山口冨士夫『ひまつぶし』

2022年3月9日、Good Lovin'よりリイシューのアルバム。

山口冨士夫のファースト・ソロ・アルバムが2022年デジタル・リマスターが施されリイシューされた。

オリジナルはエレック・レコードより1974年4月リリース、私はヴィヴィッドから1986年に再発されたレコードで聴いて愛聴していたが、その辺りは山口冨士夫が亡くなった2013年8月の記事で書いた。

2001年にGood Lovin'からオリジナル・ジャケットのアートワークでCD再発された際にボーナストラックとして1974年4月20日、名古屋市公会堂のライヴ3曲「CAN NOT WAIT」、「からかわないで」、「誰かおいらに」が収録された。このライヴ、ネット上で以前のインフォメーションを読むと名古屋市公会堂で3曲のみ演奏しステージを去ったパフォーマンスの全曲だという(ベース小林英男、ドラム高橋清)。その後VAPからCD再発(ボーナストラック無し)、さらに2014年再びGood Lovin'からリリースの際、アルバム『ひまつぶし』制作時にエレック・スタジオで録音されたデモ・トラック「unknown tittle」、「おさらば demo version 1」、「おさらば demo version 2」の3曲が追加収録されている。

今回はGood Lovin'から3回目のCD再発となるが、オリジナルオープンリールマスターから2022年最新リマスタリング、ボーナストラックは前回と同じライヴ3曲+デモ3曲という内容だ。

1986年にもCD化はされているが、私は今回のリイシューまでこのアルバムのCDは購入していなかった。しかし今回のリリース・インフォメーションで、
1.からかわないで (未発表/Alternate Outtake) 
2.泣きたい時には (未発表/Alternate Outtake)
3.Can Not Wait (Instrumental Demo)
4.ひとつ (Acoustic Demo)
という内容の先着限定特典CDR付き、ということだったので、なんかいっぱいライヴやデモ、アウトテイクが聴けるな(ボーナストラック6曲に特典CDR4曲の全10曲!)ということで予約して購入したのだった。

私はディスクユニオンで購入したが、Good Lovin' Productionのインフォメーションには今回の特典CDRは、
1と2が、これまでお蔵入りとなっていた2曲の未発表アウトテイクで、マスターカセットテープの劣化によりお蔵入りとなっていたのを最新技術を駆使して修復し今回追加収録した、ということだ。1は転調部分の歌とギターソロがなくイントロのギターの入りが違っている。2もヴォーカルの歌い出しの譜割りが違うようだが、1と2どちらもアルバムに収録されたオリジナルとベーシック・トラックは一緒だと思う。
3と4が、2014年再発時の特典CDR収録曲。4はアコースティックというよりエレキの弾き語り。

まぁオリジナルLP収録10曲のアルバムとしてのトータル完成度が高すぎて、ボーナストラックの熱狂が伝わるライヴ3曲、フォーク・ロックな「untittle song」、アコギとドラム入りの「おさらば demo ver.1」、アコギにスライド・ギターとピアノが入った「おさらば demo ver.2」は貴重な音源で興味深いけど、アルバムとしては無くてもいいかな…と。いずれもロウな音質だし。ボーナス・ディスクとしたほうがいいかな…。

と、ここまでボーナストラック、特典音源について長くなったが、アルバム本編はもちろん最高のロックンロール・アルバムだ。冨士夫がカッティング(アナログ・レコード盤作成のための原盤制作)が最悪だったと言っていた1974年のオリジナル・アナログ盤は聴いた事ないが、私が聴いていた1986年のアナログ盤の音は低音あるし悪くない音質だと思うけどな。以前のCDと比較は出来ないけど、今回の最新リマスタリングは音圧はともかく、やや低音が強調されてブルース・ナンバー「誰かおいらに」のベースは特に迫力が増していると思う。「ひとつ」や「それだけ」でのパーカッションの音も鮮明になっている印象だ。

レコーディング・クレジットは無いけど、
Recorded at Elec Studio, Dec.1973
Vocal, Guitar, Blues Harp, Bass, Percussion:山口冨士夫
Bass:高沢光夫
Drums:高橋清
被せ帯裏側に書かれている内容によると上記になる。

山口冨士夫著『So What』(K&Bパブリッシャーズ・2008年)によると、高沢は冨士夫の友人で冨士夫と共に作詞も担当(「おさらば」は冨士夫単独の作詞)、高橋は高沢の友人、という3人でレコーディングがおこなわれ、他に女性コーラス・グループはドラム高橋の奥さんを中心に組まれ、多くの曲で活躍しているキーボードはエレック・レコードに勤めていた田中さんという女性が担当した。

「ひとつ」、「おさらば」、「からかわないで」という、アルバム代表曲の他にも、GS風な「恋のビート」や「何処へ行っても」、ハード・ドライヴィンな英語詞の「CAN NOT WAIT」、破壊力抜群のブルース「誰かおいらに」、女性コーラスをフューチャーした「それだけ」、セカンド・ライン/ボ・ビートな「赤い雲」、リリカルな「泣きたい時には」(ストーンズ「As Tears Goes By」や「Lady Jane」を思わせる)とバラエティに富んだ楽曲で全曲が聴きどころであり、『ひまつぶし』というそのタイトル通り、愉快で怠惰で投げやりで思い切り良くいい加減で探究心と遊び心に満ちたロックンロール・アルバムだ。

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