早川義夫著『たましいの場所』
早川義夫の本は1990年代に再刊された『ラブ・ゼネレーション』、そのあと古本で買った『ぼくは本屋のおじさん』を読んでたけど、音楽活動を再開した頃1994年からのエッセイをまとめた『たましいの場所』(初刊行は2002年)の文庫本を最近入手して読んだ。
これまでの本も、時に辛辣、時に心のずーっと奥を見つめないと見つけられないような表現で、自分の感情に素直な文章を書く人だなぁと思っていたけど、この『たましいの場所』はさらに包み隠さず赤裸々と思える。音楽活動を再開することによって気付いたこと、早川書店を閉店することで気付いたこと、まぁこのあたりは早川のパブリックな面の延長だから抵抗なく読めるのだが、章が進むにつれて妻、子供、兄弟という家族に関する内容には驚くこともしばしば。さらに早川の恋/恋人に対する事柄もあけすけ。
以前からの深い洞察力は不変。それが広く日常の事柄にもおよんでいるので、多くの人に読まれてもいるし、共感も得られているのだろう(性に対するアナーキーさも不変だ…)。アルバム『ひまわりの歌』(1995年)のプロデュースをした佐久間正英とのエピソードも面白かったし、早川義夫が母の病室で歌を歌うエピソードは歌の持つ不思議で特別な力を感じることが出来た。
早川義夫のパーソナルな出来事も刺激的な読み物だが、個人的には音楽活動に関連したエッセイがもうちょっと読みたいなとも思う。でもそのパーソナルな出来事が早川の作る音楽の創作のもとになるんだと思うとやはり興味深いのだが…。それでも “まだまだ、僕は本当の事は、ちっとも言っていない” と書く早川義夫。「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」を変わらず追及して音楽や言葉を生み出している。この本の他にも数冊ちくま文庫から出てるので読んでみようか…。
“あなたが一流で、私が三流なのではない。あなたの中に一流と三流があり、私の中に一流と三流があるのだ”
「今を生きる」より。