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私の放浪音楽史 Vol.124 THE SMITHS「HOW SOON IS NOW?」

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1985年1月、ラフトレードよりリリースの12インチシングル。 ボ・ディドリーに肖りトレモロのエフェクトをかけたギターがボ・ビートを刻む。マイク・ジョイスのドラムは16ビート。硬質なアンディのベース。そのサイケデリックな演奏にモリッシーの浮遊感のあるヴォーカルが重なる。マーのスライドやハーモニクスのフレーズも印象的。ほぼワン・コードで6分43秒に及ぶエキサイティングだが催眠効果と中毒性を併せ持った曲だ。 シングル「William, It Was Really Nothing」制作時に作られ、シングルA面として発売も検討されたがラフ・トレードによって見送られ「William,〜」の12インチのカップリングとして収録、その後コンピ・アルバム『ハット・オブ・ホロウ』にも収録された。ラジオ・プレイが多かったことから結局シングルA面曲としてリリースされることになったが、すでに2枚のレコードに収録済みということありチャート的には全英24位だった。 “How soon is now?(今っていつ来るの?)”というタイトルそのままの言葉は歌詞の中にはないが、相当する箇所はある。 ”僕が受け継いだのは犯罪的にひどく内気な性格だって  僕が受け継いだのは何の取り柄もないことだって  黙れ  よくそんなことが言えるな  物事を間違ったやり方で進めてしまう 僕だって人間なんだ  他のみんなと同じように誰かに愛されたい  今に起こるよって君は言うけど  それって“いつ”のことなの?  ねぇ、僕はもうずっと待ち続けてきたんだよ  そして僕の希望は何ひとつ残っていない” ジャケットには第二次大戦中のイギリス軍撤退作戦を描いたレスリー・ノーマン監督の映画『ダンケルク (原題;Dunkirk)』(1958年公開)から俳優ショーン・バレットの写真(おそらく浜辺で跪いている姿)が使用された。12インチのカップリングにはインスト曲「Oscillate Wildly」と、この後リリースされるオリジナル・セカンド・アルバム『ミート・イズ・マーダー』に収録される「Well I Wonder」。7インチ「How Soon Is Now?」シングルには3分41秒に編集したエディット・ヴァージョンが収録された。 下の画像はアメリカ...

私の放浪音楽史 Vol.123 THE SMITHS『HATFUL OF HOLLOW』

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1984年12月16日、徳間ジャパン/ラフ・トレードよりリリースのコンピレーション・アルバム(イギリスでは1984年11月リリース)。 ザ・スミスの2枚目にリリースされたアルバムで、シングル収録曲6曲と4回のBBCセッションから10曲を収録したコンピレーション。寄せ集め感はなくバンドの初期衝動と進化していく様を見事に捉えた内容で、このアルバムも繰り返し繰り返しよく聴いた。 ジャケットにはフランスの雑誌「リベラシオン(Libération)」1983年7月号に掲載されたジャン・コクトーの線画をもとにしたタトゥーを左肩下にいれた青年の写真が使用され、その白黒写真をかこむカラーは涙色。アルバムのタイトルは『虚しさで溢れた帽子』。 収録曲は下記(アナログでは9曲目からB面)。  1. William, It Was Really Nothing  2. What Difference Does It Make?  3. These Things Take Time  4. This Charming Man  5. How Soon Is Now?  6. Handsome Devil  7. Hand In Glove  8. Still Ill  9. Heaven Knows I'm Miserable Now 10. This Night Has Opened My Eyes 11. You've Got Everything Now 12. Accept Yourself 13. Girl Afraid 14. Back To The Old House 15. Reel Around The Fountain 16. Please, Please, Please, Let Me Get What I Want Track 1, 5, 16 from 12inch single「William, It Was Really Nothing」 Track 2, 6, 15 from BBC Radio 1 JOHN PEEL Show first broadcast 31/5/83 Track 3, 11 from BBC Radio 1 DAVID JENSEN Show ...

