OMNIBUS a Go Go Vol.51『SINGLES The Great New York Singles Scene』
私がテレビジョンを聴き始めた頃にはオリジナル7インチは見たことなかったが、英Orkレコードから出ていた12インチ「Little Johnny Jewel」は輸入盤屋で見かけた。それなりの値段もしていたし購入せず、気付けばテレビジョンのデビュー曲を聴く機会は遠くなっていた。だから、このオムニバスCDに半分とはいえ収録されて手軽に聴けるのは嬉しかった。
リリースは1990年、J.A.P. RECORDSより。元々は1982年頃アメリカのカセットレーベルROIRからリリースされていたものだ。
テレビジョンの「Little Johnny Jewel part.1」はオリジナル7インチ(1975年リリース)のA面分で、トム・ヴァーレインが82年にリミックスしたバージョンを収録。ベースのフレーズから始まり、キリキリと糸巻きを巻くような テンションを持った展開は尋常じゃない。トリッキーなギター、音数の多いドラム、か細いけど個性的なトムのボーカル、 ギターソロがいいところ...でフェイドアウト。
これまた入手難だったパティ・スミスのデビューシングルB面曲「PISS FACTORY」もこのアルバムで初めて聴いた。スウィンギーで歯切れの良いリチャード・ソールのピアノとレニー・ケイのギターをバックにパティのポエトリー・リーディングが始まり、その言葉は徐々に速度を増し、熱を帯びていく演奏とともにマシンガンのように放たれる。パイプ工場で働き続けた日々を綴り、ションベンくさい場所からニューヨークへ出て輝きを手に入れてやる、と。オリジナルシングルは1974年に リリースされた。
リチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズの「(I Belong To The)Blank Generation」も貴重な音源。 1976年にOrkレコードからリリースされた3曲入り7インチより。プレスリーの「トラブル」を換骨奪胎したような曲調に、なんにもない、からっぽ世代の “My Generation”宣言ともいえる歌。世代を象徴するアンセミックな曲となった。
その他、テレビジョン、リチャード・ヘルに続いてOrkレコードからリリースされたマーブルズのコーラスたっぷり甘酸っぱい「Red Lights」(1976年リリース7インチのB面曲)、グレン・ブランカが在籍していたセオレティカル・ガールズのエレクトロニカな「U.S.Millie」、パワーポップ全開スピーディーズ「Let Me Take Your Photo」、後にワシントン・スクエアズを結成する3人、ローレン・アグネリがいたナーヴァス・レックス、ブルース・ジェイ・パスコウがいたインヴェイダーズ、 トム・グッドカインドがいたU.S.エイプも興味深い。全14バンド、14曲収録。