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私の放浪音楽史 Vol.115 AZTEC CAMERA「OBLIVIOUS」

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1983年、ジャパンレコード/ラフ・トレードよりリリースの12インチ・シングル。 1983年頃聴いていたのは、切っ先鋭く陰影のある音像が魅力的なエコー&ザ・バニーメン、ジョイ・ディヴィジョン、バウハウスといったところだったが、友人宅でこのアズテック・カメラの12インチを聴いた。ロディ・フレイムのスウィートだけど甘すぎないヴォーカルにテクニカルなギター、瑞々しいメロディとラテンなアレンジには一発で虜になった。その不思議な名前AZTEC CAMERA(アステカのカメラ)と真っ直ぐこちらを見つめる民族衣装を身に纏ったような女性のポートレートを使用したジャケットも記憶に残るものだ。 ポストカードから2枚のシングル、ラフトレードから1枚のシングルを経てリリースされた「Oblivious」は7インチと12インチでリリースされた(イギリスでは1983年1月リリース)。右のジャケ写は日本盤の12インチで帯のキャッチコピーは“君に捧げる青春の風景”、「Oblivious」の邦題はいかにもな“思い出のサニービート”とつけられ、なんだかセピアでほろ苦い印象(まぁサニーサイドな曲調からのイメージを受けてなんだろうけど)。「Oblivious」の冒頭、 “ From the mountain tops down to the sunny street   A different drum is playing a different kind of beat ” というラインからインスパイアされた邦題と思えるが、邦題からのややノスタルジックなイメージじゃなくて、違うんだけど似通っているもの、同じようなんだけど違っているもの、について歌われているのではと思う。タイトルのOBLIVIOUSと歌詞に使われているOBVIOUSの似通った綴りと意味の違い、に表されているんじゃないか。 ”通りを歩く君の足音が聞こえる  僕たちが出会うのもそう遠くないよ  それは明らかなこと (OBVIOUS)  仲間になったり、ならなかったり、僕はその叫びを待っているだけ  気付かないけどね (OBLIVIOUS) ” 「Oblivious」written by Roddy Frame B面には(12インチでは)、セミアコの音色にのせて、ゆったりとして落ち着いた「Orch...

私の放浪音楽史 Vol.114 BAUHAUS『IN THE FLAT FIELD』

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1980年11月、4ADからリリース(UK)のアルバム。 デュアン・マイケルズの写真「Homage To Puvis De Chavannes」を使用したフロント・カヴァーが印象的。1981年にリリースされた日本でのアナログ盤は一部にぼかしが入っていた。 3枚のシングルリリースを経たバウハウスの初めてのアルバムで、オリジナル・アナログ盤ではそれらのシングル曲を全く収録していなかった。 圧倒的にダーク、絶望的にヘヴィでありながらもしばしばシアトリカルな音像が軽妙な印象もあたえる。ピーター・マーフィーはグラムな雰囲気をたたえつつ、咆哮というかストレンジな叫び声をあげ、有刺鉄線のようにエッジーなギターが容赦なく聴覚に突き刺さる。時にファンクな、時にはトライバルなリズムをゴシックの中に埋め込み、立体的に構築されたアート作品と言っていいだろう。 アルバムは神秘的なイントロからスロー&ヘヴィな「Double Dare」で始まり、続くスピーディでスリリングな「In The Flat Field」は“退屈だ 平らな場所は退屈なんだ”という叫びが耳に残る。ソリッドな「God In An Alcove」や「Dive」、ミニマルな「Spy In The Cab」や「Small Talk Stinks」、舞踏病についてと思われる内容の「St.Vitus Dance」、“磔刑の恍惚の中で…”で始まる重圧で攻撃的なサウンドの「Stigmata Martyr」、呪術的な「Nerve」の充実した9曲を収録。 後のリイシュー盤ではシングル曲をボーナストラック収録しており、セカンド・シングルの「Dark Entries」でアルバムが始まるCDもあるが、やはり「Double Dare」で始まって欲しいよね。 そのグループ名のとおり、1919年ドイツで起こったバウハウス・ムーヴメントのように虚飾を排し、無駄を削ぎ落としたサウンドは後のバンド/アーティストに多大な影響をあたえた。 1981年に日本でリリースされたアナログ盤LP