)。 鮮烈なデビューアルバムと楽曲のスケールを拡大した『ポーキュパイン』に挟まれた第2作。ややいぶし銀的な印象を受けるが、1曲1曲は硬く芯まで凍りつき、それぞれの曲から痙攣するような振動が感じられるだろう。まるで抜き身の刃のような青白い妖気を漂わせる緊張感に満ちた名盤である。 アルバムのオープニングは1980年11月BBCのジョンピールセッションでは「That Golden Smile」として演奏していた「Show of Strength」で“Your golden smile would shame a politician”という歌詞が歌われている。うねりのあるギターフレーズがかっこいい。続いてスピード感のあるパンキーな印象の「With A Hip」、ライヴEP『シャイン・ソー・ハード』に収録されていた「Over The Wall」はもくもくと湧き上がる灰色の雲のような不穏なイントロからタイトでパーカッシヴなドラミングがダイナミックな曲。ファンキーな印象の「It Was A Pleasure」、シングル曲の「A Promise」。アナログ盤ではここまでがA面。 ノイジーなギターが炸裂するタイトルトラックの「Heaven Up Here」、シンプルかつサイキックな小品「The Disease」、ライヴEPでは「Zimbo」というタイトルだった「All My Colours」、ユニークな印象もある「No Dark Things」、粉砕するように攻撃的なサウンドの「Turquoise Days」、“私が望むもの全てが私は欲しい 私が愛しむもの全てを私は愛す 間違いを犯したとしても、誰がそれを責められよう”(大意)と歌われる「All I Want」がラスト。バニーメンの歌詞って全体的にフィロソフィーとメランコリーが混在しているよね…。 スパイキーでタイトな演奏が充実したこのアルバムはイギリスでトップテンヒットとなった。 このアルバムを含むバニーズ初期4枚の美しいアルバムジャケットを撮影したフォトグラファー、ブライアン・グリフィン(Brian Griffin)は2024年に亡くなっている。

映画『狂い咲きサンダーロード』公開45周年記念復活上映決定!

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石井聰亙監督作品『狂い咲きサンダーロード』が公開45周年を記念して再上映される。 以下 (株)トランスフォマー公式HP より。 石井岳龍(ex.聰亙)監督が、日本大学藝術学部映画学科在籍時、23歳の若さで卒業制作として発表した日本が世界に誇る近未来バイオレンス映画『狂い咲きサンダーロード』。今なお伝説として語り継がれ、各界に影響を与え続ける本作ですが、公開から45周年を記念して特別再上映が決定しました! 東京・シネマート新宿では、8月22日(金)より2週間の限定上映。そのほか、北は北海道から南は沖縄まで全国各地で順次爆走予定です! 新しい復活上映のトレーラーも公開された。 この映画に関しては以前にも何度か書いている。 映画『狂い咲きサンダーロード オリジナルネガ・リマスター版』 Blu-ray(2016年11月) 朝日新聞 be on Saturday 映画の旅人『狂い咲きサンダーロード』 (2006年3月)

私の放浪音楽史 Vol.112 ECHO & THE BUNNYMEN『SHINE SO HARD』

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1981年、KOROVAよりリリースの12インチライヴEP(UK)。 1981年1月17日、ボクストンのパヴィリオン・ガーデンズでおこなわれたライヴを収録した短編映像作品『SHINE SO HARD』のサウンドトラックとしてリリースされた。ファーストアルバム『クロコダイルズ』から「Crocodiles」と「All That Jazz」が、後のセカンドアルバムに収録される「Zimbo」(後の「All My Colours」)と「Over The Wall」の4曲を収録している。 この12インチ、ジャケットはかっこいいし、バニーズのライヴ演奏が聴きたくてぜひとも入手したかったが1980年代中旬、新宿のコレクターズショップではかなり高額で売られていてなかなか手に入れられなかった。私が『SHINE SO HARD』を聴いたのはリリースから随分経ってからで、これはお茶の水にあったシスコで購入したと記憶している。私の12インチはニュージーランド盤で、買った値段は覚えてないけどコレクターズ価格ではなかったと思う(オリジナルUK盤は文字がグリーンなんだよね…)。 ラフでフリーキーになった「Crocodiles」、Zimboという言葉が繰り返し歌われ催眠的な効果を生みだしている「Zimbo」。そして特にピート・デ・フレイタスのパーカッシヴなドラミングは、アタックの強いドラムロールで高揚感をもたらす「Over The Wall」や「All That Jazz」、エキゾチックなムードを演出する「Zimbo」で印象に残る。「Zimbo」の歌詞がアルジャーノン・ブラックウッドの小説『ジンボー』(原題:Jimbo: A Fantasy)にインスパイアされたのではないか、ということを読んだのは日本では1983年12月に来日記念盤としてリリースされた『エコー・アンド・ザ・バニーメン(ネヴァー・ストップ)』に封入されていた大野祥之のライナーノーツだった。そこには“主人公のジンボー少年の肉体と心が分離して、心が閉じ込められながらも、最後には閉じ込められた部屋の外へ飛び出す”というストーリーが紹介されている。今回セカンドアルバムに収録されている「All My Colours」の歌詞を読んで、“Flying”ではじまり、“What d'you say when your heart's i...