私の放浪音楽史 Vol.122 THE SMITHS「HEAVEN KNOWS I'M MISERABLE NOW」

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1984年8月25日、徳間ジャパン/ラフ・トレードよりリリースの12インチ・シングル(イギリスでは1984年5月リリース)。 ザ・スミス4枚目のシングル。タイトルはサンディ・ショウの60年代の楽曲「Heaven Knows I’m Missing Him Now」にかけている。 まず目を引くのはジャケットのヴィヴ・ニコルソンの肖像。サッカー賭博で大金を手にし(実際に当選したのは彼女の夫らしい)、その後浪費によって財産を失い無一文になったというイギリス人女性。彼女はこの後もザ・スミスのシングルのカヴァーアートに登場した。プロデュースはジョン・ポーター。エンジニアはボブ・ポッターと記載があるが、1988年リリースのCDシングル(RTT156CD)ではエンジニアはスティーブン・ストリートとクレジットされている。 “呑んだくれているうちは楽しかった  だけど僕が今惨めなのは言うまでもないこと  仕事を探して、どうにか見つかった  そして僕が今惨めなのは疑いようもない  僕が生きていようが死んでいようが気にもしない奴らに  なぜ僕の人生の貴重な時間を使わなければならないのか” ジョニー・マーのギターのチャイムのようにキラキラとしたフレーズ、スムーズなカッティングにのせて、ニセモノで紛らわすな、自分の価値を貶めるな、とストレートなメッセージが歌われる。1984年1月初めて訪れたニューヨークでサイアー・レコードと契約し、ジョニー・マーがシーモア・スタインに買ってもらった(それも契約条件のひとつだったという)、赤の59年製ギブソン355をホテルに持ち帰り最初に作った曲。全英チャートで初のトップ10ヒットとなったシングル。 カップリングには女の子と男の子のすれ違いを描いた「Girl Afraid」と、ファーストアルバム『ザ・スミス』から「Suffer Little Children」を収録。シングル発売後にたまたまこのシングルB面の「Suffer Little Children」を聴いたサドルワース・ムーア事件(連続児童誘拐殺人事件)の遺族はザ・スミスに対して抗議、一部のショップでこのシングルが回収、アルバム『ザ・スミス』は発売中止となる事態に。その後、ザ・スミス側から“この曲は犠牲になった子供達への追悼曲であり、悲しみを代償に金儲け目...

私の放浪音楽史 Vol.121 SANDIE SHAW「HAND IN GLOVE」

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1984年7月25日、徳間ジャパン/ラフ・トレードよりリリースの12インチシングル(イギリスでは1984年4月リリース)。 モリッシーの敬愛する60年代の歌姫・サンディ・ショウがザ・スミスの楽曲を歌った3曲入りの12インチシングルで、当初は「I Don't Owe You Anything」がA面に予定されていたがスミスのデビュー曲「Hand In Glove」がA面としてリリースされた。 ザ・スミス・ヴァージョンで印象的だったイントロのハーモニカは使用されておらず、サンディ・ヴァージョンにリアレンジされ、ややザラっとしたサンディのヴォーカルで歌われる。ザ・スミスの輝かしいデビュー曲で、“ギャング仲間のスピリット”(byモリッシー)を高らかに宣言した「Hand In Glove」を再び世に問うかたちとなったこのシングルは、全英チャートで27位をマークした。 “ぴったり息のあったふたり  私たちは世界の中心で光り輝く  ぐるのようなふたり   善良な奴らは笑っているわ  確かに私たちはボロを着ているけど  あいつらには決して手に入らないものを持っているのよ” 「Hand In Glove」 カップリングにはファーストアルバム『ザ・スミス』収録曲の「I Don't Owe You Anything」。 7thコードを多用したクリアなギターサウンドとキーボードの響きが爽やかな夏の夜のバックグラウンドミュージックとも言えそうな演奏だけどモリッシーの歌詞が歌われればそれはザ・スミスの世界。 “盗んだワインで誘惑され  うなずいたのが全ての始まりだった  次に何が来るのかあなたはよく知っていた  私はあなたに借りはないけど、あなたは私に借りがあるのよ  今すぐ返してちょうだい  人生は決して優しくはない  人生は厳しいもの  でも今夜何があなたを笑顔にするのか私は知っているわ” 「I Don't Owe You Anything」 カップリングにはもう1曲「Jeane」。ザ・スミスのシングル「This Charming Man」のカップリングに収録されていた曲で、サンディのヴァージョンはアコースティック・ギターの響きをメインにしたアレンジになっている。...