THE ROOSTERS 『CMC』
SIDE A :
1. CMC(作詩/大江慎也 作曲/ザ・ルースターズ)
シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演の映画『未知への飛行』に影響を受け作られたと言われている曲で、 サマービーチを突然襲う爆撃の様子が歌われている。
『未知への飛行』は、ユージン・バーディックとハーヴィー・ウィーラーによって書かれた小説『未確認原爆投下指令』(原題:『Fail Safe』) を原作とした映画で、冷戦下のソ連に誤って侵入したアメリカの核戦略爆撃機を呼び戻す努力と、 これが故意ではないとソ連の首相を説得するアメリカ大統領や戦略空軍司令部の緊迫したやり取り、徐々に近づく核戦争の恐怖を描いた。爆撃機の積んでいるのは20メガトンの核爆弾。これをモスクワに投下する事態になれば、 米ソ間の全面核戦争になり、世界の終末が訪れることになる。そして、アメリカ大統領の下した命令は...。
もともとは「サマー・サマー・サマー(巡航ミサイル・キャリア)」という題名だったが、 リリース時にはCruising Missile Carrierの頭文字をとったタイトルに改められた。 “バカンスを楽しむ人々は~”の部分を除けばスリーコードで作られたルースターズ型のロックンロール・ナンバーで、そのビート感は群を抜く。 イントロのギターで警報が鳴り響き、フィード・バックが爆撃機の飛来を告げる。 その前のめりに突き進む演奏は“磯ガニ”が登場する少しユーモラスな歌詩、ポップな井上のベースラインとマッチして緊張感を生み出す。 “Summer Day, Summer Beach, Summer Sun”の部分のドラミングは、The Clashの「Tommy Gun」を彷彿とさせるフレーズだ。
2. カレドニア(作詩/大江慎也 作曲/ザ・ルースターズ)
抽象的なフレーズが並ぶ歌詩。“飛んでゆく、棒一本持って”、“旋風をたてて”、“水しぶきをあげて”、“In To Deep Blue Sea” などのフレーズからは前の曲のようなミサイルや潜水艦などが頭に浮かぶ。 スカルノ峰やウギンバはインドネシアの地名、ナッソウはババマの首都。
井上の低くうねるベース・ラインが印象的だが、 このベースを前面に出して(ドラムやギターは抑えられた)Remixしたバージョンが『Good Dreams』に収録されている。
アナログ盤のジャケット裏には手書きの歌詩が印刷されているが、“スカルノ峰から”が“すばるの方から”と書かれている。 やはりアナログ盤のクレジットには“Tomio Inoue, Bass.Piano”と印刷してあるが、井上がピアノを弾いているのはこの曲だろうか。
SIDE B :
1. Drive All Night(作詩・作曲/Ellliot Murphy)
ボーカル花田。エリオット・マーフィーのカバー・バージョンで、四作目のアルバム『Just A Story From America』から。
「真夜中の暴走」という邦題が付いていたこの曲は、退屈な町の退屈な生活をぶっ飛ばすため、太陽と格闘し、光と競争する若者たちのいらだちを描いている。 フィル・コリンズの豪快なドラミングとオルガンが印象的な曲を、打ち込みのドラムとフィードバック・ギターでソリッドに仕上げた。 井島のサックスが1984している。
曲の後半で下山淳がギターソロを弾いていて、初めてクレジットがされた。 また、『Good Dreams』に収録されている、この曲のClub-Mixでは下山がベースを弾いている。
本来なら、ここに82年のセッションで録音された「ゴミ」と「ゴー・ファック」が収録される筈だったのだろうが、 1983年5月に再度スタジオ入りしてこの曲を録音した。そして「ゴミ」は『Good Dreams』に収録されたが、「ゴー・ファック」は未だ未発表(しつこい)。
2. Case of Insanity(作詩・作曲/大江慎也)
1981年12月13日、新宿ハローホリデーのライブから。キーボードは安藤広一。
アコーステイックなスタジオ・バージョンと違って、キンキンいうマイクと花田のゆらゆらと歪んだギターがライブ感を増す。 この日の他の曲も聴きたい。同日はバトル・ロッカーズも演ってるし。マスターテープが残ってたらぜひリリースして欲しい。
1987年にリリースされたCDでは『Insane』とのカップリングで、2000年の紙ジャケ再発CDでは『The Roosters』、『Insane』、 『Good Dreams』に分散されて『ニュールンベルグでささやいて』と『CMC』の楽曲が収録されていたが、 2004年5月現在これらのCDは入手不可能になっており、両12インチまとまった形で、 さらに収録曲に「ゴミ」と「ゴー・ファック」を入れて再発して欲しいものだ。