私の放浪音楽史 Vol.111 ECHO & THE BUNNYMEN『CROCODILES』

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1980年7月18日、KOROVAよりリリース(UK)。 私がこのバニーズのデビューアルバムを聴いたのは3枚目のアルバム『ポーキュパイン』の後だから、1983年後半頃か。最初に入手したのは日本盤のアナログだった。オレンジやグリーンに照らされた夜の森に佇むメンバーを写したジャケットがアーティステック(フォトグラファーはブライアン・グリフィン)。シャープで躍動感のある粒揃いでコンパクトな曲が並んでいる。ブロデュースはビル・ドラモンドとデイヴィッド・バルフの変名ザ・カメレオンズと、一部イアン・ブロウディ。 フィードバックノイズの霞の中からリズムがフェイドインしてくる「Going Up」、後にリリースするライヴEPのタイトル『Shine So Hard』になる“Stars are stars and they shine so hard"という歌詞の一節があるメランコリックな「Stars Are Stars」、“キーモン、キーモン”というモンキーを逆さ言葉にして繰り返し歌う「Monkeys」、ライヴでは長尺になるがアルバムではザクザク、ジャキジャキのギターがかっこいいスピーディなタイトルトラック「Crocodiles」、シングル曲「Rescue」とその12インチのカップリング曲「Pride」(この2曲のプロデュースがイアン・ブロウディ)、ピアノの旋律が印象的な「Villiers Terrace」、ZOOからのファースト・シングル収録曲の再演「Pictures On My Wall」、躍動感に満ちた「All That Jazz」と「Happy Death Men」でアルバムは終了。 タイトでパワフルなピート・デ・フレイタスのドラムとグルーヴィーなレス・パティンソンのベースは鉄壁のリズム隊。そして鋭利なフレーズを奏でるウィル・サージェントのギター、艶やかな響きのイアン・マッカロクのヴォーカル。スペシャルなクリエイティヴティはこの4人ならではのものだ。キーボードはデイヴィッド・バルフが弾いている。 この日本盤はUKリリースと同仕様10曲入りで、バンドの代表曲のひとつ「Do It Clean」とジュリアン・コープとイアン・マッカロクの共作「Read It In Books」はアルバムに収録されていなかった。イリギス盤にはその2曲を収録したシングルが付属している限定盤がある...

追悼・渋谷陽一 『季刊 渋谷陽一 BRIDGE』

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雑誌名に自分の名前を冠した『季刊 渋谷陽一 BRIDGE』。創刊号1994年2月号の冒頭「創刊にあたって」で渋谷陽一は“雑誌業界から編集者の顔が失われている”危機感を訴え、この本を“徹底した個人誌、同人誌以下の個人的作業で作ってみよう”と思い、”全てのインタビューを自分で行なったし、かなりの写真も自分で撮った”、“『ROCKIN' ON JAPAN』は若手のミュージシャン中心だが、この本はベテラン・ミュージシャンを中心に構成”、そして“今の日本の音楽シーン支えている大物ミュージシャン達が主体となるメディアが存在していない”状況を“音楽雑誌業界の持つ構造的な問題”それは”情報をいびつなものにしてまっているのは確かだ”と記載している。 創刊号は忌野清志郎、カールスモーキー石井、浜田省吾、佐野元春、大沢誉志幸、CHAR、少年ナイフ、いまみちともたか、山下達郎、吉川晃司のインタビューを掲載、先にも書いたが全てのインタビュアーは渋谷陽一。どれも読み応えあり、少年ナイフの会社勤めしながらバンド活動&パックツアーで海外ライヴの話で盛り上がるインタビューが微笑ましい。 第2号は1994年4月号で「佐野元春の10曲」と題し「アンジェリーナ」、「サムデイ」、「コンプリケーション・シェイクダウン」、「約束の橋」といった代表曲10曲を選定、その曲を通して渋谷陽一が佐野元春というアーティストに迫るという企画。もっともCDが売れていた時期の強気のユーミン、阿久悠に作詞を依頼した時期(シナロケ のアルバム『ROCK ON BABY』)の鮎川誠、バンド名通りの神経質な内容のナーヴ・カッツェ、その他に仲井戸麗市、シュークリムシュ、久保田利伸、サンプラザ中野、EPO、松浦雅也、平沢進、MIX NUTS。すべて渋谷陽一がインタビューしている。渋谷陽一が撮影した写真も前号に比べて増え、佐野、シュークリームシュ、ユーミン、久保田以外はすべて渋谷の写真が使われている。 第3号1994年7月号も10曲を選び、その曲からアーティストに迫る企画の第2弾「浜田省吾の10曲」。「路地裏の少年」、「片想い」、「愛の世代の前に」といった代表曲10曲が選ばれた。2025年の現代にそのまま通じる内容をもつ「愛の世代の前に」は、広島と核兵器をテーマにし8月6日に作ったと語られている。ほかに2・3'Sが活動休止した...