今井智子著『ルースターズの時代』
1988年にルースターズ解散後、しばらくして「ロッキンオン・ジャパン」か「宝島」だったか、ルースターズのメモリアルブック、タイトルは『LAST SOUL』を発売すると音楽雑誌に告知が掲載された。そりゃぁルースターズの活動を振り返る本が一冊くらい出てもいいよな、と楽しみにしていたのだが、その後“ルースターズのメモリアルブック発売は中止になりました”とページの片隅に再度告知が載り、残念だな、と思った記憶がある。手元にある雑誌を見直したりする時にあの告知はどこに載っていたのだろうかと探したりすることもあったのだが、引越しのたびに雑誌も処分したりで、その告知を見つけることはできなかった。それとも単なる私の思い込みだったのだろうか?
ルースターズ活動時には、大江慎也の離脱前後などいくつかデリケートでセンシティヴな出来事があるので、そこを避けてはバンドヒストリーを振り返ることは不可能だ。そのあたりがヒストリーブックなどのアーティスト本の刊行を難しくさせているのかな、とは思ったが、1999年のトリビュート盤リリースを契機とした雑誌『レコードコレクターズ』の特集、大江の活動休止後9年振りとなる雑誌『ロッキンオン・ジャパン』のインタビュー記事 、2004年のオリジナル・ルースターズ復活のフジロック出演、オフィシャル・パーフェクトボックス・リリースを契機とした雑誌『ロッグ画報』の特集やオフィシャル・パーフェクトボックスのブックレット、2005年には大江慎也が半生を振り返った『words for a book』(共著・小松崎健郎)を刊行、とルースターズ・ヒストリーを振り返る出版物が増え、大江離脱前後の出来事や当時のメンバーの心境なども徐々に語られるようになっていった。
2024年11月25日、音楽評論家・今井智子により歴代メンバー、関係者にインタビューをおこない、ザ・ルースターズ結成以前から解散までを振り返るインタビューブックがシンコーミュージック・エンタテイメントより刊行された。副題は「THE ROOSTERS AND THE ROOSTERZ 1979-2024」。
刊行して日も浅いので細かく内容については触れないが、冒頭に写真が8ページ、登場人物紹介を経て、300ページ弱が本文だ。まずバンド結成前史、そしてルースターズ活動中にリリースしたアルバム、12インチを軸にしてメンバーやマネージャー、ディレクター、映画監督の石井聰亙(現・石井岳龍)、歌詞を提供していた柴山俊之、ロッカーズの陣内、アクシデンツの原島など関係者に話を聞いていく。作詞で協力していた清水マリヤ(M.Alexander)のインタビューがあるのがちょっと驚き(ページ数少ないけど)。灘友が語る美空ひばりのエピソードは笑った。
その時々の異なる人物の証言を集め多角的に物事を捉えようとした労作だと思う。だけど、この本のイントロダクションで今井は10人(のメンバー)に話を聞いたと書いているが、インタビューが掲載されているメンバーは9人だよね…?
タワレコの購入特典ステッカー。