小島 智 著『検証・80年代日本のロック』

80年代の日本のロックを検証した本が2024年10月8日、アルファベータブックスより刊行された。筆者は雑誌『ミュージック・ステディ』の編集長だったと、どこかで見たから、私がよく読んでるブログ「Les's Go Steady」の人だと思って購入したら、ブログの人は初代編集長でこの本の筆者・小島智は2代目編集長だった。

登場するアーティストは表紙を見てのとおり。アンダーグラウンドから歌謡曲まで幅広く取り上げ、ロック・マーケットの拡大、ライブハウス・シーン、音楽雑誌事情、大規模なライヴ・イヴェントなどについても言及あり。「そんな/こんな/なんて」という言葉が多くて気になるが、雑誌『ミュージック・ステディ』に携わっていたということで、業界の裏話的な内容と当時のインタビューやライヴ、レコーディングの取材等を振り返ったものになっている。 

さて、私的には1980年代に聴いてた主なバンド・アーティストというと、
80年代前半(1980〜1984):
リザード、ヒカシュー、ARB、ザ・モッズ、アナーキー、スターリン、ルースターズ、E.D.P.S、浜田省吾
80年代後半(1985〜1989):
ルースターズ〜大江慎也ソロ、泉谷しげるwith LOSER
80年代通してパンタ、佐野元春は聴いてたな。83年からは小山卓治も聴いてた。RCサクセションにはそれほど入れ込んでなかったし、本書『検証・80年代日本のロック』で”RCのマーケットを引き継ぎ、さらに拡大した”というハウンド・ドッグはほぼ聴いてない。80年代中頃にはレベッカとBOØWYを聴いたけど、拡大したマーケットを横目で見ながらって感じ。ルースターズ、パンタ、ARBなど聴いていたバンド/アーティストは広く人気を獲得して欲しいと願っていたし、獲得できると思っていた。

私が80年代に日本のバンド・アーティストを好むようになったのは、レコードを聴いていいなと思ったら、そのバンド・アーティストのライヴに行けることが大きかったと思う。田舎に住んでるから都内へ行くにはお金も時間もかかったが、一人や友人と連れ立って都内へライヴを観に行ける年齢になっていたし、外タレがホールでライヴをする料金より日本のバンド・アーティストのライヴハウスでのチャージのほうが安かったこと、バイトをするようになってレコード購入やライヴへ行くお金が都合できるようになったこともある。それに大学の学祭なんかは無料もしくは格安のライヴもあったし。

雑誌『ミュージック・ステディ』の新生第1号は出た時に買ったんだよな。編集人は市川清師。
雑誌『ミュージック・ステディ』新生号(1981年)

特集は“Rock'n' Rollの時代”で、このころ流行っていた銀蝿、クリームソーダ、ホコ天のR&R族、R&Rミュージカル等の社会風俗的な現象を音楽誌的に捉え直すというもの。ロッカーズの陣内、ハウンド・ドッグの大友、アナーキの藤沼と逸見、リザードのモモヨ、作家の戸井十月、映画監督の石井聰亙、役者の山田辰夫、などがロックンロールについて語っている。このなかではモモヨの「ジャズってのが疑問形だとすると、R&Rというのは完璧な否定形だと思う」という意見は当時影響受けたし、今もロック(ロックンロール)とはなにか?を私が考える時に指標のひとつでもある。他にアーティスト徹底研究は南佳孝。日本音楽全史の1回目は頭脳警察。当時の新作『KISS』発表時のパンタのコメントあり。ニューヨークの音楽専門誌に掲載されていたという「ショーグンの国のポップス」(by ベンジャミン・E・チャンプリン)を翻訳して紹介しているが、これが爆笑ものの内容。

『ミュージック・ステディ』は友人のH君がよく買っていて、遊びに行った時に読ませてもらってた。初めは季刊、暫くして隔月刊になり月刊化した。徹底研究や日本音楽全史などひとつのバンド/アーティストへのこだわり、音楽的な流行に関する問題意識を持った特集、日本のロックのポピュラリティを広げていこう、という意識も持った雑誌だったと思う。

ミュージック・ステディ別冊Vol.2『THE ROCKERS ロック・インタビュー集』(1983年)

雑誌『ミュージック・ステディ』や前身の雑誌『ロック・ステディ』のインタビューから選ばれまとめられた別冊『THE ROCKERS』。バトル・ロッカーズの陣内と大江のインタビューと町蔵とミチロウのインタビューは映画『爆裂都市』撮影直後のもの。パンタはPANTA&HALの『1980X』リリース後、モモヨは『バビロン・ロッカー』録音前、モッズの森山はレコードデビュー前のインタビュー。どれも当時の貴重な証言だ。

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